NRFイノベーションラボより。人やモノの動きを自動認識するシステムのプレゼン風景 〔出所〕全米小売業協会

 前編ではリテールテックだけが小売りの未来を作っているわけではなく、チェーンストアがその価値を上げるためにさまざまな革新を起こしていることをレポートした。後編では、米国の小売市場を飲み込むかのように見られているGAFA、すなわちグーグル、アマゾン、フェイスブック、アップルに対するチェーンストアの対抗の糸口とは、そしてリテールテックの最先端の1つ、ボイスコマースの現状についてレポートしたい。

GAFAへの対抗策とは

フォレスター社、チーフアナリストのスチャリタ・コダリ氏 〔出所〕筆者撮影

 オンライン調査会社フォレスタ―社のチーフアナリスト スチャリタ・コダリ氏は、同社独自の調査データをもとに『新たな競争:テックの巨人たちと共存する』というテーマで講演した。

GAFA主導のデジタル広告の見直し

 アマゾンが多くのリテーラーにとって競合であることは言わずもがなだが、GAFAは広告、SEO、ソーシャルメディアなどデジタルマーケティングを通じてリテーラーと消費者をつなぐゲートウェイとなっており、売上増減の鍵だけでなく顧客データまでも握っている。また、GAFAはアンチトラスト、個人情報保護などの経済社会への影響も大きく、消費者の間でも問題視され始めている。

 これを反映してか、フォレスター社が2019年に実施した消費者調査によると、「もっとも耳を傾けたい広告」のトップはビルボードなどの屋外広告(40%)、テレビ広告(35%)、雑誌広告(32%)で、デジタル広告は下位となっている。逆に「もっとも避けたい広告」でウェブサイト上のバナー広告(54%)、サーチエンジン広告(51%)、オンラインビデオ広告(49%)、SNS広告(44%)が上位となっており、デジタル広告の購買行動への影響度がかつてほど高くなくなっていることを示唆した。

 企業側から見ると、昨今グーグルやフェイスブックなどの広告はコスト負担が重くなっており、D2C企業では広告予算をポップアップストア開店に振り替えるケースも増えている。それは店前通行量の多い場所に出店すれば、宣伝の費用対効果が高いから。  

 デジタルマーケティングの重要性は変わらないものの、広告の世界にもフィジカルへの揺り戻しが出始めている。

直営販路の重要性

 コダリ氏はまた、ブランドの販路多様化に従い販路管理が不十分になっていることが、グローバルな視点でのブランドのイメージや価格管理を弱めていると指摘した。

 同社が調査したブランド(メーカー)の平均的な販路別売上構成比は、チェーンストアへの直接卸80%、その他ディストリビュータ経由での小売店およびEコマース販売15%、直営Eコマース5%だが、コダリ氏はブランド管理を強化するため直接卸と直営Eコマースに絞り、価格および販促の主導権を取り戻すことが重要と説いた。例としてナイキは昨年、アマゾンでの販売を中止したが、これはブランドイメージや価格、販促管理を強化することで売上拡大ではなく利益拡大を狙う戦略への転換だという。

リテーラーの新たな方向性

 コダリ氏はGAFAが君臨する時代にリテーラーが成長するために、直営の概念が重要だと示唆した。具体的には①販路を整理・再構築し、②価格や商品、顧客のブランド経験を直接コントロールすることによって、顧客生涯価値を高める、③再販業者に対して管理を強化する、④再販販路を自社化する、という内容だ。

 ③の再販業者管理強化の例として、高級ファーストフードのインNアウトバーガーは2015年、同社の食品の鮮度を左右する配送時間や手段、ロゴの扱いなどについて配送代行業者のドアダッシュを相手に訴訟を起こすなど、第三者サービスに対して厳しい管理を始めている。

 ④の再販販路の自社化については、アウトドア用品のパタゴニアは自社中古品をギフト券支給で回収し、『ウォーンウェア』というブランド名の販路で自ら再販しているという例を挙げた[1]