過ちの玉突きで業界が沈む

 スマホ決済騒動以前にも、似たような過ちの玉突きがプラットフォーマーから出店者まで波及して不幸の輪が広がった悲劇を忘れてはなるまい。その余波は今もネット販売を脅かしている。

 急成長してきたネット販売に冷水を浴びせたのは17年10月にヤマト運輸が口火を切った宅配料金の大幅値上げで、それに佐川急便や日本郵政も同調して大口利用者ほど大幅な値上げとなった。収益を圧迫されたECプラットフォーマーは出店者にコストを転嫁し出店者は顧客にコストを転嫁し、それまで主流となりつつあった「送料無料」のサイトは18年3月までに皆無となった。

 それでも物流コストを吸収し切れないECプラットフォーマーはローカルの宅配業者や自営運送業者を組織して速くて安い自前の物流体制を築く一方、高収益な新規事業を求めてPBやフィンテックに走った。その失敗が経営を揺るがしてZホールディングスに買収され、PayPay経済圏に組み込まれることになったのがZOZOの悲劇だ。

 

 ZOZOの取扱高は19年3月期までの20%前後の伸びから20年3月期に入って急減速し、第3四半期(10〜12月)は0.3%増とほとんど成長力を失い、営業利益は六掛けを割り込んだ。19年12月期も売上高を14.1%伸ばしたアマゾンジャパンはともかく、水面前後で停滞していた宅配便取扱個数が19年10月以降、一段と落ち込んだのを見る限り他ECサイトも急減速しているはずで、コスト転嫁の玉突きに消費増税が輪をかけた。

 

 業界のリーディング企業が自分本位のコスト転嫁に走り、それが玉突きに広がって結局は顧客に転嫁され、成長業界が斜陽に転ずるという暗転劇はEC業界に限ったことではない。92年以降、バブル崩壊による売上急減を納入掛け率の切り下げ(百貨店の利幅拡大は6年間で12ポイント)で埋めようとした百貨店業界の狂気が取引アパレルの原価切り下げを招き、素人目にもあからさまに分かるほどお値打ちが劣化して顧客が駅ビルやSCに逃げ出してしまい、近年の閉店ラッシュと百貨店アパレル業界の崩壊を招くに至った前例を忘れてはなるまい。

 宅配料金の大幅な値上げに続き、プラットフォーマー各社の新規事業への膨大な投資と損失のしわ寄せが出店者と顧客に及ぶなら、ECの未来は半分閉ざされたようなものだ。