ボイスとAIが小売業に与える影響

アマゾンペイ、バイスプレジデントのパトリック・ゴシエ氏 〔出所〕筆者撮影

 昨年、一昨年に比べて、ボイスコマースに関するセッションは減り、新たな販路としての期待はトーンダウンしているかに見える。『ボイスと他のAI経験はいかに小売業を再形成したか』というセッションに登壇したアマゾンペイ バイスプレジデントのパトリック・ゴシエ氏は冒頭に「ボイス(コマース)はまだ苦戦している」と表明。ジ・インフォメーション社のアマゾン社内情報聞き取りによると、アレクサ利用者のうち商品を購入しているのは2%という情報もある。

 しかし、スマートスピーカー自体は市場に着実に浸透しており、米国人口の55%が少なくとも1台のスマートスピーカーを持っているともいわれている[2]。AI技術の向上でスマートスピーカーのコミュニケーション力が向上すれば、徐々にボイスコマースは拡大するという見方は米国では根強い。

進化を続けるボイスコマース

 ゴシエ氏はボイスコマースが今後さらに重要になる根拠として、①ボイス(話す)という行為は文字をタイプするより素早くコミュニケートできる点を挙げ、②ボイスでは文脈的言語および③信頼性が重要であること、を指摘した。

 ②の文脈的言語について、同氏は過去10年間はキーワード検索で顕著なように「言葉」が重要だったが、今後10年間は「文脈」が重要になると述べ、現在のアレクサも文脈を理解することで答えの精度が高まっていくことを説明した。

 その事例として、オンラインのチケット予約サービス会社 アトム社共同創業者のマシュー・バカル氏が登壇、同社のボイス(アレクサ)を利用したチケット販売について語った。

アトム社、共同創業者のマシュー・バカル氏 〔出所〕筆者撮影

 バカル氏は現在のシステムはまだ完全とは言えないとコメントしながらも、同社のボイスショッピング機能はより文脈的で自然な会話を目指しており、座席指定はスマートフォンのスクリーンを見ながらボイスでより簡単に指定できるようになっている点を強調。ショッピングリストに興味あるイベントを入れておくと、チケット発売日にアレクサが知らせてくれる点もアピールし、アレクサでのチケット購入は「迅速で、効率的で、フレンドリー」だと言った。

 ③のボイスへの信頼性については、過去に誰も携帯電話で銀行口座の資金を動かすなど考えもしなかったが、現在では誰もが安心して行っていることを例に挙げ、ボイスコマースへの信頼感も今後上昇することも指摘した。

ボイスでチケットを買う時の会話:現在は6回の会話が必要 〔出所〕NRFでのアトム社プレゼン資料
ボイスでチケットを買う時の会話:将来は文脈的会話が可能になるため3回の会話で購入できる 〔出所〕NRFでのアトム社プレゼン資料

※さらに詳しく知りたい方はhttps://www.atomtickets.com/

2020年は「新コンセプトの実用化の年」に

 今年のNRF年次総会では新味のあるキーワードやコンセプトは見られなかったが、過去数年に提示されてきた新たなコンセプトや技術が水面下でどんどん進化していることを感じさせるものだった。2020年は過去数年で開発されてきた新技術、新コンセプトの「実用化の年」となるのはないだろうか。

 

[1] 詳細は前編を参照ください。

[2]ビジネスインサイダーインテリジェンス、2018年