ヨークベニマルが展開を開始した店内加工の冷凍素材の精肉の商品。同社の場合、精肉は店内加工のみであるため、冷凍の商品をラインアップに加えられることは強みとなる。冷凍でロスが減る他、店内加工のため原価も抑えられることもあり、現在のところ売価は生の商品より低めに設定している。

 ヨークベニマルは、昨年7月オープンの取手戸頭店(茨城県取手市)から、生鮮部門の素材を店内で急速冷凍し、冷凍で販売する取り組みを開始した。現在のところ同店と今年2月22日オープンの水戸元吉田店(茨城県水戸市)、3月18日オープンの日立滑川店(茨城県日立市)の茨城県内に出店した大型店3店で展開している。

 3店ではバックヤードに複数部門が共有する生鮮加工室を設けて機械を設置し、生の状態の鮮魚、精肉の素材を店内で急速冷凍。それを真空パックして商品化し、冷凍で販売している。消費期限が長くても2日程度の生鮮食品と違い、賞味期限を1カ月ほどに設定できることが大きな強みだ。賞味期限を長くできるため、例えば精肉ではラム、牛タンなど品揃えとしては持ちたい一方でロスが高い商品を販売するのに適している。今後、そうした観点から、冷蔵では販売が難しかった商品などのラインアップを拡充していく意向だ。

 今回の取り組みに至った背景には、急速冷凍の機械を店内に導入できたこともある。食品を冷凍する際は、食品の中の氷結晶をいかに大きくしないかが重要になる。氷結晶が大きくなることで細胞を破壊し、それがドリップの発生につながるなど品質に影響するためだ。その点、導入している急速冷凍の機械では氷結晶をできるだけ大きくしないことで、ドリップの発生を抑えるなど品質を保つことができているという。

 当然、設備投資の費用はかかるが、「生鮮食品を冷凍で購入する」という行動がより一般化して売上げが高まってくれば、設備のある店を母店として周囲の自社店に供給するといったことも考えられるため、投資に対するリターンも得やすくなる。

商品分野、商品化など多様化する冷凍の商品

 日本のスーパーマーケット(SM)で冷凍食品といえば、どちらかというと弁当の材料などを含む即食商品のイメージが強い。これまで、一般的にSMでは主力の生鮮食品と一緒に買う日配、グロサリーなどの加工食品の中に位置付けられてきた。

 その冷凍食品が昨今、徐々に存在感を増している。長期保存が可能であることから、利便性と併せそのメリットへの注目度が高まり、加工食品に限らず、素材などの分野での商品開発が活発化。食品ロスへの関心の高まりもそれを後押ししている。今回のヨークベニマルの商品化もそうした流れの中にある他、他の企業でも冷凍を活用した新たな商品化が目立つようになってきた。

 特に干物などはもともと冷凍の状態で仕入れた商品を冷蔵で販売していたりする。また、買った生鮮食品を家庭で冷凍保存する人も少なくないだろう。そうしたことを踏まえれば、もともと店で、冷凍で売られていた方が品質上も好ましいと考えることもできる。

カスミは昨年から冷凍で仕入れた干物の真空パックをあえて店内で行うようにし、さらに冷凍販売に切り替えた。商品自体はアウト加工だが、冷蔵販売で4日間の販売期間だったものが、冷凍販売に切り替えることで30日間に延びた。アウトパックと比べ仕入原価を抑えられる上、作業自体も、誰でも、空いた時間にできることからメリットがあると判断した。
冷凍のレディミールを商品ラインアップに加える企業も増えてきた。多様な商品が冷凍で、しかもさまざまな場所で展開されるようになってきた。写真はマルエツプラウドシティ吉祥寺店(東京都三鷹市)の生鮮食品売場内に設けられた冷凍食品売場。
ベイシアではプライベートブランドのミールキットのシリーズとして「オイージースイージー」を開発。特に冷凍の商品を強化し、最新の改装店である前橋吉岡店(群馬県吉岡町)では生鮮食品と隣接させて展開している。加工食品の冷凍食品とは売場を分けている。


「SMの商品が全て凍っている」というコンセプトを持つフランス発の冷凍食品専門店・ピカールの店舗がイオンとの協業によって日本でじわじわと増加していることも、冷凍食品のイメージを変えることに一役買っている。

 実際、明確に強化しているか否かにかかわらず、冷凍食品の売上げが増加しているSMは多い。SMだけでなく、例えばコンビニも同様で、最大手のセブン-イレブン・ジャパンをはじめ各社軒並み強化部門に位置付けている。

 ラインアップの充実とともに、多様な商品化が模索される「冷凍」の分野。今後も活発な商品化によって、SMをはじめとした食品小売業の売場は次第に変わっていくだろう。