東レの「プリンテッドICタグ」

 東レは炭素原料でICチップを直接印刷する「プリンテッドICタグ」を単価2円以下で商品化し、22年にもICタグ事業に参入する。これによりICタグの普及が爆発的に加速するのはもちろん、画像解析AIとICタグが競い合うリテールDX(デジタルトランスフォーメーション)のトレンドも大きく変わるのではないか。

単価2円の衝撃!

 この「プリンテッドICタグ」は高電導性の高強度カーボンナノチューブ(CNT)でICチップ回路を直接印刷するもので、低コストRFIDタグのみならずバイオセンサーにも活用できる画期的なものだ。技術そのものは東レが17年2月に発表済みだったから、読み取り精度と量産技術にめどがついて商品化にこぎ着けたと思われる。

 耐水性や耐熱性、洗濯堅牢性など、どこまでクリアされての「2円」なのかはまだ明らかにされておらず、水気のある生鮮食品や加熱提供する惣菜、繰り返し洗濯するレンタルユニフォームなどまで使用が可能なのか分からないが、衣料品や生活雑貨、グロサリー食品など大半のアイテムをカバーできると期待される。

 低価格RFIDタグは大日本印刷も手掛け、今年中に5円以下、25年に1円を標榜しているが、こちらはICチップの小型化によるもので「プリンテッドICタグ」ではない。ICチップの小型化では村田製作所も先行しているが、東レの「プリンテッドICタグ」によるICタグ事業参入は各社のシェアも一変させるのではないか。

 ICタグは単価がネックとなり、ブランド衣料など高単価アイテムでは普及が進んでも生活雑貨や食品など低単価アイテムへの普及が進まないでいたが、22年以降はスーパーマーケットやコンビニなどにも広がるに違いない。人手不足と人件費が小売業の経営をジリジリと圧迫する中、在庫管理(賞味期限管理も!)と精算を画期的に効率化できるICタグが低コストで普及すれば店舗のデジタル化/省人化が一気に進む。

※ここで言うICタグ/RFIDタグは低コストなパッシブROM型を指す。

無人精算もPOSレジ並みに普及する

「Amazon Go」が火を点けた無人精算も“実験”段階を過ぎ、POSレジ並みの普及が目前に迫っている。NTTデータは19年9月から提供しているQRコード認証のレジ無し精算システム「Catch&Go」に「顔認証入店」と「店頭在庫連携ダイナミックプライシング」を導入し、22年度末までに1000店舗への導入を目指す。

NTTデータのデジタルストア構想図

「Catch&Go」は「Amazon Go」と同様な画像解析AIと重量センサーによるレジ無し精算システムで、中国のCloudPick社と提携して導入したもの。「Amazon Go」と同様、ICタグは使っておらず、在庫管理も精算も画像解析AIベースで、サプライチェーン総体のDXは視野に入っていない。

 なんちゃらPay騒動でケチがついたとはいえ、QRコードや生体認証による無人決済、画像解析AIや重量センサーによる無人精算(ICタグ方式もある)は、もはや先進技術からコストと扱いやすさが問われる普及技術の段階に入っており、どこのシステムがデフェクトスタンダードになるかゴールが迫っている。米国でも「Amazon Go」を追って幾つものシステムがリリースされているが、決済プラットフォーム(CAFIS)を握るNTTが顔認証やダイナミックプライシングまで踏み込んだ実用的なパッケージの普及を急ぐ意味は大きい。

 これまで国内ではローソンやトライアルカンパニーなど個別企業の“実験”が注目されたが、人手不足が小売業最大のアキレス腱となる中、メジャーなプラットフォーマーによるPOSレジ並みの普及が始まろうとしている。