Zホールディングス(ヤフー)によるZOZOの買収、そのヤフーとLINEの経営統合に続き、楽天が出店者負担による送料の一律無料化(税込み3980円以上)を打ち出して公取委に独占的地位の乱用を問われ、スマホ決済の草分けだったオリガミがメルペイ(メルカリのスマホ決済子会社)にゼロ円で身売りするに及んで、プラットフォーマーとフィンテックの壮絶な資本戦がネット販売に依存する小売業者ばかりか店舗小売業者まで振り回す状況に至っている。このままでは資本の論理で業界の再編が進み、その資本コストが小売業者そして顧客に転嫁されるのは避けられない。狂気の資本戦にベンチャーもネット小売業者も押しつぶされていくのだろうか。

資本戦に押しつぶされたオリガミとメルペイ

 16年からスマホ決済を始めた草分けのフィンテックベンチャー、Origami(オリガミ)がメルペイに身売りすることになったが、その対価はゼロ円とも1円(全株で256万円)とも報じられている。全社員185人のうち整理される者が7割とも9割とも伝えられるから、事実上の経営破たんだったことが推察される。同社はこれまで88億円を調達してローカル中心にスマホ決済を広げてきたが、18年12月期の売上高2億2200万円に対して営業損失は25億4400万円と前期の13億600万円から倍増し、資金繰りに行き詰まった。

 それは買収する側のメルペイとて大差なく、百億円単位のキャンペーン戦に巻き込まれ、膨大な赤字を垂れ流している。親会社のメルカリはセグメント情報を開示していないので米国メルカリ事業とメルペイ事業の詳細はつかめないが、20年6月期第2四半期累計(7〜12月)では国内メルカリ事業が売上げを265億円と20%、営業利益を67億円と50%も伸ばしても、139億600万円の営業赤字を計上している。単純計算で両新規事業の合計損失は206億円に上るが、19年6月期にも121億4900万円の営業損失、137億6400万円の純損失を計上しているから、19年2月に提供を開始してからの累計損失はメルペイだけで200億円を軽く超えるはずだ。

LINEPayもPayPayも膨大な累損

 

 先行投資で親会社の屋台骨を揺るがしたのはLINEPayとて同様で、18年12月期の売上高44億円に対して営業費用が97億円にかさんで53億円の営業損失を計上し、累計損失は100億円に迫った。親会社のLINEも18年12月期は売上高2271億円に対して161億円の営業利益を計上していたのに、19年12月期は売上高こそ2274億円と9.8%伸びたが389億円の営業損失、468億円の最終損失に転落。LINEPayを中核とした戦略事業は赤字が665億円に肥大した。

 流石にこのままでは危ないと見て第3四半期からキャンペーン費用など投資を抑制したがてきめんに利用者数が4割減少し、事実上、スマホ決済の覇権争いから脱落。ヤフーとの経営統合へ追い込まれることになった。経営統合におけるZホールディングスとLINEの株式交換比率が1対11.75であることがその事情を推察させる。

 百億円単位のキャンペーンを繰り出して勝ち残ったはずのPayPay(Zホールディングス)とて無傷ではない。19年3月期は売上高5.9億円に対して販管費371億円を要し、367億円の営業損失を計上。20年3月期第3四半期累計(4〜12月)でも、5月にソフトバンクが増資して出資比率を50%から25%に下げたのにPayPay関連で156億円の特別損失を計上している。出資比率の変更タイミングと損失計上の関係がつかみ切れないが、この段階までで累損はZホールディングスだけで523億円、ソフトバンクと合わせて1300億円を超えたのではないか。