テナント店の賃料は人件費と並ぶ小売業の最大コストだが、そのレートは交渉事という性格が強く、人気による格差が極端なのが実態だ。テナント店にとっては人気の上下が賃料負担に増幅されて経営を直撃するし、商業施設側にとっても丼勘定になりがちで採算が読みにくい。賃料が人気相場みたいな実情を放置したままで良いのだろうか。もっと公平・透明な賃料設定はできないのだろうか。百を超える商業施設の開発やリニューアルに関わって来た知見から具体的な対応を提じてみたい。

販売効率と風評人気で賃料に大差

 同じ商業施設に出店しているテナントでも、坪当たり正味家賃(共益費・共同販促費などを除く)には10倍前後の格差がある。その要因は1)販売効率、2)賃貸面積、3)位置、4)形状と奥行きだが、それでは説明がつかない格差があるのが現実だ。

 同じ賃料レートなら販売効率で格差が開くのは当然で、大手駅ビルなどほぼ統一したレートを適用して低販売効率のテナントが自然淘汰されるよう仕組んでいるが、百貨店インショップの歩率は販売効率に逆スライドして低くなる。大手アパレルのブランドなど都心百貨店では消化仕入れで33〜40%もの歩率を取られるが、人気ブランドなら20%台、外資ラグジュアリーブランドの多くは10%台、スーパーブランドは10%を切る。

 中でもLとかHとかCとか頂点のブランドになると10%をかなり下回る歩率に加え、坪当たり200万円以上と言われる内装投資も百貨店側が負担する。とはいえスーパーブランドの坪当たり販売効率は都心店では月間200万円前後にもなるから坪当たり家賃も十数万円になり、売れない国内ブランドに充てがうより採算性が高い。ラグジュアリーブランドの歩率レートは人気で上下が激しく、Pなど今世紀に入って10ポイントも動いたと噂される。

 ちなみに百貨店の歩率は商品仕入れ差益だからそれで全てで、共益費や販促費はもちろん光熱費やキャッシュレス決済の手数料まで百貨店が負担する。商業施設の賃料を百貨店の歩率と比較するなら、正味家賃に共益費・販促費はもちろんテナントが負担する光熱費やキャッシュレス手数料まで加えるべきだ。

 それだけでなく、商業施設では出店する際に内装監理費とか工事協力金とか少なからぬ負担があるし、採算が取れなくて契約期間内に退店するときは現状復帰(最近は後継テナントに居抜き渡しするケースも増えている)だけでなくペナルティまで要求されることがある。百貨店の歩率は法外に高いが、商業施設の家賃外徴収も算定根拠が曖昧なものもあり限度を超えている。公取委はデジタル・プラットフォーマーだけでなく、アナログ・プラットフォーマーの優越的地位行使にも目を光らせるべきではないか。

 低価格SPAもユニクロなどスーパーブランド並みに低レートの総合賃料(共益費や販促費も込み)で商業施設に出店しているが、流石に内装費は自己負担している。ユニクロは郊外SCでも月坪24万〜30万円も売っているからデベには相応の賃料が入るが、外資の著名SPAは格別に優遇されたレートなのにユニクロのせいぜい半分、あるいは3掛け4掛けしか売っていないから、共益費や販促費をデベが負担すれば正味家賃は限りなくゼロに近い。そんなに売れない外資SPAを“人気テナント”として優遇する意味があるのか、一方的な退店や撤退が続いているだけに、早々に見直すべきだ。

 人気?ばかりで販売効率が伴わない優遇テナントは国内チェーンにも見られるから、人気テナントが優遇される分、他テナントの賃料にしわ寄せがいく。“人気”などという裏付けのない風評に左右されることなく販売効率の実態に賃料を合わせれば、商業施設テナントの賃料水準は何%か下げられるのではないか。

大型店・人気店頼りより緻密な業種・業態ぞろえ

 テナント賃料が“人気”の風評に左右され、低賃料大型店への依存が高いと、賃料設定のルールが混乱して不公平になり、一般テナントの賃料水準が割高になる。

 人気テナントや大型店の集客に頼るのは実は裏付けのない“錯覚”で、人気テナントの多くは一般テナントより販売効率が低いし、カテゴリーキラー的大型店の販売効率は驚くほど低い。販売効率が低いということは集客力が疑わしいということで、払える賃料も必然的に低くなる。そんな風評人気や裏付けのない集客力に頼るより、地域顧客が必要とする消費分野別の業種・業態を欠落なくそろえた方がはるかに集客力がある。

 商業施設の商圏は1)日常最寄り消費の足元商圏、2)買い回り消費の実勢商圏【ライバル施設より占拠率が高いハフモデル境界内】、3)週末や特定分野で実勢商圏を超えて広がる拡張商圏、の3層からなり、それぞれに分野別の消費支出に対する占拠率を戦略的に設定して売上予算を組む。その予算を実現すべく分野・業種別の売場面積を算出し、今のライフスタイルに応える業態を落とすことなくそろえていくのが基本中の基本だ。

 業態とは業種を品揃えや調達手法、提供方法で分類したもので、眼鏡店を例に取れば、低価格プライスラインSPA型、キャラクターSPA型、カジュアルセレクト型、コンサルセレクト型の4業態があって価格帯も客層も異なるから、生活商圏施設でもキャラクターSPA型を除く3タイプをそろえる必要がある。化粧品などドラッグバラエティ型やプチプラ編集型からサロン接客型や外資ブランド編集型まで10タイプを超え、一つのゾーンを構成できるほど多様な業態がそろっている。

 近年はライバル商業施設だけでなく数千店・数万店をそろえるECモールとテナントぞろえを比較されるのが当たり前になったから、広域大型商業施設では最低でも250店以上、生活商圏施設でも150店以上の専門店を不要な重複や欠落なくそろえることが必須になっている。限られた賃貸面積を販売効率も賃料水準も望めない大型店や風評人気店に割く余裕などないのは当然だ。