両者に共通する在庫負担の闇

 もう一つ、良品計画の利益を圧迫しているのが在庫の積み上がりで、実質坪当たり在庫は16年2月期の40.30万円から19年2月期は49.41万円まで22.6%も増加している。この間の坪販売効率の上昇は6.9%でしかなかったから在庫負担が高まった。

 良品計画の在庫運用は外部には理解し難いほど複雑で、良品計画単体が抱える在庫のうち店舗にあるのは37%だけで、63%は本部(DC)に積まれている。「実質坪当たり在庫」が決算説明書の記載数値の2.7倍になるのはそういうわけだ。しかも、ECを拡大してきたせいか店舗在庫率は年々低下しており、15年2月期には49.4%だったのが18年2月期には40.7%まで落ち、19年2月期には37.0%まで落ちている。しかも、それは販売期間に入った在庫だけで、シーズン前に仕上がった生産地在庫は海外店舗向けも含めてグループのソーシング子会社が管理しており、連結決算では2.2倍にも膨らむ。海外店舗向けの在庫を差し引いても、店舗にある在庫は全体の4分の1ほどにすぎないという計算になる。

 これはユニクロとて同様で、店舗が抱えるのは国内在庫の40%ほどで、残りの60%は国内の補給倉庫に積まれており、さらに販売期間前に生産地倉庫に積み上がった在庫が国内倉庫在庫と同じぐらい(時期で大きく異なる)あるはずだ。となれば、店舗が抱える在庫は全体の25%ほどになる計算で、良品計画と大差ない。

 年間の在庫回転も店頭在庫だけでなく、国内倉庫在庫やソーシング子会社や商社が抱える生産地倉庫在庫も合わせて算出しなければ実態はつかめない。良品計画の場合は単体で4.95回転が連結だと2.44回転に落ちるから(19年2月期)、まだしも分かりやすい。ユニクロの場合は意図的かと疑いたくなるほどで、18年8月期第2四半期までは店舗在庫しかBSに計上しておらず、第3四半期から国内倉庫在庫を計上して在庫が2.4倍に膨れ上がり、在庫回転は5.01回から3.10回に急落し、19年8月期では2.43回転まで落ちている(期首在庫と期末在庫の平均を基準とするため)。しかも、商社が管理する生産地の仕上がり在庫はまだ計上されておらず、それまで加えると実質は2回転しかしていないと推察される。

SPAの幻想を捨てデジタル生産とVMIに賭けよ

 両者に限らず、小売業からSPA化したケースでは初期はベンダーやOEM業者、大きくなってくると商社やソーシング子会社に海外生産地から国内倉庫までの物流と在庫管理、そして在庫負担を担わせるのが常識で、その間がブラックボックスになるかならないかが問われる。

 ユニクロの場合は有明プロジェクトの過程で商社に任せっ切りの実態が露呈したが、直近決算の方針を見ても根本的に解決する意思があるようには見えない。オンデマンドな補給をうたう一方で生産地倉庫には相も変わらず作り貯めするという矛盾は理解し難い。良品計画がその点をどう考えているかは分からないが、直営店とは限らない海外店舗への商品供給をオンデマンド化するのは想像以上の困難が伴うだろう。

 コストの安い遠隔地で大量生産して積み上げ、シーズン前に国内倉庫に移送して、店舗の販売動向に即して補給し売り減らす、という古典的なSPAの在庫効率は救いのないもので、効率的な流通で良品を低価格で提供するという理想には遠い。私が推計した正価対比の調達原価率はユニクロで36.5%、良品計画で34.0%だが、ユニクロの方は商社への手数料が乗っているから、実質は似たようなものだ。ワークマンは44.3%と一回り高いが、65%という“神話”には遠い。

 50%を超える原価率で革命的にお値打ちな商品を提供するには、受注先行の無在庫デジタル高速生産か、生産ラインを短サイクルでコントロールできるベンダーと取り組むVMIしかありえない。いい加減にSPA神話の幻想から覚め、大量の在庫を抱えず在庫ロスのないサプライチェーンを築くべきだろう。