今年はオリンピックイヤーで日本中は盛り上がりをみせるだろうが、ポストオリンピック以降の景気減速(?)、米中の経済・政治摩擦、中東情勢をはじめとする世界情勢の不透明さと、不確定な要素が日本経済の行く手を遮る可能性が懸念される。

 中長期的には人口減少、少子高齢化、地方の衰退、所得格差の増大といった社会構造の変化が確実に進行しているし、直近では人手不足という現実的な問題が深刻化。その一方でIT・AIに代表されるテクノロジーのイノベーションも急速に進んでいる。

 こうした中、日本の流通業界は戦後復興、高度成長、バブル、失われた20年を経て大きなパラダイムシフトの時期を迎え、混沌から抜け出す新時代に向けての変革が求められている。取り巻く環境が大きく変わるのを看過すれば、それは停滞を招き、やがて市場から退場を余儀なくされる。

 しかし、その変化の潮流を理解し、対応できれば新たな展望が開けてくる。今、必要なのは、変化の兆しを読み取りながら、その先を見据えた戦略を練ること。着地点は5年後、10年後ではなくAIが人間の脳を超えるシンギュラリティ(技術的特異点)に到達すると言われている2045年だ。

 2020年からのこの四半世紀は、今までのアンシャンレジーム(旧体制)から、あらゆる場面で全く次元の異なるステージに移行する段階をたどる。とりわけ小売業は、その存在価値が大きく問われ、旧来のままではその役割・機能が不全に陥る可能性がある。

PB、SPAは「第三の流通革命」だった

 そもそも、商業の始まりは農耕社会で栽培技術が進化することで生じる、生産物の余剰を取引する市場が生まれたことによる。そのために貨幣が誕生し、以来、4000年以上、連綿と商いが繰り返されてきた。

 製造、物流、販売というサプライチェーンは古代から存在し、商人は生産者から商品を仕入れて販売し、仕入れ値に経費や儲けを上乗せし売り値を決め、その差額を利益としてきた。自ら生産することなく、(つまり製品ではなく)商品を売ることで生業を成り立たせてきたが、近世における商店、今日の業態と呼ばれる百貨店、スーパーマーケット、専門店、ドラッグストア、ホームセンター、コンビニなど全てこの範疇に収まってきた(豆腐、パン、和洋菓子など自ら製造して販売する店舗は例外)。

 それをPB(自主企画商品)とSPA(製造小売り)が変えた。サプライチェーンの川下にある小売りが川上の製造までさかのぼることで、その構図を打ち破ったわけだ。商品の企画から製造、物流、販売を小売りが主導する仕組みが生まれたことで、収益性も劇的に向上。仕入れて販売する小売業が製造して販売するようになることで「第三の流通革命」が起こったと言っても過言ではない。

 これにより、仕入れ小売りの役割・機能がどこまで保全されるかが問われるようになり、その存在は、既にECなどによるメーカー直販や生産者の直売にも脅かされ、崩れてきている。イオンやニトリなど小売りも自ら工場や農場などの生産拠点を持ち、さらなる情報・物流のイノベーションを進め、メーカーや生産者が作り卸や市場が仲介して小売りが販売するという役割・機能分担が意味をなさなくなろうとしている。

 こうした状況がさらに進めば、コンビニをはじめ、店舗という消費者接点を多数持つことで優位性を発揮してきた効力が失われることになり、現在、盛んに喧伝されている業種・業態間の競争や、業界再編といった枠組みを超えた発想や取り組みも無になることも否定できない。