「知識を増やす=お金を儲ける」ではない

 これからは売上げが下がり、少ない人手で利益を確保していかなくてはならないので、これまでの分かったつもり、理解したつもりといった曖昧なやり方では、全く歯が立たなくなります。

「ウチは、海外視察や話題の店は見ているし、〇〇協会や○○サプライヤーの勉強会には出ている」という声も聞こえてきますが、語弊を恐れず申し上げれば、それは単に知識を増やしているだけで、それではお金を儲ける行動にはなっていかないということです。

 どの業界でもそうですが、儲けをしっかり出している企業の共通点は、得た知識を、儲かるための筋道を立てることに使っていることです。

 セミナーの席上で「社長主催による店舗の人時生産性についての会議は何時間やっておられますか?」とお聞きすると、皆さん「うーん」と言葉に詰まります。 

 人時生産性の改善に取り組まれている企業では、社長が毎月課題を設定し、週次の業務改革会議で進捗を確認していきます。1カ月は4、5週ですから、1週ごとに仮説を立てて、実態を把握し、新しい取り組みをしてみると、4週目には一つの結果が出る。こうしたスピード感で動いていきます。冒頭で登場してもらった企業では、目標実現に向け、社長主催のプロジェクトを中心に全てが動いています。

 1カ月かかっても結果が出ないという企業は、こうした公式会議自体が社長のスケジュール表に記載されていないことも多いのです。冒頭の企業では社長主催の人時生産性会議の中で生産性にまつわるさまざまなテーマが設定されていきます。先般の会議では「誰でも同じ作業ができるようにする」という取り組みについて議論が交わされました。

 実際に、残業と無駄な作業時間の多い売場を集中的に実態調査したところ、1時間に何十回も冷蔵庫に出入りしたり、主任が全ての業務を抱え込んでいて時間内に作業が終わらないといったことが繰り返されており、多くの問題が浮き彫りになってきました。

 この背景には、本部からの指示書が分かりづらいといった問題や、マニュアル不在、教育体制の不備といった課題が浮かび上がってきました。そこで、今後2週間でマニュアルや教育プログラムを作成し、実際に運用してみて、その結果を報告することが決まりました。

 これまでは「そんなのどこかできる店にやらせて、それを横展開すればいい」とか「やり方がきっちりしてなくても、ある程度業務が分かる人を採用すればそれなりにできる」といった意見が多く、改善の取り組みがなかなか進まなかったのですが、この会議をきっかけに一気に動くようになりました。

 環境を整備して人時生産性が変わってきたら、その内容を10店で展開すれば、一気に10倍の利益が増えることになります。前出の経営者が語っていた「人時生産性の取り組みを進めていく中で、店長含め、店舗のみんなと共有して進めることの大切さを改めて痛感しています」という言葉は、経営としての課題設定と改革プロセスが明確になったからということが分かれば、納得がいきます。

 具体的な事例はセミナーでお話していますが、この連載でも「なぜ人時生産性が重要なのか?」「チェーン店経営者の願望である利益更新をし続ける個店を育成していくには今、何をしていけばいいのか?」を解説していきます。

 さあ、貴社では、来期に向け、利益を何倍にも増やす準備はできていますか?