増床と活性化が国内の好調を支えている

――今期の出店は19年9月に開いたイオン藤井寺SC(大阪府)だけだが、上期は国内も増収増益だった。要因は。

 吉田:一つは活性化です。今期は4月に東浦(愛知県)、名取(宮城県)、沖縄ライカム(沖縄県)、9月に高岡(富山県)を増床しました。総賃貸面積の増加量は新店2店分に匹敵します。

 東浦は01年に開業した古い店でお客さまから見ると幾つかの「不」があった。フードコートはいつ行っても満員で、飲食店の数が少ないとか、子供の店ぞろえが満足できないとか。今回の増床でフードコートは1000席に倍増し、レストランゾーンも増床棟に移設。キッズも強化しました。

 増床は同じ場所に大型化した新店を造るという考え方です。増床棟を造るときに既存棟も合わせて造り直します。東浦は16%の増床で上期の売上げは改装前の70%増。お客さまが不便に感じていたことが解消し、欲しかったものが導入されたからです。

 9月に増床した高岡も北陸新幹線の新高岡駅ができて、駅側に増床棟を建設しました。ファストファッションの店ぞろえが欲しいという声に応えて強化し、1日遊べるアミューズメントも充実しました。動線も整理して、計画以上に推移しています。

 モールが高齢化し陳腐化するとリニューアルで若返らせ、鮮度を上げる。すると魅力が高まりお客さまが集まる。専門店の入れ替えだけでなく、コミュニティが生まれるイベントスペースなどさまざまな機能を導入しています。

中国事業が黒字化、ASEANはさらに伸びる

――海外事業について。中国は上期にとうとう黒字化した。その要因は。

 吉田:08年に進出しましたが、出店数を実質的に引き上げたのは14年度からの5年間です。元々3年目に黒字化する計画を組んでいたので、開業3年以内のモールが多いうちは赤字がたまりやすかったのです。

 今後は黒字化したモールが多くなったので、新店を2、3店出店しても十分そのコストを吸収でき、ずっと黒字が続くというステージに入ります。

 中国では専門店との契約は商慣習で3年間。14年度からモールを増やし始めたので、活性化のタイミングに入りました。そこで日本と同様に活性化や増床を仕掛け始めているところです。

――増床に向けて着工したモールは。

 吉田:武漢1号店の武漢金銀潭(湖北省)です。絶好調ですが3階建てだったのを4層にして、差別化のために4階を全て飲食フロアにします。

――6月に開業した常熟新区(江蘇省)の動向は。

 吉田:好調です。競合が少ないエリアでマーケット規模が小さい街かと思いましたが、シェアがきちんと取れています。最新のデジタル技術を導入した斬新さも受けています。

 新店は他に、山東省2号店の青島西海岸新区を11月28日に開業します。デジタルではモニターに顔を映すだけで開閉する顔認証のロッカーやレジを導入します。常熟新区でうまくいっているデジタルは全部入れます。

国内でもスマートモール化の実証を始めた。写真はLED付きフィルムを利用した透明サイネージ。吹き抜けガラスに貼って透過画像などを映し出す。

 実は日本でも幕張新都心(千葉県)からスマートモール化の実証を始めます。シニアの方がモール内を移動するショッピングモビリティという乗り物も導入。目的はモール内でお客さまのルーチンな行動を軽減することです。

 例えば既に導入しているインフォメーションサイネージ(館内案内板)ではフードコートやトイレの混雑状況が分かるのでその場で「混んでいるから先に買物を済ませよう」とか「3階のトイレが空いている」とか分かります。モール内で起きるルーチンを少しでも減らして、モール本来の買物やイベントを楽しんでもらいたいのです。

 中国の青島西海岸新区でもスマートモール化を進めます。デジタルデバイスは中国の方が進んでいるので、中国で実験をして、支持されるものを日本に持って来て、良ければ国内で水平展開をしていきます。

 すると先ほど言ったスポーツクラブやエンターテインメントなどに加えてデジタルがモールにオンされてくる。そんな形で今までの商業施設とは少し違った切り口を持つモールにしていきたいと思っています。

 海外にはスタートアップ企業が多いので、彼らと海外で試してみて、良かったら日本に持ち込むというのも海外展開しているメリットかもしれません。テナントにしても、海外で付き合いがあり安心だから日本1号店はイオンモールに出店するケースが多い。海外は収益を上げるだけではなく、シナジー(相乗効果)としても結構使えます。

――ベトナム、カンボジア、インドネシアの3カ国で展開するASEAN(東南アジア諸国連合)地域も伸びている。

 吉田:ベトナム5号店となるハドン(ハノイ市)も12月5日に開業します。ハドンは日本に造っても最先端のモールです。デジタル技術だけでなく店ぞろえも、食の空間とか大空間を使ったエンターテインメントも。

 ASEANはマーケットが全然違います。ベトナムの平均年齢は今30歳くらい。彼らは結婚して子供ができて、これからイオンモールが国内で大きく伸びたころのニューファミリー層になってくる。人口ボーナスもこれから出てきます。そこに200店の専門店を構えて、3000台以上の駐車場を擁する最先端のモールを造れば、人は来ます。お客さまも先進国の文化を取り入れて、生活が良くなってきています。

 だから商品だけではなくて、コトの方まで先取りしておかないと。するとイオンモールは新たな体験ができる施設というブランディングができ、良いテナントが入って事業性が上がるというサイクルになってくるのです。