連日、多くのイベントが自粛やオンラインでの開催に切り替わり、商業施設が営業時間を短縮するなど社会が変わってきています。リアル店舗でもスタッフのマスク姿は見慣れた光景になりましたが、実は商品の陳列にも変化が出てきています。

 地元の小さなベーカリーでは、パンが外気に触れないように、一つ一つ個包装された袋詰めの状態で販売されているのを目にしました。別の店舗では、トレーが裏返しで重ねられていたり、大型ビニールをめくって内側から取るようになっているなど、ショーケースがない店でも商品が外気に触れないようにする工夫が見られました。

 スーパーでは試食やバラ売りコーナーが消え、あらかじめ量ごとにパッケージングされた惣菜が並んでいました。飲食店でも入り口に除菌スプレーを設置するなど、今まで以上に衛生管理が高まっていると感じます。

 新型コロナウイルスにまつわる一連の騒動がいつ収まるのかは依然として分かりませんが、私は、今回をきっかけにお店の在り方も大きく変わるのではないかと考えています。

サンプル陳列が今後の主流に?

 

 商品を複数並べてお客さま自身が商品を取ることができる「オープン陳列(裸陳列)」は、商品の色や匂い、触り心地等をダイレクトに感じられるメリットがあります。その一方で人のくしゃみなどの飛散物やホコリ等が商品に付着する可能性は高く、一部では不衛生で気になるという意見も見られてきました。

 今回のことをきっかけに、少なくとも当面の間はこうしたオープン陳列が不人気になっていくことが考えられます。誰かが触っているかもしれない商品を購入することに、懸念を示す人が増えてきているからです。

 従来なら「オープン陳列」は商品訴求力がありましたが、現状では商品のお試しや手に取るまでのハードルが上がっているのではないでしょうか?

 食品に限らず、ファッション、食器、雑貨、化粧品など、気軽にお試しできていたあらゆる商品が、衛生面を理由に気軽に試しにくいと感じる人が増えてきているように思います。

 高級ブランド店で見られるような、見本商品だけを店頭に展示する「サンプル陳列」、またはショーウインドーなどのガラスケースで仕切りを付けるなど、今後はあえて多くの人の手に触れないような工夫をする店が当たり前になっていくのかもしれません。

感じにくい五感をどう表現するか

 

 店舗での衛生管理を意識すると、店頭での五感でのアプローチが難しくなってくることに注意する必要があります。

「オープン陳列」には、視覚や嗅覚に強く訴えかける効果がありました。試食体験は、その場でおいしさを感じることで購入に至るきっかけになっていました。

 でも、今こうしたアプローチはあまり積極的に推奨できません。少なくとも当分の間は、たとえ商品が見えにくくても、あらかじめパッケージングされた商品に安心感を感じる流れが継続するでしょう。

 視覚・嗅覚・味覚・触覚といった直接感じる体験が難しい今、残された聴覚の活用、あるいは売場以外の場所での五感へのアプローチなど、店舗は今までとは違う形でお客さまに商品を訴求していく必要があります。

 商品のお試しが気軽にしにくいならば、よりいっそう「試してみたい」「使ってみたい」と感じさせることが重要です。例えば実際に体験したスタッフ自身がこれまで以上に商品の良さを積極的に伝えていくなど、使用感を想像させることが、これからの購入の決め手になっていくことが考えられます。

体調不良での出勤は売上げ減に!?

 

 働くスタッフに関しては、良い意味で大幅な意識の変化が求められそうです。少し前まではマスク接客の是非が問われるほどでしたが、現在ではスタッフがマスクをしている売場は珍しくなくなりました。むしろ、スタッフがマスクをしていないことがクレームにつながるケースもあるほどです。

 小売業は人手不足で、「風邪程度では休めない」とシフトに穴を空けないために無理して出勤する人も多かったです。でも、もし今そんなことをしている企業があれば、確実に非難されます。そもそも、体調不良の人がいる売場には近寄りたくないと考えるお客さまの方が多いでしょう。

 店舗での働き方は、これをきっかけに大幅に見直す必要があります。スタッフの常駐をやめて出勤する時間を決める、売場での一人体制を止める、そもそもの営業時間を短縮するなど、従来通りの店舗の在り方を変える必要も出てくるかもしれません。さらに生産性を上げることはもちろんですが、どういった店舗なら持続できるかに、業界全体がより知恵を絞る必要があります。

 苦しい状況の店舗が多いと思いますが、これまでも小売業は『変化対応業』と呼ばれ、時代と共に形を変えて確実に良くなってきました。今回の事態を契機に、業界全体がより良い形に生まれ変わってほしいと切に願っています。