19年はインバウンドも頭を打って百貨店売上高は11月までの累計で98.6と18年通期の98.9を下回り、アパレルで一人勝ちして来たユニクロも9〜11月売上げが95.9(既存店+EC)と失速するなど、消費税増税も災いして消費は一段と冷え込んでいる。その中で目を引くのがセール時期の一段の早期化と単価の低下で、デフレが再び加速している。20年はオリンピックの狂騒の陰で日本の貧困化とデフレが加速するデッドエンドの年となるのではないか。

EC主導で早期化するセール

 アパレル業界では12年の夏セールから三越・伊勢丹とルミネが音頭を取ったセール後倒しが需給の実態にそぐわず17年の冬セールから元に戻り、夏セールも三越・伊勢丹は18年から業界にそろえて6月末に戻している。ECのセールやプレセールはさらに前のめりで、ルミネはオンラインの「アイルミネ」が冬夏とも本セール当日の0時から11時間フライングするだけだが、プレセールは12月6日から始めていたし、百貨店アパレル各社の公式オンラインサイトも、本セールは百貨店から1週間ほどフライングするだけだが(それも2〜3年前までは考えられなかったことだ)、プレセールは11月末から始めていた。

 加えて、米国の歳末商戦を皮切る「ブラックフライデー」(11月第4木曜の感謝祭休日の翌日にスタートするセール)をイオンなどが持ち込んで、米国より1週近く早い勤労感謝の日(11月23日)からプレセールがスタートするようになり、「サイバーマンデー」(感謝祭休暇明けの月曜にオフィスのパソコンから注文が集中するダイヤルアップ時代の旧習が起源)もアマゾンが仕掛けて広がり、セール時期はますます前倒される傾向にある。

 半年前後も先行する企画・生産と過剰供給で需給ギャップが避けられないアパレルでは、正価消化率が半分にも達しないままセールに突入するブランドやストアが多く、セールの後送りなどもとより非現実的だ。クーポン発行で消化不振品をさばくアウトレットと化したECモールの値崩れが店頭に波及するのも必然で、プレセールの早期化を招く要因ともなっている。

 百貨店や商業施設のセールはプレセール段階で2〜3割引、本セールで3〜4割引、最終処分段階でようやく5割引で、もとより割高だった価格からその程度の値引きではいまひとつお買い得感を欠く。その要因は、百貨店では35年間で原価率が半減して(43%→20%)お値打ち感が損なわれたことももちろんだが、すっかりメジャー化した中古衣料店やリセールアプリ、ようやく目立ち始めたオフプライスストアの売価を知ってしまえば、多少の割引では食指が動かなくなる。

価格の常識を変えるオフプライスストア

 都心商業施設の冬セールから郊外パワーセンターのオフプライスストアに目を移せば、ブランド商品のセール価格が法外に思えるほど桁違いの低価格衣料品が並ぶ。

 駅ビルブランドは百貨店NBの5〜6掛け、郊外SCのお値頃SPAなら同3〜4掛けといった価格帯だが、しまむらに行けばもうワンライン低く、そのオフプライス版ともなれば百貨店NBの十分の一を切る。この冬の売れ筋となったオーバーサイズのウール風コート(チェスターあるいはノーカラーV)を例にとれば、正価は百貨店NBで3万9000円〜4万9000円、駅ビルブランドで1万9000円〜2万9000円、駅ビルやSCのお値頃SPAで7900円〜1万2800円、しまむらで4900円〜6900円ぐらいだが、しまむらのセールや同クラス品のオフプライスストアなら1480円〜2480円で買える。

 もちろん品質には差があり、上はカシミヤ5%/ウール70%/ナイロン25%(ウール100%では重くなるしイージーケアにできない)から下はウール5%/アクリル95%まで、風合いや付属、縫製や仕上げもそれ相応に差があるが、遠目素人目には大差ない。それで正価で上下10倍、セールやオフプライスまで入れると30倍もの価格差がある。ラグジュアリーブランドまで加えれば、上下200倍、300倍と価格差が広がる。ブランドや品質にこだわらなければ、本当に桁違いの低価格で似たような商品を手に入れられるのが現実なのだ。

 しまむらクラス商品のオフプライスストアといえば東京圏西部の16号線以遠郊外に37店舗を展開して70億円を売り上げる「タカハシ」が筆頭だが、ウールコートや中綿コートで980円〜、セーターで390円〜、ジャージスーツで890円〜、ソックスなら98円から手に入る。しまむらのセール期を日常化したような200坪ほどのスーパー型レイアウトの店舗には客足が絶えず、レジ待ちが常態化している。

 来店客には外国人も目立つが、大多数は家族連れや主婦など日本人だ。「タカハシ」を見ているとしまむらが裾値を切り捨てようとしているのは自殺行為に思えるし、日本は貧乏になったのだとひしひしと実感される。