売上げが伸び悩む中、労働力逼迫による販売員不足と時給の上昇が店舗小売業の経営を圧迫しているが、小型店が多く接客を要して効率化が進まないアパレル小売業はとりわけ深刻だ。そんな中、商業施設デベやアパレルチェーンによるロールプレイングコンテストが花盛りだが、お祭り騒ぎの啓蒙活動では問題は解決しない。根本的な解決には生産性の向上と報酬・待遇の改善が不可欠で、店舗運営の抜本的効率化とプロフィットセンター化が急がれる。

深刻化する販売員不足と伸び悩む年収

 若年世代人口の減少は止まらず就業統計でも25〜34歳就業人口の減少が顕著で、19年12月は09年対比で男性は15.8%、就業率が上昇している女性でも5.2%減少している。その中で販売職は人気がなく、有効求人倍率は16年後半に2倍を超えて以降も上昇が止まらず3倍に迫る勢いで、販売員を確保できず出店や営業継続を断念するケースさえ見られる。パート・アルバイト時給もうなぎ上りで、リクルートジョブズ調査の三大都市圏パート・アルバイト募集平均時給は17年11月に1012円と大台に乗り、19年12月には1072円まで上昇している。

 アパレルの販売職に人気がないのは、業界の景気が低迷していることもあって、労働需給の実勢に反して報酬が伸びていないことも要因と思われる。ファッション業界の転職サービス「クリーデンス」が毎年発表している業界の職種別平均年収調査によれば、販売員の年収はほとんど伸びていない。

 

 最新の19年調査では25〜29歳こそ301万円と前年の293万円、14年の284万円から多少伸びたが、30〜34歳は328万円と前年の324万円、14年の324万円からほとんど停滞したままで、35〜39歳は358万円と前年の354万円からわずかに上昇したものの14年の379万円からは減少したままだ。20代こそパート・アルバイト時給の上昇を受けて底上げされたが、経験を積んでも30代で頭打ちになるという現実は厳しいものがある。

 店長こそ25〜29歳で350万円と前年の336万円、14年の319万円、30〜34歳で391万円と前年の381万円、14年の365万円、35〜39歳で430万円と前年の409万円、14年の393万円から着実に伸びているが、管理・指導能力あっての評価で販売員とは分けて考えるべきだろう。

販売員の給料を払える売上げと保守効率

 前述した「クリーデンス」の調査から販売員の平均的年収を330万円と見れば、社会保険料や福利厚生費、通勤交通費などを加えて会社が負担する人件費は年間413万円ほどになる。その人件費を支払うには、売上対比の人件費率が16%なら2581万円、17%なら2429万円、18%でも2294万円売り上げる必要がある。

 19年6月調査のSPACメンバー平均ではリテイラー系で2256万円、アパレルメーカー系で2025万円、平均して2185万円だったから、平均人件費が413万円ならリテイラー系は18.3%、アパレルメーカー系は20.4%の負担になる。利幅が限られるリテイラーは16%、利幅が厚いSPA型で18%、さらに厚いアパレルメーカー系は20%というのが大まかな採算の目安だから、何とか採算が取れる水準といえよう。

 

 巨大チェーンでは、ユニクロの国内事業が3119.2万円(19年8月期)、しまむらが3417.4万円(19年2月期)と高く、良品計画(19年2月期単体)は2503.2万円と低い。その他ではユナイテッドアローズが3430.9万円(19年3月期)と高く、ライトオンは2039.1万円(19年8月期)と低い。パート・バイトの正社員換算方式が各社で多少異なるものの、ほぼ実態に近いはずで、それだけ販売員の給料を支払う能力に差があると受け止められる。販売員も年齢とともに人生設計が可能な昇給が必要で、社会負担増が手取りを削る昨今の実情を考慮すれば毎年、1人当たり売上げを相応に伸ばしていくことが小売企業の責務とならざるを得ない。

 1人当たり売上げは販売効率と保守効率に比例する。国内ユニクロの平米当たり販売効率は102.1万円と高く、平均955平米の店舗を30.98人(正社員換算、以下同)で運営して9億6627万円を売り上げている。無印良品国内直営店舗の平米当たり販売効率は70.6万円と国内ユニクロの7掛けに留まり、平均777平米の店舗を21.90人で運営して4億4825万円を売り上げている。しまむらの平米当たり販売効率は24.6万円と格段に低く、平均1008平米の店舗を7.25人で運営して2億4762万円を売り上げている。ライトオンの平米当たり販売効率は29.2万円と低く、平均515平米の店舗を7.37人で運営して1億5038万円を売り上げている。逆算すれば、国内ユニクロは1人当たり30.8平米、無印良品は35.5平米、しまむらは130.0平米、ライトオンは69.8平米を保守運営している。都心型で次元は異なるが、ユナイテッドアローズの平米当たり販売効率は158.8万円と突出して高く、平均256平米の店舗を11.83人(保守面積21.6平米)で運営して4億596万円を売り上げている。