3日間で28講座、延べ時間にして約38時間。集合型研修としては国内で最多のプログラムと時間数を誇る『商業界ゼミナール』。

 もちろん、これには並行講座も含まれており、1人で聴講できる時間となるとその半分も満たしません。そのため、企業によっては複数名を参加させることで、できるだけ多くの講座を分担して受講、直後に共有する企業や団体も多いのです。

 違う企業に属す仲間でも、連夜行われる車座商人塾のような交流会で受講内容を共有できるのも『商業界ゼミナール』。こうして学びや気付きの数を増やし、「今、わが社、わが店で実践できることは何か」をつかみ取る3日間とするのです。

※第88回の『商業界ゼミナール』については「こちら」 から

 この『商業界ゼミナール』に毎年参加している暮部恵子さんも、会期中、「女性同友会」の集まりを主催します。暮部さんは、国産オーガニック化粧品メーカー「クレコス」の経営者。同社は、人を、地域を、社会を美しくする「社会派化粧品」と位置付けられています。暮部さんがクレコスをつくりあげた理由、商業界で得た学びと共通する理念とは何かを紹介します。

人だけでなく、地域、社会を美しくする

 クレコスをはじめとする「社会派化粧品」の数々とその取り組みは、萩原健太郎さんの書籍『社会派化粧品』(発行 キラジェンヌ)を通じて紹介されています。同書の一部を引用します。

「この本で紹介している化粧品は、国内外で広く流通しているものとは一線を画する。素材を厳選し、ていねいにつくっていることから、ナチュラルコスメ、オーガニックコスメ、ご当地コスメなどと呼ばれるが、本書は、人を心身から美しくするだけではなく、地域を、社会を美しくする化粧品という思いを込めて、『社会派化粧品』と名づけた」(同書2ページ)。

 商人には想像力が大切です。それは実際には経験していない事柄などを推し量る力。自分ではない“お客さま”の気持ち、心、ニーズを推し量り、それを叶えるようと努めること。

 商業界創立者、倉本長治はそれを「客の心を心とせよ」と表現しました。

 お客さまの心を、自分の心と同じようにしっかりと理解し、寄り添い、その思いに応えることが真の商人の務めであるということです。

 命に直結する“食”には多くの人が強い関心と共感を持ちますが、それ以外はどうでしょうか。自身がほとんど関わりのない対象には、その重要性に思い至ることは少ないのではないでしょうか。その拙さに、本書は気付かせてくれます。

 対象とは化粧品。本書とはジャーナリスト、萩原健太郎さんによる『社会派化粧品』。全国各地で、その土地ならではの資源を活用し、素材を厳選し、丁寧につくられる化粧品を取材、作り手たちの物語を紹介することで、使い手の心身を美しくすることはもちろん、地域や社会をも健やかにする化粧品が芽吹き、花を咲かせていることを知ることができます。

 その先駆者の一人が、生産者の顔が見える国産自然原料を特徴とする化粧品会社「CRECOS(クレコス)」の暮部恵子さんです。

母なる大地の恵みをまっすぐ肌に届けたい

 同社の企業理念は『大地母』。同社のホームページにはこうあります。

『株式会社クレコスは単に化粧品をつくっている会社ではありません。

私たちの化粧品は、いつも農業と深く結びついています。

日本人に日常的に愛用されてきた「和」の植物原料にこだわる思いが生産者の思いと重なりました。

おいしい食べ物と同じように母なる大地の恵みをまっすぐ肌に届けたい。そして、

母から娘へ受け継がれてきた大切な「もの」や「こころ」も伝えていきたいのです。

その気持ちを「大地母」という言葉に託します』

 1993年創業の株式会社クレコスは、創業者であり、現会長の暮部恵子さんのある思いから始まりました。

「自分の娘に、心から信頼して薦められる化粧品をつくりたい」

 創業前、暮部さんは働く主婦として、ある自然派化粧品の販売に携わっていました。

「しかし、中身を調べると、無添加を謳いながらも、あたりまえのように石油由来の成分が含まれていた。自分が納得できるもの、娘に安心して使わせるものがないなら、この手で作るしかない」(71ページ)

「お客さまの幸せのために実践できることを見つけ合いましょう」

 よく「世のため、人のため」という言い方をしますが、それは半面正しく、半面間違っているというか順序が違います。

 まずは身近な一人のために最善を尽くしたとき、その先に世のためが実現します。

「人のため→世のため」の順序でこそ、その営みは広がり、続いていく熱量を持ち得るのではないでしょうか。そして、その熱量を持ち得えない「世のための営み」は、本当の「人のため」でもありません。

 このとき大切なのが「客の心を心とせよ」とした想像力。

 人の集積が世であり、世とは究極のところ人そのものであることをわが事として認識できる力です。

 本書にはクレコスの他にも、こうした想像力に富み、そのために行動する社会派化粧品の作り手たちが登場します。公益性、時代性、そして革新性を備えた彼、彼女たちを知ることは、これからの商いを考える上で欠かせません。その取り組みについては、ぜひ『社会派化粧品』をお読みください。

 そして、88回目を迎える『商業界ゼミナール』には、全国から多くの商人が集います。

 業種、業態、企業規模、店歴・社歴はさまざまですが、一つ共通していることは、「店は客のためにある」の実践に日々取り組んでいること。暮部さんは今年も学びに訪れます。26日には「女性同友会」での学びの場を企画しています。

「女性だけではなく、男性も大歓迎。私たちの会ではスイーツも楽しみながら、気軽にお客さまの幸せのために実践できることを見つけ合いましょう」と暮部さんは語ります。あなたもぜひ、真剣でありながら、かつ親しみやすい「商人の道場」にお越しください。

※暮部さん主催の「女性同友会」もある『商業界ゼミナール』は「こちら」