第4回は、「CSV」です。

 皆さんは、CSVという言葉を聞いたことがありますか?

 CSVは、Creating Shared Valueの略で、「共通価値の創造」の意味です。共通価値とは、「社会的価値と経済的価値の両立」を意味しています。

 では、皆さん、CSRとCSVの違いをご存じですか?

 CSRは、Corporate Social Responsibilityの略で、「(企業の)社会的責任」の意味です。CSRとCSVの位置付けは、「CSRの延長線上に、CSVがある」ということです。

 また、CSRとCSVの定義の違いは、CSRは、企業が倫理的観点から事業活動を通じて、自主的(ボランタリー)に社会に貢献する責任のことであり、CSVは、企業は社会のニーズや課題に積極的に取り組むことで社会的価値を創造し、同時に、経済的価値も創造する考え方を意味します。

CSR的なやり方では限界がある

 CSVは、ハーバード大学経営大学院の経営戦略論の大家であるM.E.Porter教授が2011年にハーバードビジネスレビューで発表した新しい概念です。

 Porter教授がCSVという概念を提唱した背景としては、2008年に起こったリーマンショックによる全世界経済に悪影響を与えた歪んだ資本主義社会の是正がありました。

 同時に、アメリカが抱える社会・医療保障制度問題、少子高齢化問題、環境汚染問題等の社会的課題に対処するには、非営利組織であるNPOやNGOが主に関わるCSR的なやり方では、資金不足の問題から限界がある。

 そのため、企業が自らの事業として積極的に上記社会的課題に関わり、社会的価値と経済的価値の両立をバランスよく図るCSVこそが、真の問題解決につながるという主張をしたわけです。

 同様に、マーケティング研究の大家であるノースウェスタン大学のP.Kotler教授も2010年に発売された「Marketing 3.0」という書籍の中で、マーケティングの社会志向の重要性について強調しています。

 CSVの概念を理解するために、日本のCSV研究の第一人者である慶応大学大学院経営管理研究科の岡田正大教授のよるCSVの概念図をご紹介します(図表参照)。

 

 この概念図のポイントは、「社会経済的収束能力」です。社会経済的収束能力とは、「経済性投資と社会性投資の間に相乗効果を生み出す能力」を意味します。

 要は、企業には経済性投資と社会性投資のバランスが必要であり、その結果、経済的価値と社会的価値を獲得し、両価値が企業としての社会からの信用力の証である「統合的価値」の醸成につながるというのです(小売業においての統合的価値とは、ストア・ロイヤルティやエンゲージメント行動(※)になるのかもしれませんね)。

 (※)エンゲージメント行動:消費者のエンゲージメント行動は、顧客と企業、顧客と顧客、顧客と潜在顧客との間の積極的なインラクションとして定義され、そのインタラクションには売買取引だけでなく、非売買取引も含まれる。(Kumar et al. 2010, 山本・松村 2017)