時代の怪獣映画クリエイターの「種」をまく

 第2回目を終えた時点で決定しているのは「来年に第3回目をやる」ということのみで、「現在は疲労困ぱい状態で何も考えられない」と語る永田さん。

 シミッタレ気質な私は「まだ来年があるのにキンゴジ、ガッパ、ギャンゴと熱海ゆかりの怪獣を全放出しちゃったりして大丈夫なのか……!?」と他人事ながら心配してしまったのですが、しかし永田さんはこうおっしゃいました。

「後のことを考えて出し惜しみして『しょぼいイベント』になってしまう方が、はるかに良くない。『同じ作品を2年連続で流したらいけない』なんてルールは無いんだから、なんだったらキンゴジをもう一度上映したっていい」

 これは全く目からウロコで、映画のコンテンツパワーを信頼している永田さんは「真の名作とは何度観ても観客に感動を与えられるものである」と考えているわけですね、失礼しました。

「先々を不安がってる暇があったら今この瞬間に完全燃焼することを考えよ!」と私に教えてくれた永田さんでしたが、しかし「未来に向けての種」はちゃんとまいておられます。

 2年目からは、近年のウルトラマンシリーズで活躍されている田口清隆監督の主催による「新進怪獣映画作家の作品上映会(全国自主怪獣映画選手権【熱海傑作選】)」をプログラムに盛り込んだり、子供たちを対象とした「新怪獣お絵かきコンクール」を開催したりと「次代の怪獣映画クリエイター育成」にも余念がないのです。

「将来的には、海外からも怪獣映画が応募されてくるような『国際イベント』にしたい」と語る永田さんは、「この熱海を怪獣映画界における『カンヌ』にしたい」と本気で考えておられます。

 以前から「街の様子がカンヌに似ている」と一部で言われ続けてきた熱海ですが、本当にそうなったら楽しいだろうと私は心から思いますね。

日本のカンヌが世界的な「怪獣の聖地」になる日は近い!?

「これはあくまで私的見解なんですが……」と前置きした上で、「イベントタイトルは『熱海怪獣映画祭』ですが、熱海市内だけで完結しなくたっていいと私は思っているんです」と語った永田さん。

「核となるのが熱海市でさえあれば、例えば沼津市や伊東市に第2、第3の上映会場を設けたって一向に構わない。近隣市町と連携することで今よりもイベントが活性化し、人材面や費用面が充実させられるんだったら、むしろ望むところです」

 私は市町単位ではなく「静岡東部エリア」というくくりで地域活性化活動をしている人間なので、永田さんのこの「俯瞰の視点からの将来構想」には大いに頷かされました。

 現時点で熱海に劇場がない状況を憂う永田さんは、自治体への要望として「500人規模のイベントができる施設を作ってほしい」と語ります。

「一定以上の人数が収容できるホールなどが新たに生まれれば『学会』などのニーズにも対応できるようになり、街の活性化にもつながるはずです」

 永田さんによれば、実は熱海は「粋人たちの隠れ家的遊び場」として活用されており、例えば観光ホテルを使って「600人規模のボードゲームファン合宿」が開かれたりもしているんだとか。

「社員旅行」というのが当たり前だった頃には団体客だけで十分潤っていた熱海でしたが、その流れが途絶えたことで冬の時代に突入しました。

 往時の再来はもはや望むべくもありませんが、しかし怪獣映画祭のような「趣味イベント集客」ならば「時代にそぐった動員方法」として大いに勝機はあると思います。

 もしも熱海が、永田さんの望むような「怪獣映画界のカンヌ」になれれば、全く新しい流れが生まれるでしょう。

 こうしたヴィジョンを地元の皆さんが共有し、映画祭と連動する個人や団体が増えていけば、「熱海を怪獣の聖地に」という永田さんたちのスローガンが血と肉を持って現実化する日も遠い話ではないだろう……そんなことを思わされた今回の取材なのでした。