第2回は、「プライベートブランド(PB)」です。皆さんは最近、セブン-イレブンで「セブンプレミアム」「セブンゴールド」の食パンや牛乳、イオンで「トップバリュ」のドレッシングやカップ麺等を買った経験はありませんか?

 PBの定義は、各流通論者がさまざまな見解を述べていますが、本稿では、「PBは、小売業者(もしくは卸売業者)が商品を企画・開発し、その仕様書に基づき、メーカーに製造委託し、自社及びグループ各社の店舗のみで、自社ブランドを付し、独占的に販売、品質保証、在庫・物流費リスク等を負う商品である(中見 2017)。」と定義付けます。

 日本におけるPBの歴史は意外と古く、ダイエーは1961年にPB名「ダイエー」としてインスタントコーヒーを販売し始めました。1970年には、13型カラーテレビの「BUBU」を当時としては破格の5万円で発売しています。その後も、1980年代には、為替影響を背景に、食料品、衣料品、日用雑貨を軸に、低価格PB「セービング」を発売し、好評を博しました。ダイエーは、日本のPB史に大きな影響を与えた存在と言えます。

 現在、なぜPBが再び小売業者にとっても、消費者にとっても注目され始めたのか、皆さん考えたことはありますか?

 その背景には、ナショナルブランド(NB)のコモディティ化に伴う低価格傾向の増長や、アマゾンや楽天に代表されるネット小売業の伸張に伴うリアル店舗小売業のストア・ロイヤリティ強化の狙いがあります。

 従来、PBは消費者にとって、「低価格商品」の代名詞、小売業者にとっては、「ロスリーダー商品」の代名詞でした。しかし、上記のセブンゴールドの「金の食パン」等のプレミアムPBがヒットした結果、消費者にとって、「PB≠安物」のイメージは徐々に崩れつつあります。現在、消費者の頭の中には、大きく2つのPBに対する価値潮流、「低価格」と「高品質」があるように思えます。

小売業者は「3層構造+α型」でPB導入を考える

 また、PBを理解する上で、プログラム構造もよく理解しなければなりません。日本のPB研究の第一人者である、矢作(2013)によれば、小売業者がPB導入を検討する際、欧米に倣い、「3層構造(プレミアム、スタンダード、エコノミー)+α型」をベースに考えるそうです(図表参照)。中でも、ボリュームゾーンである「スタンダード」の成否がPB戦略上、とても重要となります。その際、どのカテゴリーが、PBに向いているのかをよく見極めて、商品化しなければなりません。

 

 アメリカのPBに関する研究者(Hoch and Banerji, 1993、Ailawadi and Harlam, 2004)によれば、以下の4点がPB商品化検討の際、重要になるそうです。①有力なNBが少なく、市場規模の大きなカテゴリーを狙う、②NB・PB間の価格差が一定程度存在する、③品質の高さや商品コンセプトに一貫性がある、④小売側の荒利益率が高い。もう一つ、PB検討の際、忘れてはならない視点があります。それは、「業態・フォーマットごとのNBとPBの品揃えに関するバランス」です。例えば、コンビニエンスストア(コンビニ)の場合、消費者は、コンビニに対し、利便性を求めているため、他業態に比べ、価格に対し、あまり過敏に反応しない傾向があります。よって、コンビニでPBを導入する際、他の業態(例:スーパーマーケットや総合スーパー)に比べ、プレミアムPBの比率が高まる傾向は理に適っています。その象徴たるが、セブンゴールドの金の食パンなのです。

 最後に、矢作(2014)が、今後、小売業者のみならず、メーカーも含め、PB戦略を検討する際、重要になると主張している概念をご紹介しましょう。

 それは、「デュアル・ブランド戦略」という新しい概念です。PBは、小売業者だけの商品、マーケティング戦略ではありません。今日、メーカー自体も、NBだけの商品ラインアップでは、他社との厳しい競争の中、有力小売店舗のいい位置の棚を死守、拡張するのは難しくなりつつあります。

 よって、各メーカーは、小売業者のバイヤーと品揃えに関する論議をする際、自社が属するカテゴリーにおいて、顧客ターゲットごとにPB化するか、NB化するか、バランスよく総合的に検討しなければいけません。

 一方、小売業者においても、自社のお客の商圏特性を踏まえ、カテゴリーごとのNBとPBのバランスを保もつ必要があります。そうしないと、自社にとって利益率が高いPBを優先したがために、PBとNBのバランスが崩れ、売場が単調化し、結果、お客にとっての買物の楽しさを失い、最終的には、ストア・ロイヤリティの減退を招く危険性があることを肝に銘じるべきです。

 故に、PB戦略は、今後の小売業、卸売業、メーカーにとって、持続的成長や、イノベーションを起こしていく上で、非常に重要な要因となり得るのです。

(学習院大学 経済経営研究所 客員所員 中見真也)