アマゾンがひっそりとテスト中のホールフーズ・マーケットのコンビニ業態「ホールフーズマーケット・デイリーショップ」。マンハッタン、チェルシー店に隣接〔出所〕筆者撮影

 昨年7月に『ニューヨーク・タイムズ紙』は、アマゾンがホールフーズ・マーケットとは別のスーパーマーケットを開発中であり、店舗にはオンライン用ピックアップやデリバリー機能も計画されている、と報道した。

 その後、アマゾンがロサンゼルス市内ウッドランド・ヒルズの元トイザらスをスーパーマーケットに改装中と報道され、先月、『ブルームバーグ』と『ミディアム』が店内写真とフロアプランを公表、業界ではロボットやAIを活用したミクロフルフィルメントセンター付きスーパーマーケットではないかと話題になっている。

ミクロフルフィルメントセンター付き店舗になる?

 2月19日、メディア起業家のマット・ニューバーグ氏は、アマゾンがロサンゼルス市に提出したフロアプランを建築家と共に分析し、全床面積3万3574スクエアフィートの後方にあるL字型7200スクエアフィート(全面積の21%)がミクロフルフィルメントセンター(以後、ミクロFC)であると『ミディアム』上に投稿した。

『ブルームバーグ』は内装工事が終わり商品陳列前の店内写真を3枚公開した。そのうち1枚はオレンジ色のアマゾン・スマイルロゴ付き店内サインに「返品、ピックアップ」と書かれ、その下に窓口カウンターが設置されている。

 ニューバーグ氏は、アマゾンのフルフィルメントセンター建設で設計、施工、自動化システムを担当したデマティック社が本物件にも関わっていると見て、需要の高いグローサリー商品はFC内でロボットがピックアップ、惣菜や需要の低い商品は従業員が店内からピックアップすると推測している。アマゾンもデマティック社も問い合わせには返答していない。

 同店舗にはアマゾンゴーのレジレス機能は無く、ホールフーズ・マーケットと異なりコカ・コーラなど大衆食品を扱う、ごく一般的なスーパーマーケットのようだ。しかしミクロFCによって、オンライングローサリー売上拡大に一歩前進の可能性がある。

ロサンゼルスでまもなく開業が予定されているアマゾンの新スーパーマーケット〔出所〕HNGRY

ホールフーズ・マーケットの店舗ではオンライン拡大に限界

 ホールフーズ・マーケットが主体となるアマゾン店舗事業の既存比売上げは、昨年ホリディ中の第4四半期に-1%と下がったが、オンライングローサリーは2倍の成長を遂げた。筆者は昨夏、全社売上高でトップのコロンバスサークル店(マンハッタン)のオンラインオーダーを店頭から集めるショッパーに取材をした。

 5万9000スクエアフィートの同店舗は高層ビル2棟とショッピングセンターの地下にあり、セントラルパークやブロードウェイに面しているため、住民、オフィスワーカー、観光客で終日賑わう。このため、少しでも店舗が混み合うとショッパーは店内を移動するだけで時間を取られる。さらにバックヤードに在庫があっても品出しが間に合わないと欠品扱いとなり、顧客に代替品で良いかどうかテキストメッセージを送るため、さらに時間を食う。

 そんなこんなで1オーダー当たり20点程度をカートに入れるのに30分近くかかると言う。点数は多ければ100点以上に及ぶそうで、1人が1時間で消化できるオーダー数は3件前後だそうだ。

 オーダーが増加すると、ピックパック終了後オーダーの保管スペースが足りなくなり、ショッパーが全員15分から30分、手を休めなければならない日もあった。同店では昨年のホリディ商戦直前にビアバーをオンラインFCに改装、その面積は約2倍となった。

 オンライングローサリー用FCが無いホールフーズの店舗では、①店舗内での集荷時間の無駄、②梱包や保管スペースの不足、がオンライン売上げの足を引っ張っていることがうかがい知れる。

ホールフーズ・マーケット内にあるオンラインオーダー梱包および出荷前の保管スペース。アマゾンプライムが運営。ホールフーズ・マーケット、マンハッタン、コロンバスサークル店〔出所〕筆者撮影

競合のスーパーマーケットもミクロFCをテスト中

 スーパーマーケットの今後の成長の鍵を握るオンライングローサリーの焦点はラストマイル(倉庫や店舗から最終消費者までの配送)の克服で、アマゾンはアマゾンフレッシュとプライムナウによる即日配送で、ウォルマート他チェーンストアは即日配送と店舗でピックアップするクリック&コレクト[1]で戦ってきた。

 しかし、前述のように既存施設で人海戦術で運営するのはあまりにも非効率であり、ミクロFCのテスト導入が広がり始めている。

 セーフウェイなどを傘下に持つアルバートソンズは、自動倉庫システムを開発したテークオフ・テクノロジーズ社と提携し、カリフォルニア州数店舗に自動化ミクロFCを導入した。ここではグローサリー商品はFCでロボットがピックアップ、箱に詰めて従業員まで運ぶ。従業員はこれをオーダーごとに梱包する。生鮮食品など一部の商品は従業員が店内からピックアップする。

 テークオフ社によると、FC面積は1万スクエアフィートで約1万5000アイテム、スーパーマーケット店頭の品揃えの95%を保管でき、従業員が店内からピックアップするより10倍速い。建設費は300万ドルだ。

『ウォール・ストリート・ジャーナル』の調べによると、ミクロFCは一般的に1万~2万スクエアフィートで週に約4000件のオーダー処理能力があり、建設には3~6カ月、1年間で黒字化する。一方、30万スクエアフィートを超す大型FCは週に6万5000件以上のオーダーを処理し、建設に2、3年、黒字化には4年かかる[2]。大型FCに比べてミクロFCはラストマイルも短い。

 他にもアホールド・デレーズ傘下のストップ&ショップ、カナダのロブロー、ファーマシーのショップライトがテークオフ社のミクロFC導入を始めている。

 しかし、アマゾンは既に同市内でベビーザらスなど数カ所の物件を押さえている。居抜き物件なので施工時間もコストも縮小できる。また、ホールフーズと異なるコンセプトなのでグループ内競合せずに、他社と同じ土俵で価格競争ができる。さらに、ミクロFC付きでオンライングローサリーを効率よく拡大できる。アマゾンの資金力で一気に攻め込んでくるのだろうか。同店舗は3月末にオープンと見られている。


  • [1] 米国ではBOPIS (Buy Online Pickup In Store、ボピス)と呼ばれている。
  • [2] Wall Street Journal, ‘Safeway Owner, Rival Grocers Bet on Smaller Warehouses’, 2019年12月12日。数値の出所はJefferies Group社