「コンビニすごい!」という礼賛論が消えた。むしろコンビニの抱える矛盾や問題点を指摘する社会的な声が強くなった。コンビニの快進撃が注目されていた時期はメディアも「コンビニすごい!」の礼賛論ばかりであったが、コンビニの問題点について報道するように徐々に変わっていった。オーナーの死亡事件などがSNSで拡散されたり、オーナーによる組合の設立とその活動などが徐々に影響を与えていった。本部とオーナーの間のトラブルや食品廃棄の問題は昔から存在していたが、コンビニの好調さと快進撃が注目される中で「コンビニすごい!」の声にさまざまな矛盾やオーナーの声はかき消されてきた。

コンビニのあり方が社会問題化

 

 コンビニの労働問題がテレビで取り上げられ始めるのは、2016年ごろからである。この前後がコンビニの株価の頂点であった。現在、コンビニ各社の株価は直近15年のピーク時の約65%~72%(2019年12月時点)の水準にある。

 この転換点となったのが、人手不足と競争の激化であった。昭和に作られたコンビニのビジネスモデルは人手不足と競争の激化という経営環境の変化により令和の時代に入って、修正を求められることになったのである。

 経済産業省が、コンビニ大手4社に対して人手不足対策に向け行動計画を策定するように求め、19年4月25日大手各社は行動計画を発表した。

 そして経済産業省の「新たなコンビニのあり方検討会」(座長 伊藤元重学習院大学教授、宇田川真之東京大学特任助教、検討会委員16名)の第1回検討会が19年6月28日開かれ、20年2月6日まで5回開催され、10日に報告書が発表された。

 この間、オーナーアンケート、従業員アンケート、ユーザーアンケートが行われ、12回のコンビニオーナーヒアリング、2回のコンビニ本部ヒアリングが行われた。

報告書が示したコンビニが進むべき道

 

 報告書では「本報告書においては、コンビニを取り巻く環境変化がどのようなものなのか、その中で、持続的発展のためにコンビニが進むべき道はどこにあるか、というビジョンを提示することとしたい。こうしたビジョンを踏まえながらコンビニ各社や加盟店オーナーが新たな時代に対応したビジネスモデルを創出することを期待するものである。」としている。

 また近年の環境変化について「コンビニの発展を支えてきた環境は、大きく変わりつつある。まず、我が国が人口減少社会に転じていく中で、売上高が頭打ちとなっていることが指摘されよう。」としている。

 ロイヤルティについては「加盟店のオーナーの性格について見ても、コンビニの登場当初において一般的に想定されていたような、土地と店舗を自ら保有する中小小売業者のコンビニへの転業という形はあまり見られなくなり、土地と店舗を本部側が準備する契約形態でチェーンに参入するオーナーが全体の8割に上っているとの指摘もある。このことを背景として、中小小売業者が本部の支援で近代化し、その対価としてロイヤルティを支払う、というチェーン参加のメリットが見えにくくなっているとも言えよう。 こうした環境変化の中で、本部と加盟店の双方にインセンティブを与えるというフランチャイズシステムの機能も低下してきているのではないかとも考えられる。」とし、24時間営業についても「昨今、コンビニが24時間営業を継続するか否かが社会的に注目を浴びているが、これは、こうした様々な環境変化により、コンビニの収益が悪化する一方、人手の確保が困難となる中で、コンビニが従来のようなサービスを提供することが困難になっていることを象徴的に表す現象であるとも言うことができよう。」としている。

 コンビニの目指すべき方向性とビジネスモデルの再構築として「コンビニを取り巻く環境が大きな変化を迎えている中、現在のフランチャイズパッケージの下で、本部と加盟店の双方がメリットを享受するというフランチャイズの有する好循環が目詰まりを起こしている。こうした中で加盟店が疲弊し、事業の継続が困難となるという事態が顕在化しており、今やフランチャイズによるコンビニというビジネスモデルの持続可能性が危機に瀕しているのではないか。」とし、「特に、これまでの統一的なフランチャイズモデルをそのまま硬直的に各加盟店に適用しようとしても、個別の加盟店が置かれた経営環境が多様化してしまっているがゆえに、場合によっては加盟店が過度な負担を抱えることとなるケースや、加盟店が本部から適切な支援を受けられず、経営状況を立て直すことができないといったケースが昨今の課題として浮かび上がっているのではないか。」と問題提議を行っている。

コンビニビジネスモデルの再構築

 

 そして「(1)加盟店優先・オーナー重視という視点からのビジネスモデルの再構築」が打ち出され下記の3つの点について指摘している。

①「統一」からより「多様性」を重視するフランチャイズモデルへの転換

「加盟店が24時間営業、商品やサービスのラインナップ、賞味期限の迫った商品の取扱いなどを巡り、全国津々浦々、一律の対応をとることを見直し、加盟店やオーナーの実情に合わせた柔軟な経営を認めることは、オーナーの負担の軽減のみならず、多様化する消費者ニーズへの対応も可能とするという意味で、コンビニのビジネスモデルが時代に合わせて柔軟な形を取りながら持続的に発展していく上では、避けて通ることはできないのではないか。」

②本部の加盟店支援の強化、フランチャイズへの加盟メリットの可視化

「まず、国内市場の成長が鈍化する中、本部が闇雲に新規出店による規模の拡大を図るのではなく、むしろ、いかに既存店の競争力を高めていくかに軸足を移す店舗戦略を構築すべきではないか。残念ながら、ヒアリング等では、本部は本部の利益確保を最優先しており、加盟店の利益をないがしろにしているという声が聞かれた。」

「廃棄に係るリスクやコストの本部と加盟店の間での分担が適切になされなければ、廃棄を減らすインセンティブが働かなくなるのではないかとの指摘が本検討会でも見られたところであり、廃棄の取扱いについて現行の手法を見直すことも検討に値するのではないかと考えられる。さらに、各店舗における見切り販売など加盟店の積極的な創意工夫を促すことに本部が取り組むことも期待される。」

「ロイヤルティが加盟店へのインセンティブとして適切に機能しないのであれば、その算定については、食品廃棄問題への対応、人材の確保や定着を巡るコストなど、上記のような様々な環境変化に応じた利益配分やコスト分担のあり方が勘案されるべきではないか。」

③オーナーとの対話の強化

「オーナーと本部のコミュニケーションについては、現場である加盟店からの声を本部が吸い上げるプロセスの構築がなければ、現場の実態を踏まえて本部が動くことができない。」

「開店当初とは店舗の環境、オーナーの家族の状況等も予測を超えた変化をすることがある。こうした変化が起こりうることを見据えて柔軟に相談に乗り、場合によっては違約金のあり方も含め的確に状況に応じて対応したり、違約金という形態にとらわれない手法や、より短い期間で条件を見直すことができるような契約形態を用意することも、優れたフランチャイズパッケージの要素の1つとなりうるのではないか。」としてビジネスモデルの大きな変革を促した。

さらに「(2)新たな時代に向けたコンビニの革新」として以下3つの方向性を示した。

①リテールテックを活用した次世代モデル

②社会課題解決型ビジネス

③国際展開

 最後に「政府においては、各社の取組の進捗についてフォローアップを行い、本部と加盟店のバランスを確保しつつコンビニビジネスの健全な成長を促していくことが必要である。その際、中小小売商業振興法や独占禁止法といったフランチャイズビジネスを律する関係法令が適切に運用されることが重要であり、現在、公正取引委員会が、独占禁止法の観点から、コンビニ本部とオーナーとの取引等について実態調査 を行っているところである。政府としては、引き続き本部とオーナーの関係が適正なものとなるよう対応していくことが求められる。」として施策の実行とフォローアップについて記して締めくくっている。

 以上のように報告書は環境変化に柔軟に対応することが、コンビニの持続的な成長を促すとする視点からコンビニのビジネスモデルの変革を促すものとなっており、環境変化によって生じている問題点についてオーナーの声が反映されたものとなっている。