1974年生まれ。上智大学経済学部経営学科卒業。大学在学中のカラオケボックスのアルバイトで経営に興味を持ち、大学4年の時、当時ネットベンチャーだったサイバーエージェントでインターンを開始。1999年1月に卒業を待たずに入社。その後、子会社トラフィックゲート(現 リンクシェア・ジャパン)の立ち上げから関わり、役員に就任。上場準備をしていたが、楽天による完全子会社化に伴って退職。2010年グルメイノベーション株式会社を設立。(Photo/山田ヒロシ)

時代に即した新しいものをドンドン取り入れる先見性と勇気があり、市場を開拓して今までなかったマーケットをつくり出していく、そんな企業家たちを紹介する、連載「革新企業家たち」。2回目はグルメイノベーションの井上琢磨代表取締役だ。

「宅麺.com」店であることがステータスに

 家に居ながらにして、行列のできるラーメン屋さんのラーメンを食べることができたら……。自宅から遠く離れているけれど、一度は食べてみたい人気のラーメンを届けてもらえたら……。

 そんな夢をかなえたのが「インターネット通販サイト宅麺.com」である。

 ネットで注文すると、全国にある行列のできるラーメン屋さんの麺やスープなどを冷凍したものが宅配される。受け取った利用者は自宅のキッチンで麺をゆで、スープを湯煎で解凍して自分の家にある器に入れて食卓に出すという形式だ。

 スーパーマーケットなどで売っている有名ラーメン店との提携商品は、似てはいるけどスープが濃縮のためか違う味わいになる。だからこそ「宅麺」は、ラーメン好きにとってお店の本物の味をそのまま味わえる本格ラーメンとして好評を博している。

 

 

 2010年に始まったこのビジネス、今では「契約ブランド150、店舗数200、会員数10万人、年間売上げ2億円、前年対比20%増」(井上社長)と成長を続けている。

 

 サイト開設後、たったの1年で『一風堂』や『風雲児』といった人気ラーメン店の商品の取り扱いを始め、今では「宅麺」にラインアップされていることがステータスになるほどである。日本のラーメン愛好家の人口からすると会員数はまだまだ伸びそうだで、さらに、2014年からはシンガポールで実店舗もFC含めて3店舗展開している。

インターネットマーケティング企業として

 社長の井上琢磨さんは、インターネット広告のマーケティング会社であるサイバーエージェントグループにいた。まだ、サイバーエージョントが数人しかいなかった創業期にインターンシップから新卒1期生として入社し、200人ぐらいの規模になって上場するまでを体験してきた。その後、サイバーエージェントの中でトラフィックゲートというアフィリエイト会社を立ち上げ100人規模の企業に成長させ上場準備をする。最終的にその会社は楽天に売却することになり、楽天の会社と合併させることになった。

「トラフィックゲートで経営者という立場で立ち上げから経験して、合併した後にも経営者として残るという選択肢もあったんですけれど、もう一回、自分で今度はまた立場を変えてオーナー兼経営者として新しく事業を立ち上げたいなと思ったのがきっかけです」

 サイバーエージェントもトラフィックゲートもインターネットのマーケティング企業である。顧客のマーケティングの手伝いをしているうちに「形のあるものを扱っていきたい」と考えるに至った。

 それにしてもなぜラーメンを選んだのだろうか。

 

「辞める前にいろいろなアイデアをいろんな人と会ってブレストしてっていう中で、近所に『大勝軒』とか『なんでんかんでん』という人気のラーメン屋さんがあって、店頭でお土産として買って帰って嫁さんに食べさせたりとか、実家で正月3日目の、おせちに飽きちゃっている昼飯にものすごく喜んでくれたりとかすることがあって。特に家庭に入った女性って行列のできるようなラーメン屋さんってなかなか行く機会がないじゃないですか」

 確かに、私も、「ラーメンが食べたい」と口に出すのはエレガントでない気がして言いづらい上に、男性に交ざってラーメン屋さんの行列に並ぶのは何とも気恥ずかしい。そんな時に「お役立ち」なのが、この「宅麺」である。これなら、本当においしいラーメンを自宅で、心ゆくまで堪能することができる。

「潜在需要が結構あるんじゃないかと思ったときに、個々のラーメン屋さんが独自にインターネットで事業をするにはコストがかかりますし、それ以外の負荷もかかるので、全国にあるたくさんのラーメン屋さんをまとめれば事業になり得るんじゃないか。そういうモデルが成り立つのではないかと考えました。そのアイデアをたまたま中学・高校の同級生で飲食店を10年以上経営している友人に話したら面白いねって。ラーメン屋さんもアイドルタイムが割とあって、手が空いているときに寸胴鍋の余力で作っておいたものや、天気が悪くてたまたま出なかった分を冷凍できれば飲食店にとって優しいビジネスモデルだし、お店の商圏もグンと広がると共感してくれて、取締役の野間口と一緒に会社を始めることになりました」