2020年に入り、1月も終わろうとしているが、2020年の小売業を占う上で気になる数字が続々と発表されている。

 今年は子年、十二支の1番目にあたる。また今年の干支は「庚子」(かのえね)となる。

 さて、それでは2020年の小売業を占う上でも、「庚子」とはどのような年になるのであろうか、過去の歴史からその傾向を探ってみよう。

2020年は「終わり」と「始まり」の変化の年

 

 前回の庚子は60年前の1960年である。1960年に起こった出来事を振り返ってみよう。

  • ・1月1日 「アフリカの年」第1号としてカメルーン独立、この年17カ国が独立

  • ・1月19日 日米新安全保障条約が結ばれる

  • 2月23日 今上天皇が生まれる

  • ・4月19日 韓国で李承晩打倒を叫ぶ市民が蜂起、四月革命開始

  • ・5月1日 U-2撃墜事件発生、アメリカのスパイ偵察機がソ連領内で撃墜される

  • 6月15日 全学連7000人が国会突入。東大生樺美智子さんが死亡する。

  • ・7月15日 岸内閣総辞職

  • 9月10日 カラーテレビの本放送開始

  • 9月30日 プロレスラーのジャイアント馬場とアントニオ猪木が台東区立体育館でデビュー

  • 10月12日 日本社民党の浅沼稲次郎委員長が演説中、右翼の少年に暗殺される

  • ・12月20日 南ベトナム解放民族戦線結成

  • ・12月27日 池田首相、所得倍増計画を発表

  •  安保闘争の敗北と挫折に重ね合わせて歌われた西田佐知子「アカシアの雨がやむとき」がヒット曲となった他、映画では「勝手にしやがれ」(監督:ジャン=リュック・ゴダール)、「日本の夜と霧」(監督:大島渚)などのヌーヴェル・バーグがヒットしたのもこの年だ。

「庚子」は十干の「庚(かのえ)」が「終わり」を、十二支の「子(ね)」が「始まり」を意味する。「庚」はもうこれ以上は成長しない時期で、今後は枯れていくタイミング。「成長の終わり」を意味する。「子」は十二支の最初、始まりを意味する。「庚子」の年は物事が枯れて終わり、新しい種から芽が出始めようとする、変化の年の意味を持つ。

小売り変調か、続々出てくる気になる数字

 

 この「終わり」と「始まり」の変化の年を象徴するかのような数字や統計が1月になって相次いで発表された。2020年を占う兆候となる数字を見ていこう。

 まず1番目は「19年10~12月の実質GDP成長率」である。正式な数字は内閣府より2月17日に1次速報が公開されるが、15日に日本経済研究センターが民間エコノミストの経済見通しを集計した「ESPフォーキャスト調査」を発表した。

 それによると、2019年10~12月期の実質GDP成長率(前期比年率)はマイナス3.55%となった。消費増税後の落ち込みからの戻りは、20年1~3月期に年率0.54%とプラス成長に回復する。景気の山が「過ぎた」という回答者は、前月の9人から11人に増加した。また山が来る確率は回答者全員の平均で55.5%と前月より上昇した。「過ぎた」か「これから来る」かは別として景気の転換点を予測する回答者が半数を超えている。

 2番目は23日に日本チェーンストア協会が発表した「2019年1~12月(暦年)チェーンストア販売概況」。これによると、売上高は12兆4324億74百万円で、店舗調整後98.2%ととなり2016年以来4年連続のマイナスとなった。

 3番目は21日にオール日本スーパーマーケット協会、日本スーパーマーケット協会、全国スーパーマーケット協会の3団体が発表した「スーパーマーケット販売統計調査の2019年年間実績(速報版)」。これによると、総売上高は10兆7880億3.357万円、前年比0.1%減で2011年の調査開始以来初めて、前年割れとなった。

 4番目は8日に帝国データバンクが発表した「スーパーマーケット経営業者の倒産動向調査(2019年)」。これによると、2019年のスーパーマーケット経営業者の倒産は30件(前年比42.9%増)となり、2012年以来7年ぶりに前年比増加となった。負債総額は188億3000万円(同125.4%増)。理由としては競争激化と消費増税の影響と分析している。

 5番目は20日に日本フランチャイズチェーン協会が発表した「2019年12月度 JAFコンビニエンスストア統計調査月報」。これによれば2019年12月末の店舗数は5万5620店で18年12月末の5万5743店に対し123店減り、前年同月比で-0.2%の減少となった。年間の統計で店舗数が前年末実績を下回るのは、05年以来同統計初である。

 6番目は22日に日本ショッピングセンター協会が発表した「SC販売調査報告 2019年12月」。これによると、12月の既存SCの売上げ前年同月比はマイナス3.6%となり、3か月連続マイナスとなった。前年より休日日数が2日少なかったこと、全国的に平年より気温が高めに推移したことにより冬物商品の売れ行きが鈍かったことなどが響いたとしている。

 7番目は22日に日本百貨店協会が発表した「令和元年12月 全国百貨店売上高概況」。これによると2019年12月の売上高総額は6404億円で、3カ月連続のマイナスとなった。消費増税後の反動が残る中、一部商材に回復傾向が見られたものの、暖冬で主力の重衣料等冬物商材が苦戦した他、土曜・祝日2日減、さらには円高等によるインバウンドの不調などマイナス与件が重なったとしている。

 日本百貨店協会がこの発表をした直後の27日、1700年創業で、松坂屋、三越に次ぎ全国3番目の老舗とされる山形県唯一の百貨店「大沼」が山形地裁に自己破産を申請し、同日、破産手続き開始決定を受けた。消費増税に加え、台風による被害などの影響を受け「昨年10月は前年同期比で30数%売上げが落ち、11月も30%減となった」(長澤光洋社長)という。消費増税の影響が大きかったことがうかがわれる。また山形県は百貨店がない都道府県となった。

既存小売勢力をひっくり返す新勢力が生まれる!?

 

 これらの数字を消費増税による一過性のものみるか、景気の転換点を示す兆候とみてデフレ傾向が強まるとみるのかは、現時点では分からない。昨年12月5日に政府は事業規模26兆円、財政支出13.2兆円となる経済対策を発表し、この経済対策が、実質GDPを1.4%ポイント押し上げるという試算結果を発表している。しかし消費増税2%分は確実に消費を押し下げ、消費水準は容易には戻らないだろう。

 2020年は東京オリンピックの開催という明るい話題もあるが、昨年日本における出生数が、推計より2年早く90万人を割れるなど人口減少は予測を上回って加速。もちろん、日本の消費の規模は縮小していく。また世界に目をやれば、米中貿貿易戦争は落ち着きを見せているが、構造的にはくすぶり続けており、中東情勢も依然として緊張が続いている。これらの不安定な国際情勢が世界経済の景気に及ぼすリスクは高い。

 また27日には日経平均株価は、2万3343円の前週末比438円67銭安の急反落で今年最大の下げ幅になった。これは2019年3月25日以来、約10カ月ぶりの大きさである。新型肺炎の感染拡大が世界景気に悪影響をもたらすとの見方が広がったためだ。投資家心理を冷やす突発的な出来事が起こることにも注意が必要だ。

 2020年庚子の年は終わりと始まりが共存する変化の年である。外部環境が構造変化を起こすとき、新たに生まれつつある外部環境の萌芽とともに成長する者には大きなチャンスの時でもある。既存の小売り勢力が成長を終え、既存勢力をひっくり返す新たな芽が生まれてくる年になるかもしれない。その種は既に蒔かれているのである。