OMOリテラシーを問う

 C&C(クリック&コレクト)は端的にはECで注文して店舗で受け取る仕組みを言うが、EC専業者に対する店舗小売業者のアドバンテージを最大化するOMO(Online Merges with Offline)戦略としては、以下のように拡大して考えるべきだ。

1)ウェブ&ショールーミング

 ECサイトやSNSの情報で店舗に誘導するウェブルーミング、ECサイトの情報を店舗で活用するショールーミング、両面のO2Oで店舗販売を活性化する。ウェブルーミングでは店舗在庫の検索と取り置きや発注、ショールーミングではECサイトの商品情報へ飛ばすQRコード(アプリを使えばバーコードでも可)が要となる。

2)顧客利便の最大化と物流コストの圧縮、在庫の効率化

 EC専業者では高くて遅い全国区宅配業者を使うにせよ速くて安いローカル宅配業者を使うにせよ個口のピッキングと配送が不可避で物流コストの抑制も在庫の効率化にも限界があるが、多店舗展開する小売業者にとっては一括配送の店舗物流を使って物流コストを圧縮し、店舗在庫を引き当てて在庫効率を高めることが容易にできる。

 EC受注に店在庫を引き当て店で渡せば最速で顧客に渡せるし(近辺への当日受け取り店出荷も可)、EC比率が高まっても店舗在庫が圧迫されて売上げが落ちることもない。過去5年間で有力アパレルのEC比率は10ポイント前後も高まり、その分がDC在庫に積まれて店舗在庫は10ポイントも薄くなった。それが店舗の販売機会を損なって売上げの足を引っ張ったことは疑う余地もないが、EC受注に店舗在庫を引き当てればそんな弊害もなくなる。

3)店舗の顧客拡大と売上増

 店受け取りやお試しでEC顧客が来店すれば店舗でも購入するようになり、店舗売上げを少なからず押し上げる。SPACメンバーの平均では店舗だけで購入する顧客/ECだけで購入する顧客/どちらでも購入する顧客の比率は7対2対1、年間の購入金額は100対67対220だったから(国内ユニクロのデータも大差ない)、ECだけで購入する顧客が受け取りに訪れて店舗でも購入するようになると店舗の売上げは最大28.3%も増える計算になる。

4)エリアマーケティングとテザリング

 店舗をC&C拠点とするOMOを進めるにはマーケティングと物流の概念も根底から変えなければならない。EC受注に最適位置の店舗在庫を引き当て(店受け取りでは顧客が選択する)、地域のEC顧客を店受け取りで店舗顧客に取り込んでいくには、エリア単位のマーケティングと物流体制が不可欠だ。

 ECと店舗の顧客データを一元化してエリアごとにECと店舗の売上げバランスを最適化し、時間単位でエリア内の在庫を運用する体制が求められる。店舗網の布陣もイメージ発信と量販の旗艦店(高家賃大型店)、受け取りとお試し利便のサテライト店舗群、エリア各店舗への補給基地となる大型母店(低家賃大型店)を意図して配置するようになる。店出荷とテザリング(店舗間補給)を連携する地域ルート便体制が不可欠なのは言うまでもない。

腐れども“宝の山”のしまむら

 現在のしまむらは顧客も見えずOMOのリテラシーも欠く経営陣の下で業績を悪化させるばかりだが、腐ったとはいえ“宝の山”であることに変わりはない。

 大衆の生活圏に密着した平均1008平米の2161店舗(1月20日の国内店舗)は主婦やJK、JCの生活動線上に位置し、店頭のレジ周辺スペースにもフィッティングスペースにもゆとりがあり、優秀なパート従業員にも恵まれた稀有なラストワンマイル拠点と評価される。しまむらにとってはコストセンターでも、アマゾンや楽天、Zホールディングス(ヤフー)などECプラットフォーマーにとっては受け取りやお試しのC&C拠点として垂ぜんの的に違いない。

 しまむらの経営陣がOMOのリテラシーに目覚めて2161店舗をC&Cのオープンプラットフォームに変身させれば、来店客数が激増して売上げは2〜3割以上伸び、利益は倍増するに違いないが、かたくなに目をつむり続ければいずれ巨大ECプラットフォーマーにのみ込まれることになる。Zホールディングス(ヤフー)がZOZOをのみ込むのに4007億円(発行済株式の50.1%)を要したが、しまむらをのみ込むには1478億円(同、1月24日終値)しか要しない。

 大衆ファッションストアとしての立て直しも1)トレンド品は短サイクル調達売り切り、定番品はVMI、期末はオフプライスストア化と割り切り、2)プチプラのコスメやジュエリーを大きく拡充し、3)フィッティング環境を快適化し、しゃれたカフェサービスなどを加えて近隣の主婦やJKが楽しく集えるネイバーサロンに変貌させれば短期に成果が出せるはずで、安い買物になるだろう。