コンビニ各社はデジタル技術を使った「無人化」「省人化」店舗の実験を矢継ぎ早に行っている。これが次世代コンビニのビジネスモデルになるのか、各社の取り組みとコンビニ無人店舗が日本で普及していく条件を解説した。

 経産省の「新たなコンビニのあり方検討会」は2月10日に報告書を発表し、コンビニのビジネスモデルの変革を促している。

 24時間営業問題などが社会的な関心を集め、経産省は「新たなコンビニのあり方検討会」の設置を行ったわけだが、このようなコンビニの矛盾が社会的に浮上した原因は、経営環境の変化である。各社横並びのビジネスモデルは煩雑で手間のかかる物販以外のサービスを増やし続けてきたが、その間に人手不足は深刻化し、店舗数の増加とともに競争は激化していった。

 人手不足の中でコンビニバイトは敬遠されて募集しても集まらず、オーナーの負荷が重くなり疲弊していった。競争の激化は低採算店を増加させ、24時間営業問題、食品の廃棄問題、ロイヤルティのあり方まで不信の目で見られるようになった。

 一時期のコンビニ礼賛論は消え、コンビニ各社に横並びのビジネスモデルから多様なビジネスモデルへの変革を待ったなしで迫るものとなった。

コンビニ各社が実験競う

 

 コンビニ各社は人手不足の救世主として、デジタル技術による「無人化」「省人化」の実験に積極的に取り組んでいる。

 実験に取り組んでいるデジタル技術の一つがAI発注だ。セブン‐イレブン・ジャパンは1月31日からAI(人工知能)発注の試験導入を千葉県内の1100店舗で始めた。2021年2月期中に全国展開する予定だ。

 二つ目は無人・省人化店舗の実験だ。ローソンは2月26日から5月25日までの予定で、川崎市幸区の富士通事業所内に「富士通川崎TSレジレス店」をオープン。デジタル技術を活用し、レジを通らずに買物ができる「レジ無し店」の実証実験を行っている。同店で実験するのは、専用アプリに表示されたQRコードを店頭にある端末にかざして入店し、購入したい商品を手に持って店外へ出ると、事前に登録した決済手段(クレジットカード)で自動的に決済できるというものだ。

 ローソンはこの店舗で、システム・店舗オペレーション・防犯・物流面の課題、売上げの推移、お客の声などを検証した上で、今夏には新たな店舗で一般のお客の利用を検討している(現在は富士通 新川崎テクノロジースクエアに勤務する従業員専用の店舗)。

 この店舗では富士通研究所が開発した手のひら静脈と顔情報のみで本人を特定する「マルチ生体認証技術」を導入し、手ぶらでの買物を実現するが、こうしたデジタル技術によるレジ精算の「無人化」「省人化」の実験はコンビニ各社が競うように行っている。

 セブン‐イレブン・ジャパンは18年12月27日、NECが入居する東京港区の三田国際ビルの20階に顔認証により財布なしで買物ができる店をオープン。19年10月24日にはデジタル推進の協業パートナーであるNTTデータと六本木にあるNTTデータが展開するデザインスタジオ「AQUAIR」内の店舗で「レジ無しデジタル店舗」を実験している。

 ファミリーマートは19年4月2日、横浜市都筑区のパナソニック佐江戸事業場内の「ファミリーマート佐江戸店」で「顔認証決済/物体検知」など7つのソリューションを導入し、無人販売を実施。19年10月9日には、足立区に深夜時間帯に完全無人営業となる店舗「ファミリーマート本木東町店」を直営店で出店している。

中国で無人コンビニが消えたワケ

 

 中国では2017年ごろから「Amazon Go」に負けじと多くの企業が無人コンビニを出店した。その無人コンビニを代表するのが400店舗まで出店した「Bingo Box」だ。店舗はコンテナ型の小型店舗で、仕組みはあらかじめ登録したスマホによる認証で入り口のドアロックが外れ、入店できる。そしてRFID(電子タグ)の付けられた商品をセルフレジで精算し、スマホ決済を済ませて出口の自動ドアを出るというもの。

 この無人コンビニは2018年ごろから姿を消し始め、今では中国からほぼ姿を消した。理由はさまざまあるが、この仕組みではRFIDのコストが経費を増加させること、入店のためのドアロックの解除やセルフレジでの精算が意外とお客には面倒なことなどがある。

「Bingo Box」のビジネスモデルは「面積は小さいのでテナント料は安い」「無人なので人件費も少ない」、従って利益がすぐ出るというものだったが、姿を消したことから見れば、このビジネスモデルは成功しなかったといえる。

 中国では、話題になった「Bingo Box」などの「無人店舗」、日本のスーパーマーケットで導入が広がる「セルフレジ」、米国のAmazon Goが進める「レジ無し」(ジャストウォークアウト)の3種類の取り組みが進められている。

「セルフレジ」は既にスーパーマーケットなどで利用したことがあると思うが、バーコードの読み取りや袋詰めなどをお客が行う必要がある。Amazon Go型は店内に設置されたカメラやセンサーがお客がどの商品を何個取ったか、あるいは何個戻したかを認識し、レジはなく、商品を選んで店を出るだけで精算が完了する。

無人・省人コンビニ普及の条件

 

「無人店舗」型は単なる自動販売機であり、お客のニーズを満たすことはないが、実際に中国ではほぼ姿を消した。ただホテルや事業所の自動販売機コーナーの代わりや売店など、他に選択肢がないようなニッチなマーケットの場合には可能性があるだろう。

「セルフレジ」はある程度大規模な施設で、レジに長い列ができるようなスーパーマーケット、ホームセンターなどの店舗ではお客の不満は解消され、ニーズは満たされる。

 となると、コンビニなどの小規模な店舗では「レジ無し」型が本命だろう。コンビニをお客が使う最大の理由は利便性である。レジでさほど並ぶわけではなく、もっと利便性を高めるなら、レジを通らないで会計できる「レジ無し」型が良い。むしろ小規模だからこそ、商品の入れ替えや補充、品揃えなどには人手をかけるべきだ。

 このように中国での「無人店舗」型の失敗は人手不足の解消を第1にして効率を追求すると失敗するということを示している。「無人化」「省力化」は意外とお客にそれまで以上の手間を発生させてしまう場合がある。「無人店舗」型の失敗の一因が、お客にとって面倒であったことにみられるように、「セルフレジ」型も「会計」と「袋詰め」をお客に作業として負担させてしまう。いかにお客に面倒さを感じさせず、より利便性を高められるかが条件になろう。この点が「Amazon Go」型が現在のところ本命である理由である。

 そもそも人を減らすのはコンビニ側の事情であり、お客が望むことではない。お客が望まないことをやってもうまくいくはずがない、その辺を見極めることが鍵になる。

 セブン‐イレブンもローソンも「無人化」ではなく「省人化」の方向性で実験に取り組んでいる。リアル店舗は顧客体験の価値をいかに高めていくのかが重要で、この部分には人手をかけ、デジタル技術で省力化できる部分は省力化するということが必要になるだろう。

 結局、コンビニの魅力は「品数の豊富さ」「新鮮で魅力的な商品が並んでいる」ことだ。消費とサービスの品揃えの魅力こそが、コンビニの店舗の魅力を作っていることを忘れてはいけない。ここにどのようにデジタル技術を融合していけるかが今後問われることになる。

 もう一つはコストの問題である。RFIDは技術革新により価格が下がっていく傾向にあるが、低単価の商品を扱うコンビニにおいてはそのコストは大きな負担である。また冷凍品や、電子レンジでの温めが必要な商品もあり、このような商品をどうするのかという問題もある。

「Amazon Go」型も店内に大量のカメラやセンサーを設置するコストは大きい。少なくとも1店舗当たり現状ではかなりの投資が必要になってくるだろう。技術革新とその普及によってコストは下がっていくだろうが、実験によって利益の出せるビジネスモデルを見出していくことが重要である。

 20年後にコンビニが無人化しているのかは誰にも予測できない。技術革新は確実に前進していくし、それによって人の意識や行動も変わっていくものだ。20年前に誰一人としてアマゾンでスマホから買物することが普通になるとは想像していなかった。

 コンビニは変化対応がその神髄だ。絶えずお客に未体験の価値を提示し、お客のニーズを引き出していくことが重要である。実験による仮設、検証を繰り返し、環境の変化に対応して新たなビジネスモデルをつくり出してほしい。