ユナイテッドアローズは従来の6シーズンMDから細分化した8シーズンMDに移行している

 昨年の冬商戦は消費増税に暖冬も加わって衣料品販売は百貨店からユニクロまで大苦戦となったが、過剰供給が慢性化しEC先導で年々セール時期が早まる中、どうやったら売上げも利益も確保できるのか、定石も方程式も見えなくなっている。そんな苦境を打開すべくデジタル生産によるオンデマンド・サプライやAIを駆使した需要予測が模索され、ユナイテッドアローズは従来の6シーズンMDから細分化した8シーズンMDに移行し、ストライプインターナショナルは14の気温別MDへの転換をもくろむが、それでは現実の在庫回転の倍も3倍ものMDを投入することになる。シーズンMDの細分化は実需対応力を高め在庫回転を円滑化するのか、はたまた過剰な投入でかえって悪化させてしまうのか、根本から考えてみたい。

温暖化ってホント?

 毎冬のように「暖冬」が販売不振の元凶のようにいわれるが、ホントにそうだろうか。

 気象庁に記録が残る1876年からの推移を見ると、1880年代から1950年代までは気温が低く今とは逆に寒冷化が危惧されていたが、60年代から暖かくなり始めて1980年代以降は急速に温暖化が進み、2000年以降は西日本から中部の太平洋側は亜熱帯化するほど温暖化し、1世紀前からは3度近く平均温度が上昇している。20世紀の100年間で北半球の気温は1.0度しか上昇していないから、わが国の温暖化は突出している。

 だからといって今後も温暖化傾向が続くとは限らず、異常気象の頻発など地質気象学的には周期相から乱雑相へ転じて10年単位では小氷期入りも危惧されているから線型的に温暖化すると見るのは早計だが、2020年代の前半というレンジに限れば温暖化、とりわけ冬季の最低気温上昇が進むと見て良いだろう。

 夏場が暑くなったからといって下着を除けば需要が伸びるわけではないが、冬場の最低気温が上昇すれば防寒衣料の需要は確実に低下する。ヒートアイランド化が進み空調も効いた大都市の生活では防寒衣料の需要は減退し、カントリーやリゾートのアウトドア需要にシフトしていく。実際、防寒アウターの販売動向はその通りになっている。

 加えて非正規雇用の拡大とともにビジネスシーンのカジュアル化も急進しており、パンプスがスニーカーに替わるようにウールコートからダウンや中綿のアウターへ移行している。とりわけブランドもののダウンアウターはこの10年ほどで急拡大しており、その分、既存ブランドの防寒アウターが食われたことは言うまでもない。

 温暖化もともかくライフスタイルとウエアリングの変化が防寒アウター市場を萎縮させており、防寒アウターが主力の11〜12月売上げが年間の百貨店衣料売上げに占める比率は08年の19.44%から18年は18.97%、19年も18.07%、婦人衣料売上に占める比率も18年の18.69%から19年は17.88%に低下している。

 防寒アウターの需要減にボーナス支給が限られる非正規雇用の拡大などによる12月の売上低下も加わって年間売上げに占める冬期シェアが低下する一方、他シーズンをかさ上げするアイテムも広がらないまま単価ダウンが進み、衣料消費総体の萎縮が進行している。

 

セール時期後倒しには無理があった

 コストを抑えるべくの遠隔地大ロット生産で企画時期と販売時期が半年前後も離れて需給ギャップが拡大し、過剰供給も相まって年々セール時期が早まり、消化歩留まりが悪化してきた。

 80年代初期と比べて夏の本セール開始時期は3週間早まり、冬の本セール開始時期も若干早期化したが、それは表向きの結果論にすぎない。本セールに先行するプレセールの早期化やECでのクーポン販売の氾濫など、実質的な値崩れの早期化が消費者のプロパー買い控えを招いている。

 百貨店ブランドなど80年代初期に比べれば原価率が半分以下に切り詰められてお値打ち感が激減したのだからプロパー購入に躊躇する顧客が増えるのも致し方ないが、お値頃価格を売り物にするSPAにしても大ロット先行生産がもたらす需給ギャップを値引き販売で埋める荒っぽい在庫運用が日常化しており、『ちょっと待てば安くなる』と買い控える慣習が広がっている。その挙句に誰もプロパー価格で買わなくなって販売不振に陥った「GAP」を例外と言えないのが業界の現実だ。

 過剰供給と見切り発車の大ロット先行生産をやめない限り値崩れの早期化は必定で、業界ぐるみでセールの後倒しをもくろんでも顧客が他に流れるだけで解決にはならない。12年の夏セールから三越伊勢丹とルミネが音頭を取って無理押ししたセール時期の後倒しも冬セールは三越伊勢丹が16年から、ルミネも17年から元に戻し、夏セールも三越伊勢丹は18年から他百貨店と同列に戻し、ルミネも19年では本セールは7月25日から開始でも6月21日からプレセールを始めている。

 価格カルテルまがいの業界ぐるみセール時期後倒しも過剰供給と需給ギャップという現実の前にはあえなく崩れ、以前にも増してEC先行の値崩れが広がる中、それぞれの企業が独自のMD展開とオンデマンド調達で値崩れを回避する工夫が問われている。