ひょんなことから福岡の明太子メーカー「ふくや」社長、川原武浩氏にインタビューさせていただいた。お話を伺ったのは博多の本社(本店)で、1階にある店舗にはおなじみパッケージの明太子はもちろん、明太子を使ったさまざまな商品が並んでいて多様な商品展開に驚いた。

「昔は600グラム、1200グラム入りといった明太子商品が普通に動いていたんですが、今は贈答の季節でも300グラム入りぐらいが主流です。3世帯同居で明太子消費も多かったが、今どきの1人、2人世帯ではそうもいかない。どんどん少容量化となると製造業としてはつらいですね。手間はかかるし原価は上がる。その中で、単価はそうそう上げられない。そこで、明太子をチューブに入れたり、缶詰にしたり、冷蔵・冷凍商品から常温品にして日常使いできるよう変えています。さらに今後は明太子自体というより、明太子味といった調味料のようなスタンスに変わってくるかもしれません」

購入商品の小容量化が進む。贈答の季節でも今は300グラム入りが主流だ。
チューブ入り商品には卵だけを入れる。この際、あまる皮の部分は佃煮に商品化。

 少子高齢化で人口減少の日本全体が抱える問題は当然ながら明太子業界にも影響を及ぼしていて、対応を迫られている。「売り方も考えます。映画などとコラボしたパッケージにした商品で、新しい客層の開拓も必要です」と、最近では映画「ルパン三世The First」の公開に合せたパッケージも登場している。しかし、さらなる問題として水産資源の枯渇があるのも悩ましいところ。

「原料であるスケソウダラが獲れなくなっている、ということもあります。今、明太子メーカーがどこも大きな声で『海外進出をやるぞ!』と言えないのには、そうした事情があります。元々回遊魚なので養殖がしづらく、しかも明太子が採れる最低限の大きさに成長するまで3年はかかるんです。3年育てて採れる明太子はこれだけ、となるとコスト的にも難しいんです」

 しかも、小売業のバイヤーが強くて、昔からある明太子が1腹程度入った「1パック198円」という安売り価格が大きな縛りとして今もある。

「パック物に使う明太子の原価は上がり続けていて、利益が出ないんです。それでも赤字で処分品として出したり、お付き合いで出したりと不均衡な状態が続いています。うちはパックものはやっていないので影響はまだありませんが、このままだとメーカーさんがどんどん潰れて明太子市場が狭まります。こうしたことは明太子だけではないですね。納豆が3パックで100円もしないとか、どう見ても不均衡な状態です。消費者が一歩を踏み出すことが大事で、国内のフェアトレードが必要かもしれません」

 とはいえ、今すぐ消費者が高い商品を買うのは難しい。そこで、どうしても迫られる、さらなるコスト削減と合理化。「ふくや」では省人化も一つの手立てとしている。

「省人化は製造部門で取り入れています。明太子を計量して容器へ移すことを機械化しました。計量はよくあるんですが、容器に移す部分は明太子メーカーでは初めて導入したんです。実はスピードだけとれば、ベテランのパートさんの方がずっと速いんです。ただ、その技能を取得するまでに時間がかかるので、機械化しました。省人化は店頭では難しいですね。うちは高齢のお客さまが多く、お客さまの負担が多くなりますから」

本社が入るビル1階にある中洲本店。店内にはふくやの歴史を示す写真などが掲出されている。