ワークマンが1月31日付で注文受付を終了し、楽天市場店を2月28日で閉店することを決定しました。「楽天の進める送料無料サービスが契機となった」「ワークマンオンラインストアでの売上げ一元化を目指す」など、さまざまな意見が報じられましたが、私個人としては流通プラットフォーム一強に陰りが見えた象徴的な出来事のように感じられました。

消費者と直接出会える企業は強い

WORKMAN Plus1号店の出店場所となった立川市には、ららぽーと立川立飛店の他、WORKMAN立川栄町店とWORKMAN Plus立川砂川店の計3店が出店されている(ワークマン公式サイトより)。店舗検索ページには住所や営業時間だけでなく月の定休日や駐車台数の記載をするなど、お客さまの来店を考えた作りとなっている

 ワークマンは、もともと職人の店として作業服や作業用品を取り扱っていたブランドです。商品の機能性が高く評価されたことから、商品のラインアップを広げて、高い耐久性商材やスポーツトレーニング用など機能性衣料を中心に扱っています。

 作業服や機能性衣料という目的買い要素が強い商材を扱っていること、各メディアで商品が多く取り上げられて認知度が高いことから、オンラインストアとの相性も良いと思います。全国にリアル店舗を857店舗営業しているため、ちょっと商品を見たいと思えば実店舗に行きやすいです。

 それだけではなく、公式サイトから店舗への送客導線もきちんと設計されています。公式サイトの店舗検索ページからは、行きたい地域の店舗情報を簡単に探すことができます。住所、営業時間、電話番号といった基本情報だけでなく、月の定休日や駐車台数記載、また該当店舗ページには10km以内の近隣店舗を表示させるなど、かなりお客さまの気持ちに寄り添ったサイト設計がなされています。

 ただワークマンほど大規模なブランドでなくても、流通プラットフォームを脱して自社で売上げを立てていくことを目指す企業は、今よりもっと増えるのではないかと私は感じています。

 後発参入組や小さなブランドになればなるほど、巨大化した流通プラットフォーム上で見つけてもらうことは難しくなってきます。同じ予算を割くなら、自社の独自性を出して一から取り組みたいという企業は今後も少しずつ増えていくのではないでしょうか。

個店や個人が自ら発信力を持つように

 

 ほんの少し前までは、取り扱い商材が広いアマゾンが全てのリアル店舗のシェアを奪うのではという懸念の声が多く見られました。ところが今ではどうでしょう?アマゾンはprime videoやAmazon musicなど、サブスクリプションサービスを充実させる方向に注力しています。一方、販売されている商品ページでは本来の商品購入者ではないサクラによるレビューが目立つようになりました。

 消費者の行動様式を見ていても、全ての消費や買物を一つの店や流通プラットフォームで済ませる人は少数派です。商品やシーンによって買う場所を使い分けている消費者が、依然として多いです。買い回り行為にはそれなりに時間がかかるものの、選択肢の幅が広がったが故に消費に個人がこだわりを持つのは当たり前になってきたようにも感じます。

 また、SNSやYouTubeなど誰でも気軽に無料で使えるメディアが増えたことで、小さなメーカーや個人の発信でファンを獲得できるようになりました。話題になるためにはそれなりに発信の継続やセンスが必要となるものの、個店側がCMや広告にお金をかけなくても消費者に知ってもらう機会が増えました。

 個店やそこで働く個人は、ブランド・商品へのこだわりや愛があるので「お客さまに語れる内容」がたくさんあります。フォロワー数が桁違いに多い流通プラットフォーム公式アカウントのたった1回の告知よりも、フォロワー数は少なくても身近さや個性が感じられる発信内容が実際の消費に結び付く力を持っていてもおかしくないと思います。 

流通プラットフォームの強みは編集力

 

 もちろん、まだ開始して間もない新ブランドや知名度のない商品であれば、流通プラットフォームを使ってあらゆるところで自社や商品を目にしてもらうことは有効です。さまざまな角度から消費者にアプローチすることは、消費者からの認知度を高める第一歩でもあります。

 流通プラットフォーム側の強みは「見やすさ」や「メッセージ性」といった編集力です。例えばフードデリバリーアプリを見ると、旬のメニューやメインフード、サイドメニュー、デザートなどカテゴリー分けされていて非常に頼みやすい作りとなっています。企業独自のオリジナリティが見られない代わりに、ジャンルやカテゴリー分けなど切り口に工夫が見られ、お客さま側から見ると比較検討がしやすいです。

 個別の企業サイトを訪れてみると、大手チェーン店でも見にくい作りのところは意外とあります。店内のメニューは注文しやすいのに、サイト上では自社商品をただ並べて一覧表示させているだけというケースも意外と見受けられます。メニューの表示方法一つ取っても、まだまだ見せ方の工夫はできるように思います。

 流通プラットフォーム側は、編集力に長けています。商品をきれいに見せるノウハウはもちろん、ユーザーが商品を選びやすいようにする設計やデザイン性は抜群です。個人的には、流通プラットフォームを活用するだけではなくこうしたノウハウや視点を学ぶ店も増えていってほしいと思っています。

「満足度の高い買物」の難しさ

 

 最後に、最近私が考えさせられた個人的な買物体験について記します。

 普段使いの片手鍋を買おうとアマゾンを見たところ、予算内の手軽な値段の商品に気になるレビューを見つけましたが、最終的には買うのをやめてしまいました。

「使用していてすぐに塗装が剥げた」「商品が傷付いて届けられた」「何度洗っても臭いが取れず、料理に付いてしまう」など悪い口コミが数件見えてしまったことで、安かろう悪かろうの商品なのではないかと不安に感じてしまったためです。

 ネット通販で買うことを諦めて周辺のリアル店舗を何件か探してみると、本格的な調理器具ばかりで私が求めているような普段使いのものはなかなか見つかりませんでした。最終的に購入したのは陶磁器専門店で、アマゾンで見ていた商品よりも安いものでした。安価な商品一つだけの購入でしたが、レジの担当者はスムーズに会計し、新聞紙で手早く梱包して手渡してくれました。

 けれど、もしアマゾンで全く同じ商品が同じ値段で販売されていたら、私はきっと「安過ぎて怖い」と感じて購入しなかったと思うのです。流通プラットフォーム上では膨大な商品と全ての口コミが可視化されます。他の商品の存在や他者の口コミは自分の中で新たな判断基準を持つ助けにもなり得ますが、同時に迷いを生み、当初の自分なら気にならない意見によって購買意欲を削ぐ力も持っているのではないでしょうか。

 本当に「自分にとって」満足度の高い買物をするのは、実はとても難しくなってきているのかもしれない……。個人的な買物から、そんなことを強く感じさせられました。