テラスモール松戸にオープンした「N+」のファサード。整然として分かりやすいレイアウトになっている。

 家具・インテリアのニトリが婦人服専門店「N+」(エヌプラス)でアパレル事業に進出した。東京本部内に新会社のNプラスを設立し、2019年年3月20日にららぽーと富士見(埼玉県)に1号店を出店。同29日にイオンレイクタウン(埼玉県)、10月18日にららぽーと立川立飛(東京都)、同25日にテラスモール松戸(千葉県)に新店を構え、4店舗体制になった。

 10月7日には公式通販サイト「N+公式通販サイト」もオープン。ニトリのサイトにもバナーを張り、リンクで飛ぶしつらえになっている。

 しかし「トライアル期間中」であるとしてニトリから積極的なアナウンスはしていない。テラスモール松戸の施設内覧会では、訪れた報道陣の多くがその存在に気付かない状態だった。

 近年「ニトリ」ではコーディネート提案を強化し、ファッション性を向上させ、成長の起爆剤としてきた。さらに「Nクール」や「Nウォーム」など“Nシリーズ”のプライベートブランドを増やしてきた。折しも「ワークマン」が一般消費者向けアパレルを切り出した「ワークマン+(プラス)」が大ヒットし、全社の成長をリードしているところ。「N+」はそれらの動きと呼応する部分も多い。改めて「N+」の内容と開発理由を考えてみた。

最大の特徴はカラーコーディネート提案

ターゲット層の30代~50代の着用ビジュアルを大々的に打ち出すことで「私のための服・店」であることをアピール。

 コンセプトは「私のための大人服」。年齢を重ねながらも若々しさや感性を失わない大人の女性をターゲットに、毎日着たいと思うファッションをカラーコーディネートで提案。「いつまでも自然体でいたい。そんな思いに寄り添う新ブランド」を目指すという。

 一言で言えば「大人の女性がゆったりと着られるきれいめカジュアル」だ。「ユニクロ」よりもリラックスしていて「ドゥクラッセ」よりもリーズナブル。米国アパレルで言えば「Jジル」や「タルボット」のイメージに近い。

 大手アパレルなどの出身者を企画デザインスタッフに採用。現在は取引先からの別注やOEM(生産委託)を活用した商品も多いが、今後はSPA(製造小売業)化を追求する考えだ。

 

 展開アイテムは約350型。1990円のカットソーから7990円のコートまで(いずれも税込み)。商品構成比はトップスが50%、ボトムスが30%で、残りがアウターやワンピース、ネックレスなどの雑貨となっている。

カラーコーディネートを軸に商品を打ち出す。今秋冬の打ち出し色の一つはワインレッドで、ボディのパンツやラック内のトップスにも使用。
ウエストゴムのハイパーストレッチパンツが人気。スリムタイプとゆったりタイプの2種類で各2990円。楽なのにセンタープレスがあるのできっちり感があり、普段着にも通勤にも使えると評価。

 打ち出しの最大ポイントは「カラーコーディネート」だ。ネービー軸、ブラウン&ワインレッド軸、ブラック軸、カーキ&アイボリー軸と色ごとに売場を構成し、当該コーナー内で簡単にスタイリングが組める仕様にしている。働く女性が7割を超える今、ショートタイムショッピングができる分かりやすさとコーディネートを楽しむエンターテインメント性を両立させるためだ。

 商品サイクルは2週間に1回、新商品を投入する。ディストリビューションセンターに保管する在庫品は随時追加投入する一方、新規生産分についてはリピートよりも新商品を中心とし、鮮度を保つ。まずは販売動向を観察・分析し、週単位で修正を行う。目指すは「進化を続ける店」だ。

アクセサリーもオリジナルで企画生産。スマートレジを導入。バージョンアップが簡単なクラウド型で、レジ締め業務を効率化し低コストで運営できる仕組みに。
カラーコーディネート軸の展開を重視。写真はネービーコーナー。コーナー内で簡単にコーディネートが完成する構成になっている。

「顧客の声を聞く」ことにも注力する。特に主要ターゲットの50代女性は、体形の変化や着心地に対する意識が大きく変化するタイミングにあるため、着やすさを追求し、不満や問題を解決する。何よりも本体のニトリと同様の「お、ねだん以上。」のリーズナブルな価格を実現し、価格競争力を発揮する。

ニトリ流の物流と調達力で衣料にも勝機

「アパレルに勝機あり」と考えたのは、第1にアパレル商材はニトリの強みの一つである海外からの商品調達や物流・ロジスティクスなどのバリューチェーンに載せやすく、相乗効果が発揮できるからだろう。インテリアや生活雑貨などに比べてアパレルは単価が高く、商品サイズはコンパクトで、商品管理やピッキング、配送もしやすく、物流効率が高い。家具や雑貨などに比べて荒利益率も高い。

 店舗サイズも家具より小型で坪効率も高いのが定石だ(テラスモール松戸店は売場面積41.9坪で、他店も40坪前後)。商品回転数も「ニトリ」の年間5、6回転よりも高回転が期待できるため、交差比率も高く、儲けやすい。あくまでも「うまくいけば」だが、アパレルは「ニトリ」よりも儲かるビジネスだと目を付けたのだろう。

「ニトリ」自体でもファッショントレンドの把握を強化してきたが、アパレルを扱うことで、共同でR&D(商品の研究開発)ができるなど、ここでも相乗効果が期待できそうだ。

 実は当初はM&A(合併・買収)によるアパレル参入を模索していたが、うまく整わず、子会社を設立して自力で展開することになったという話もある。今後もM&Aを視野に入れながら、商品やオペレーションの習熟を図ることになるのではないか。

売れ筋の一つが2990円のミラノリブニット。スムーズな表面感で、袖の部分がふっくらしたトレンドのシルエットを取り入れたもの。色違いでの購入も多い。
キャメルとブラックの2色で展開するフェイクレザージャケット(5990円)も人気だ。
 
 

※本記事は『販売革新』2019年12月号に掲載されたものです。内容は取材当時のものです。

※『販売革新』はオンラインストアや紀伊国屋書店など大手書店で発売しております。