中国・上海で開かれた阿里巴巴(アリババ)の「独身の日」セールスイベント。写真:時事通信社

 阿里巴巴(Alibaba)は、オンラインとオフラインを合わせると、既に中国小売市場のほぼ10%のシェアを占めるほどに成長している。そのAlibabaが2016年に「新小売」構想を打ち出し、実店舗の拠点を急速に拡大しつつある。IoTや人工知能、拡張現実などのテクノロジーを駆使してオンラインとオフラインの融合が実現できれば、小売市場におけるAlibabaの地位はさらに盤石になることは間違いない。

世界的なイベントに成長した「独身の日」

 中国では毎年11月11日に、大手ECサイト淘宝網(Taobao)や天猫(Tmall)などを運営するAlibabaによって「独身の日」と呼ばれるイベントが開催される。元々はTmallが単独で2009年に開始したオンラインショッピングの「お祭り」だったが、開催を重ねるたびに規模が拡大していき、2017年には250億ドル(約2兆8000億円)を売り上げる世界最大のショッピングイベントに成長。Alibabaは、2017年11月11日だけで、およそ15億件の取引を処理したと伝えられる。

 アメリカでは、年末商戦が本格的に開始されるサンクスギビングデー翌日の金曜日である「ブラックフライデー」や、その次の月曜日である「サイバーマンデー」に売上げが集中することで知られるが、2016年の売上げを見ると、ブラックフライデーが30億ドル、サイバーマンデーが34億5000万ドルだったので、独身の日の売上げがいかに多いかが分かるだろう。

 独身の日の売上げは、規模が拡大するにつれて成長率は鈍化傾向にあったが、2017年は前年比39%増と、2016年の同32%増を上回った。成長率が増勢に回復した大きな要因は、海外企業やブランドの参加が急増したこと。2017年には全体で前年比40%増の約14万企業・ブランドが参加したが、このうち海外の企業・ブランドが前年比5.5倍の約6万と大きく伸びた。もはや独身の日は中国だけのローカルなイベントではなくなりつつある。

 オンラインショッピングの祭典としてスタートした独身の日だが、実は2016年からオフライン、つまり実店舗の比重が高くなるなど、基本的なコンセプトが大きく変化してきている。その変化は、Alibabaが2016年に「新小売」という構想を打ち出したことに起因している。

「独身の日」はオフラインとの統合の実験の場?

 Alibabaの馬会長によると、「新小売」とは「人、モノ、倉庫、配送」において、オンライン(インターネット)とオフライン(実店舗)を融合した新たなビジネスモデルを指している。「オムニチャネル」の概念に共通する点もあるが、「新小売」構想はECで大きな成功を収めたAlibabaが、『モノのインターネット(IoT)や人工知能(AI)、拡張現実(AR)など次世代技術を実店舗に持ち込んで、小売業の在り方を変革させる試み』であると表現できる。

 Alibabaは、新小売構想を強力に推進するため、2017年2月には上海市政府系の小売大手である百聯集団と戦略的提携関係を結んだ。これにより、Alibabaは百聯が擁する百貨店やスーパーマーケットなど約4700店舗を消費者と接触できるチャネルとして取り込むことに成功した。それ以前に大手の家電量販店や百貨店など計3社とも提携を結んでおり、百聯を加えると中国だけでオフラインの拠点は約6000店舗に達している。

 Alibabaが実店舗の取り込みを急ぐ狙いは、Amazonと基本的には共通している点が多い。中国は世界的に見ても小売りのオンライン化が進んでいる国であり、売上全体に占めるオンラインの比率を示す「EC化率」は、Alibabaの調査によると18%に達している。

 しかし逆の見方をすれば、依然として82%はオフライン、つまり実店舗での売上げということになる。市場全体での覇者になるためには、どうしてもオフラインでの影響力を高める必要がある。

 ECサイトの運営で培ったノウハウで活用して小売市場のオンラインとオフラインの統合を目指すのが「新小売」構想であり、それを実現するための具体的な実験の場として重要性が増しているのが「独身の日」というイベントである。だから、2017年には、多くの海外企業やブランドを巻き込み、Alibabaグループが総力を結集して過去最高の売上げを達成できたのだ。