《今回の相談内容》(東大阪市 T・S 58歳)

「歳のせいか、気力・体力の落ち込みをとみに感じる今日このごろ。この分だと定年まで持つか心配になるほどです」

 

自分の限界は自分で決めないこと

 今回の質問者のように、年齢による気力・体力の低下を感じる方は多いことでしょう。でも、その一方で年齢を感じさせないほどフットワークも軽く生き生きと仕事に従事している熟年世代の方もいます。その差はどこにあるのでしょう。

 ハーバード大学の心理学教授エレン・ランガー博士が、自身の著書『“老い”に負けない生き方』の中でその差がどこから生まれるかを開陳しているのでご紹介しましょう。博士とそのスタッフは、1979年のある日、新聞にこんな募集記事を載せました。

「田舎の家で1週間のんびり過ごし、思い出話に花を咲かせてみませんか?」

 応募者から選抜された参加者は16人、全員が75歳の男性でした。当初、参加者たちはその目的は知らされず、単に1週間合宿所で暮らすということしか教えられていませんでした。

 課題を与えられたのは、リビングルームに全員がそろってからのこと。博士はこう切り
出したのです。「これから1週間、今が1959年であると思って生活してください」

 つまり、20年前(55歳)に戻ったつもりで生活するように指示されたのです。その生活を実現するために、当時はやった服が用意され、全員に20年前の顔写真の入った身分証明も配られました。

 生活する空間も20年前に戻ったようなインテリア、そして家電製品も旧式のテレビやラ
ジオが配置されていました。本棚に置かれた本や雑誌も当時のものです。参加者たちは、まるでタイムマシーンで20年前の世界に放り込まれたような状態になったのです。

 そんな空間の中で1週間、参加者はお互いに当時を振り返りながら、自分が20歳若返ったつもりで生活を送りました。果たして1週間後、彼らにはどんな変化が起きたでしょう。

 なんとほとんどの参加者が、体の柔軟性が明らかに増す、姿勢が良くなる、握力も強くなったというのです。また、視力が平均して10%近く改善し、記憶力も向上したといいます。

 つまり、「若いと思い込むことが人間の肉体をも若返らせる」という驚くべき結果とな
ったのです。この結果から、ランガー博士はこう結論づけました。「私たちの限界を決めているのは肉体そのものではなく、むしろ頭の中身のほうなのです。いつまでも若々しく健康でいたいなら、自分で自分の限界を決めつけてしまわないようにすることです」

 確かに私たちは「もう若くないから」「もう歳だから」と、自分で自分を老け込ませているのかも。そういう言葉が口ぐせになっている人は、まずその言葉を封印しましょう。

 そして、「まだ老け込む歳じゃない」「人生に定年はない」と自分に思い込ませましょう。実際、バリバリと仕事をこなす熟年世代の方もきっとそう信じて仕事をなさっているはずですから。