ネット通販の売上拡大に伴い、ますますリアル店舗の存在意義が問われている日本の小売業だが、筆者が外部講演や執筆活動等を通じて、ここ5年ほど言い続けているテーマがある。

 それはショッピングセンター(SC)の“サードプレイス化”を目指して、日本の小売店やSCの内装(特に店舗空間)に関して、「効率性重視から、より洗練されたデザインを!」ということである。

 この点で言えば、私が定期的に訪れているタイの首都バンコクには、ここ数年、刺激的なデザインの小売店やSCが多く、特に書籍を扱う店舗に大きな変化が現れてきた。

 今回は特に筆者が推薦する魅力的な店舗を紹介したい。

①Think Space(B2S

店舗の入り口からは店内の広がりは全く想像できない。
ほぼ2層分あるフロアの半分は吹き抜けとなり、スキップフロア形状の売場が作られている。
段数の少ない階段や短いエスカレーターを多用した売場は高低差が付けられ、想像以上に変化に富んでいる。
陳列棚は店内通路に沿って、カテゴリー別に分類された書籍や関連雑貨等を陳列している。
平台には平積みの書籍以外にも、大人の遊び心をくすぐる玩具や文房具等も陳列されている。
アイテムは絞り込まれているが、デッサンや油彩・水彩画を描くための画材も販売。
2階の児童書コーナーに隣接して、乳幼児向けのプレイジムも完備している。


 B2Sはタイ最大の小売りチェーンのセントラルグループ直営の本と文具、趣味雑貨の複合業態である。

 店名の由来は「Book To Stationary」の造語で、セントラルグループの直営百貨店のみならず、最近では他のデベロッパーのSCにも出店している。 

 そのB2Sの新たなコンセプトストアである「Think Space」は、バンコク郊外のラップラオ地区に2年前に開業した「Central Festival East Ville」の核店舗の1つとして誕生した。

 売場面積で約3000㎡、10万冊以上の蔵書を持つ同店はタイ最大級の書店ではあるが、単純な書籍のみを扱う店舗ではなく、室内テーマパークのような環境の中で自由に本を読み、語らい、思考ができる独特な販売空間を提供しているコンセプトストアである。

 フロア2層分で約3000㎡ある売場の半分は、スキップフロアで構成された棚田状のようなデザインとなっており、 その周囲にカテゴリー別に編集された書籍や関連する雑貨等が並ぶ陳列棚に沿って、お客が自然に上へ上へと上がって行く仕組みになっている。 

 また、お客の動線上にはベンチやテーブルで構成されたフリースペースがいたるところに作られ、そこで店内の本を読んでも、学校の宿題をしても、友人と語らっていても問題ないという、何とも太っ腹な店舗なのである。

書籍が陳列棚に整然と並べられている。店舗の最上階の外周部には、多数のカウンターテーブルが配置され、誰でも自由に使える。

 この野心的な環境デザインも、日本でも話題となった「銀座プレイス」「ユニクロ銀座店」「TSUTAYA T-SITE代官山・湘南・中目黒・柏の葉」を手掛けたクライン・ダイサム・アーキテクチャーが担当したと聞けばそれもうなずけよう。 

 売場の最上部にはカフェやステーショナリー、CDやDVD、オーディオ関連商品、児童書や学習参考書等の売場も展開され、洗練されたライフスタイルショップとして郊外に居住する高学歴な中間層(特に読書好きな若者や女性客)からの支持も定着してきた。 

 台湾にある誠品書店のような、書籍の専門性の部分にはやや乏しいが、女性客や若者が好むインテリア、デザイン、ファッション、クッキング等に関連する書籍の品揃えは見応えがある。 最近になり、日本をはじめとして、各国の業界関係者の視察が急速に増加している店舗である。