年始だからこそはっきりと言おう。今、多くの会社が迷走しているのは、選ぶ道がぶれており、打つ手を間違えているからだ。それはビジネスが“システム”に見えていないことに起因する。

 私たちが20年にわたり、これまで全国の数千社の企業、数十万人の方々とここで提唱しているビジネス活動を行ってきて思うことは、ビジネスには“ビジネス”とひとくくりにはできない、さまざまな道筋があることだ。そしてそこでは各々異なるシステムが動いている。

 例えば外からは同じ「スーパーマーケット」に見えるとしても、それが利用客にとにかく「便利さ」を提供しようとしているものか、主に「楽しさ」を提供しようとしているものかによって、実はそこで動くシステムは異なる。しかし人は目に見えないシステムでなく、見える店構えや商品に目を奪われるので、どうしても同じ業種・業態に見えている。そこで解決されない問題が生じてしまうのである。

 ちなみにここで言う「システム」は、狭義のITによるシステムのことでなく、社会が動き、成り立つとき、そこに存在している“成り立ち”そのものを指す。「システム思考」などの言葉で使われるときの「システム」だ。そしてそれは、あなたが意識するしないにかかわらず、あなたのビジネス、仕事現場にも存在しているものだ(私はこの分野の研究で2011年に博士号を授与されている。私の専門の1つだ)。

 そこで年初に問いたい。あなたのビジネスや仕事は、どういう道筋を行こうとしているのか? なぜこれを問うか。それは選ぶ道筋によって、そこにあるべきシステム、やるべきこと、優先順位、やってはならないことなどが異なるからだ。

 例えばあなたが、地元の人々に主に楽しさを提供し、好かれることに重きを置いた、付加価値の高いスーパーマーケットをやっているとする。ならば、セルフレジを入れて効率を上げるのではなく、レジを“人”で価値化するべきだ。なぜならレジは、人による付加価値をビジネスに生む機会だからだ。実際に私の周りにはそこに積極的に投資するスーパーマーケットがあるが、そこではレジでのお客さんとスタッフとの世間話は奨励されている。その店にある時、大手スーパーでのレジ業務経験者が就職した際、無言でてきぱきと効率よく仕事をこなす彼女に店主はこう言った。「うちでは、もっとゆっくり、お客さんとおしゃべりしながらやりましょう」。もちろんその無駄話は効率を落とすが、その分、楽しさは増し、それが業績につながるし、実際に同店ではそうなっている。同店はそういうシステムで動いているのであり、そういうビジネスの道筋を選んでいるのである。

 2020年からの大きなテーマの一つは、「人が人でなければできないことをやり、そこに付加価値を生む」こと。しかしそれがどの程度重要なのかも、どの商いの道筋を選ぶかによる。「便利さ」を主な提供価値とするなら、セルフレジの導入は必要だろうし、いっそのこと顔認証×自動決済の方がより便利だろう。そこには、レジ(決済)に「便利」という価値を生む機会があり、そこに投資をしていくことが必要だ、となる。

 そしてもう一つ大事なことだが、例えば「便利さ」と「楽しさ」で言うならば、その間の中途半端な道はない。今日の提供価値の世界に中途半端な道はなく、より徹底された価値が好まれる。「そこそこ便利」で「やや楽しい」という道はなく、そういう店なら誰からも選ばれない。それもまた決してやってはならないことだ。むろんこの話は店だけのことではなく、全てのビジネス、仕事に通ずることだ。

 2020年は、こういう意味で、やるべきことを徹底してやり、やってはならないことを決してやらない年となる。今年も今日お伝えしたような「科学」のフレームをベースに、私が主宰する企業とビジネスパーソンの会での具体事例や、世の中の動向をひも解いていきたい。

※小阪裕司先生の連載最新回は、毎週金曜日の午前5時に公開します。「これまで公開した記事」と併せてお読みください。