2月3日、イオンスタイル品川シーサイド店(東京)に行った。節分の日、今年の恵方は西南西。恵方巻きの売場が作られ、また大々的にバレンタインチョコレートの売場がコーナー化されていた。

 そして、ヘルス&ビューティケアの売場では案の定、マスクと消毒液は品切れしていた。「あれ? 従業員のマスク着用率が異常に多い?」 おおよそ8~9割の従業員がマスクを着用していたのも、いつもと異なる光景だ。

昨年はイオンの「マスク着用原則禁止」通達が物議

ファミリーマートではこうした告知が

 昨年末、イオンが「接客時に円滑なコミュニケーションの妨げになるとして従業員にマスク着用を原則禁止の通達をした」という報道がテレビでも取り上げられ、賛否両論の議論が起こったのが、うそのような着用率である。方針転換、または修正があったのか、新型コロナウィルス(以下、新型肺炎)の拡大を機に原則禁止の“原則”の意味を解釈し直したのであろう。

 業態の違いによって、接客の意味と定義は違ってくるのであり、総合スーパー、スーパーマーケット、ドラッグストア、コンビニなどセルフサービス業態を中心とするイオンに果たしてそこまでの接客が必要なのか、そのような接客がお客から求められているのかも疑問である。また従業員がマスクを着用しないことで、お客に感染の不安を与え、店舗が感染の場として風評が流れる心配もある。従業員にとっても感染への不安は大きいといえる。

 ここまで新型肺炎が拡大し、感染への社会不安を引き起こしかねない状況ではマスク着用が、お客に感染への不安を与えないという意味で正しい選択といえる。他の小売業、飲食、サービス業でも、店頭に「当店では、新型肺炎の予防対策としてマスクを着用しております。ご理解の程よろしくお願いいたします」などの張り紙を店頭に掲示して、着用を奨励しているところが多い。

新型肺炎の予防にマスクへの過信は禁物

 

 物議を巻き起こしたマスク着用だが、実際の予防の観点からはどうであろうか。

 世界保健機構(WHO)は新型コロナウィルスについて、必ずしもマスク着用は感染予防にはならないと述べている。厚生労働省のホームページでは「一般的な衛生対策として、風邪や季節性インフルエンザ対策と同様に、咳エチケットや手洗い、うがい、アルコール消毒など行っていただくようお願いします」と書かれている。

 新型コロナウィルスはインフルエンザ同様、主に感染した人の咳やくしゃみなどで飛び散った唾液などの飛沫を通じて感染すると見られている。マスクは感染者が着ければ咳やくしゃみのしぶきの飛散を抑えられて感染拡大の予防には有効だ。だが、マスク着用による感染予防効果は限定的というのは「新型コロナウィルスの直径は1万分の1ミリメートルほど。マスクの生地の目より小さいため生地を通過できるが、咳やくしゃみの唾液状になっている場合は生地の目より大きくなり通過できないため」だ。

 接触感染にも注意が必要で、ウィルスが含まれた飛沫が周囲の物に付着し、それを別の人が触って、その手で目や口、鼻を触ることで感染することにも注意が必要だ。従って、こまめに手洗いをすることと、消毒用のアルコールを使うことが重要になってくるわけだ。

 つまり、「感染者がマスクを着けることは有効だが、予防のためにマスクを着けることは効果が限定的。マスクは他人に感染させないためにエチケットとして着けるべきで、マスクを着けているから安心と過信してはならず、こまめな手洗いとアルコール消毒が予防にとっては重要」ということになる。

インバウンド、商品供給、世界経済にも影響

 

 他にも小売業が注意すべきリスクは多い。

 春節期間に中国からの団体旅行を禁止した影響で訪日客のキャンセルが相次いだ。この影響は今も続いており、いつもは中国からの団体客でにぎわう浅草や、京都も閑散としている。2003年のSARSの時とは比べようもないくらいに中国人訪日客の数は大きくなっており、インバウンドの恩恵を受けてきた百貨店業界を中心に小売業が受ける影響は大きい。

 また中国に進出し、店舗を運営している小売業ではファーストリテイリングや良品計画、イオンなどの店舗で一部営業停止や時短営業などの影響が出ている。

 中国は世界の製造業の拠点となっており、衣料品でいえば、日本で供給される7割近く(数量ベース)を占める圧倒的な生産拠点である。衣料品だけではない。日系のメーカーも製造拠点を中国に移しているし、完成品だけではなく、部品の供給が影響を受けて、商品が品薄になるリスクが考えられる。春の入学、移動シーズンに合わせて、春商品の商材確保に苦労することも考えられる。

 また日本にとっては最大の輸出先である中国への輸出に影響が出る。そのことは世界経済に占める中国経済の大きさにより世界経済に大きな影響を与えるし、何よりも東アジアの経済圏で結び付きの強い日本の経済に大きな影響を与えることになる。

 2月5日は中国の経済対策を好感して戻しているが、3日中国株式市場では約3000銘柄がストップ安となり、上海総合指数は連休前の終値比で7.7%安、同深圳総合指数は8.4%安となり、日経平均も0.9%安であった。

 小売業は世界経済の景気が腰折れし、消費が冷え込むことにも注意が必要だ。