小型のマックスバリュタンジャイ。コンビニよりも生鮮食品や惣菜類が充実しているのが特徴だ。

 現在、東南アジアで積極的に出店を進めているイオン。その第一歩は、1984年始めのマレーシアから始まった。

 タイに進出したのは同じ年の12月。それから30年以上が過ぎ、店舗数はトータルで79店まで増えている。しかし、この数字は33年の歴史を考えると決して多いとはいえないはずだ。

 振り返れば、タイにおけるイオンの歩みは試行錯誤の連続だった。同社は、まず最初にバンコク郊外のラチャダピセ地区のGMS業態の1号店を出店。タイ市場攻略に向けてスタートを切った。だが、1号店は今、1階の売場のみをスーパーマーケット(SM)として残し、残りはオフィスとして活用している。

 現在、GMS業態はゼロ。出店している店舗は、SM業態のマックスバリュが30店、小型店のマックスバリュタンジャイが49店という内訳だ。

タイは「セブン-イレブンに席巻されている市場」

イオンタイランドのマネージングディレクター、坊池学氏。

 なぜGMSに見切りを付けたのか。イオンタイランドのマネージングディレクター(代表取締役社長)、坊池学氏は言う。

「業態転換は、タイの現状を踏まえての戦略です。地域の特性、環境に合わせてどのように根ざしていくのかを模索した結果、今のフォーマットになりました」

 急成長しているタイのモダントレード(近代的流通)は主に、百貨店、ハイパーマーケット、カテゴリー特化型大型店、SM、コンビニで構成されている。

 中でも最強なのがコンビニだ。タイの流通を一言で表現するなら、「セブン-イレブンに席巻されている市場」。セブン-イレブンの店舗数は既に1万店を超え、さらに拡大を続けている。大げさでなく、100m歩くか歩かないかの距離に必ずセブン-イレブンの店舗がある。その一方で、バンコク郊外や地方ではテスコロータスやビッグCといったハイパーマーケットがタイ人の生活を支えている。

業態戦略は「SM」と「小型店タンジャイ」の2本立て

 普段は小さな生活圏で最寄品を高頻度で買い求め、どかんと買物をするときには車でハイパーマーケットに行く。家電品や家具、住宅用品を買いたいときにはカテゴリー特化型の大型店を選ぶ。タイ人のライフスタイルやニーズに対応するためにイオンが出した結論が、SMと小型店タンジャイとの2本立て戦略だ。

「タイは東南アジアでは最も少子高齢化が進んでいる国。人口ボーナス期も終わり、これから日本に近付いていく。バンコクでは1人暮らしの人や単身世帯も増えています。こうした事情も踏まえて2010年に新たに立ち上げたのがタンジャイです」

 タンジャイとは、「思い通りに、すばやく」を意味するタイ語。お客の毎日の買物をより便利に、より快適にするための都市型店舗がコンセプトだ。ホテルやコンドミニアム(日本でいうマンション)の1階や駅周辺を主な出店地としており、商圏は半径200~300m。売場面積は180~240㎡規模。イメージとしては、日本でイオンが展開しているまいばすけっととコンビニ業態の中間的な店舗と考えると分かりやすい。食料品を中心に生活必需品に絞り込み、SKUは4000程度。デリカや生鮮が充実しているのがコンビニにはない特徴だ。

 対して、SMの商圏は、半径2㎞以内で5000~8000世帯。売場面積は1200~1500㎡。

デリカの商品開発で直面する「タイ人の食の好み」

 この2つの業態の最重要部門として位置付けられているのがデリカ部門だ。市場開拓を図る同社の最大の武器といってもいい。タイでは朝も昼も夜も外食や中食で済ませる人が珍しくない。タイ人の日常的な胃袋をつかむデリカの充実で、マックスバリュは集客力アップを図っている。

マックスバリュの弁当売場。30種類もの弁当がずらりと並ぶ光景は圧巻だ。

 デリカの中でもとりわけ強化しているのが弁当だ。価格は19~69バーツ、種類は約70種。常時、売場には30種類もの弁当がずらりと並び、タイ料理の弁当だけでなく、とんかつなど日本食の弁当も手に入る。日替わりで食べても飽きないだけのバリエーションは圧倒的だ。

 もっとも商品開発においては日々、試行錯誤が続いている。タイ人は脂っぽい料理に目がなく、甘さや辛さ、酸っぱさが際立ったメリハリのある味付けを好み、日本人とは志向が異なる。

タイの弁当は目玉焼き付きが定番。人気が高いのは油で揚げたタイプだ。

 例えば、タイの弁当にはカイダーオ(目玉焼き)が付き物だが、この調理法は日本の目玉焼きとは違って、大量の油を使って調理する。油で揚げるという表現がふさわしい目玉焼きだ。周囲がちりちりとやや焦げた仕上がりはタイ人好みだが、明らかに油分過多。これでは健康的ではないからと油の量を控えると、途端に売上げはダウンする。

「日本発の店らしく『ヘルス&ウェルネス』をアピールして、体に良い料理を追求していますが、タイ人に受け入れてもらわなければ意味がない。判断が難しいところです。ただ中食市場の伸び代は非常にあるので、今後はヘルシーさを積極的に伝えていく取り組みも必要だと感じています。というのは、タイの人々も30才前後でライフスタイルが大きく代わりつつあるんですね。特にバンコクでは健康への意識が高い人が増え、パンやサラダの売上げも伸びてきた。ライフスタイルや志向の変化を見据えた取り組みが不可欠です」