「熱海怪獣映画祭」第2回目のポスターと永田雅之さん

キッチュ同士で相性の良い(?)熱海と怪獣

 怪獣、というワードから何を連想するかは、たぶん世代によって大きく分かれるでしょう。

「シン・ゴジラ」で初めて怪獣というものに触れた、なんて若年層にとっては「クールジャパンを構成するコンテンツの一つ」かもしれません。

 他方、高度成長期の「怪獣ブーム期」を経てきた世代(50~60代)にとってのそれは「キッチュ」である気がするのです。

 キッチュとは、元々は「俗悪、インチキ、通俗的」といった否定的な意味合いのドイツ語でしたが、昨今では「チャーミングな悪趣味」のような肯定的ワードに転じています。

 怪獣ブーム世代の多くが所持していた、毒々しいカラーリングのソフトビニール製怪獣人形などは、今や「キッチュアート」という文脈で語られたりもしているのです。

「キッチュなテイストが近年、再評価されている」といえば、静岡県最東端の温泉地「熱海」もそのクチでしょう。

 高度成長期には「年間530万人もいた」という宿泊客が2011年までに半分以下にまで落ち込んだものの、内外の有志らの尽力によって2015年には「308万人」にまで盛り返し、V字回復は現在も継続中だという熱海。

 長く借り手のつかなかった老朽テナントを若いセンスでリノベーションした「ゲストハウス」「カフェ」「飲食店」などが次々と生まれ、そこに引かれた若い観光客が各地から集まっています。

 とりわけ復興ぶりの顕著なのが海岸に近い「熱海銀座商店街」で、メディア露出度が高いプリン専門店には平日の午前中にもかかわらず行列ができていました。

全国放送でもしばしば取り上げられるこちらには常に人混みが

「奇跡のV字回復を果たした観光地」と聞くと「洗練されたハイセンスな街」を連想されるかもしれませんが、熱海に関していうならば「良い意味での洗練されなさ」、つまり「キッチュさ」が得難い魅力となっているのです。

 そんな「キッチュ観光地」で「昭和キッチュの象徴の一つ」である「怪獣」をフィーチャーした映画祭が行われていることを、皆さんはご存じでしょうか?

「熱海を怪獣の聖地に」をスローガンに掲げるそのイベントの名は「熱海怪獣映画祭」。

迫力満点の咆哮画は「怪獣絵師」こと、開田裕治氏が担当

 私は今回、同映画祭の代表理事を務める永田雅之さん(46)にお話を伺いました。

スポークスマンとして終始ロジカルな語り口の永田雅之さん

熱海の「怪獣聖地化」拠点は風情あるスナック

 永田さんから指定された取材場所は、前述の熱海銀座商店街から路地を1本入ったところにある「スナックあた美」というお店。

永田さんは九州生まれで、元の店名は奇しくも「博多」だったとか

「熱海のスナック」という響きはもはやそれだけでキッチュ感満点ですが、永田さんはこちらのオーナー兼マスターを務めているのだそうです。

 テナントの家賃自体が破格な上に「居抜き物件をそのまま使っている」ので、開店資金は極めてリーズナブルに収まったといいます。

 家賃を払って営業しているこちらは当然ながら「商業活動の場」ではありますが、それ以上に「仲間のたまり場」という色合いが濃く、だから「不定期休」ならぬ「不定期営業」というユルいスタイルをとっているのだとか。

 また、「1時間2000円」でスペース貸しもしていて、濃密なミーティングなどに使われたりしているそうなので、まさに店というより「大人の秘密基地」と呼ぶのがピッタリです。

少人数で濃い相談をするのにはもってこいの規模と雰囲気です

 秘密基地は怪獣モノにはつきものですからね、ワクワクしないほうが不自然というものでしょう。

 熱海というのは「四季を通じて花火大会が開かれている」稀有な観光地なのですが(2020年は15回開催予定!)、とりあえず「花火のある日は開けている」そうなので、確実に来店なさりたい方はそのタイミングでどうぞ……って、いやいやスナック紹介の回ではありませんでした。

 今回のテーマはあくまでも「スナックを本部にして開催されている映画祭」なので、このあたりで本題に戻りましょう。