あなたは40億円の負債を抱える年商20億円の会社を引き継ぐことになったらどうするだろうか。既に多くの申し込み者を数える『商業界ゼミナール』(2020年2月25日~27日)の事前アンケートで“聴講したい”の上位に挙げられているのが、本タイトルの講座。

『ある日突然40億円の借金を背負う』(PHP研究所)という本がある。著者は湯澤剛。同書のサブタイトルが「それでも人生は何とかなる」

 40億円の借金を完済したからこそ、その足跡を著書に残し、商業界ゼミナールにも登壇し、自身の体験を話すことができる。この講座では、“常識外れ”の借金を完済した“常識を超えた”再建術の入り口と取り組んだことを知ることができる。

第88回『商業界ゼミナール』について知りたい方はhttps://www.shogyokai.co.jp/sseminar_2020/ から!

返済に80年かかるといわれた

 湯澤氏がこの会社を引き継いだのは1999年のこと。

 当時、36歳の彼はキリンビールの営業として海外事業も手掛けるやり手のビジネスマン。その将来も自他ともに期待されていたはずだった。

 そんな彼が父親から引き継いだ会社「湯佐和」。当時、居酒屋など33店舗を展開する同社の年商は約20億円。そもそも継ぐ気がなかった会社だったが、社長である父親の急死による会社の混乱の中で、金融機関、従業員からの要望もあって放置することもできずに“とりあえず”当面、引き継ぐことになった。だが、すぐに“社長”と呼ばれた湯澤氏は会社の決算書に目を通し、「体中から力が抜けたようになった」という。

 借金総額4,000,000,000円。当時の湯佐和の収益力では返済に「80年かかる」といわれるほどの金額。しかも、それ以上に店舗の士気も低い状態にあり、従業員の離反も著しく収益力は悪化の一途。実際は返済不可能といえる負債であった。

 当時の湯澤氏にとって「最大の悩みであった金融機関との交渉と社内のマネジメント」に向き合いつつ、店舗をどう変えたか、従業員をどう変えたか、金融機関との交渉をどう乗り切ったか。飲食業の知識はもちろん、マネジメント経験、従業員の名前と顔すら覚えていない中でのスタートだった。

1店舗の成功事例づくりで変わり始めた

 まず洋風居酒屋、回転すし、カラオケ、サウナなど先代が手当たり次第といっていいほどに広げていた事業を整理し、併せて資産を売却して負債の軽減を図った。残った居酒屋はターゲットを従来の女性、ファミリー層から中高年の男性層にシフトした。そのためのモデル店を1店舗つくり、絶対に成功させようという意志のもと、店の仕組みと形の大転換を図った。

 メニューも「もつ煮」「マグロぶつ」などに注力し、品数も大幅に絞り込んだ。メニューブックも廃止、付け合わせ用の野菜もやめるなどオペレーションの簡素化や原価の引き下げを図る一方で、来店を促すためにのれんのサイズを小さくし、外からでも店内を見やすくするなど、従前、当たり前としてきた店舗の姿を大きく変えた。

 初年度から損益計算書上の経常利益を確保し、地道に返済を重ね、貸借対照表上では有利子負債、債務超過を確実に減らす。この取り組みを16年間、この間も食中毒事故、店舗の火災などの災難にも見舞われた。

 そもそも「破産した方が気が楽」という状態でなぜ会社を引き継ぎ、継続させようとしたのか。そして「(借金が増えようと減ろうと気にせずに)5年間だけがんばる」として、取り組んだことは何か。

 緊急事態(フロアや調理場でのトラブルへの対処など)への「当面策」と、根本問題(人材採用や育成の仕組み、マニュアル不備など)にメスを入れる「根本策」に分けつつ、並行して実行すること。これは言葉にする以上にはるかに大変なことである。そのための工夫とは。

 モグラたたきのように頻出する当面策に忙殺され、根本策を後回しにしないために、当面策は現場事務所、根本策は会議室で考えるといった思考を巡らす場所を変えるなど物理的に頭の切り替えを行うことが一つ。根本策として考えたのが、先の1店舗の成功事例づくりであった。

 さらにアルバイトリーダー経験のある従業員をモデル店長に任せ、湯澤氏も徹底的なマンツーマンのコミュニケーションで来店客の様子、メニューの売れ行き、運営面での課題など日々の店舗運営のフィードバックを行い、改善を進めていった。

 会社務めのサラリーマンではもちろん、多くのビジネススクールでも学ぶことができない常識を超えた債務完済に向けての大荒療治。店舗もようやく軌道に乗せ始めた湯澤氏がたどり着いた現在地とこれからに向けた心境は多くの経営者、あるいは経営を志す人にとって、考えておきたい境地である。

第88回『商業界ゼミナール』に参加を希望される方はhttps://www.shogyokai.co.jp/sseminar_2020/