大型複合施設「誠品生活信義店」での挑戦

 誠品のブランド力を海外にも轟かせるきっかけとなったのが「誠品生活信義店」だ。同店は世界的にも稀な商業激戦区に立地する。1.5キロ平方メートルのエリア内に、新光三越をはじめ14軒の商業施設や百貨店が密集。誠品は地域ナンバーワンの集客力を誇る。店舗は8フロアで売場面積1万3600坪の超大型店。商業施設運営では後発であり、しかも大型店は初挑戦である。その誠品が競合他社を抑えて大成功を収めた背景には、同社ならではの綿密なマーケティング戦略があった。

「この業界はどこも同じような顔の店舗ばかりで大差がない。そんな中で誠品は読書をコアにするプラットフォームであり、コストがかかったとしても、書店には必ず人が集まると信じていた。そこで、店舗の4分の1を書店とし、他のゾーンにはこれまで取り組んできた文化創造産業での経験を生かした。例えば、ファッションブランドのテナント選びでは、他の施設にも出店するブランドではなく、背景にストーリーがあるブランドを優先して導入した。また、店舗空間を詰め込み過ぎないよう、収益に直結しないホールやレクチャールームを作り、余白の空間に投資した。そうして誕生した誠品初の大型店は非常にユニークな施設となり、周囲の小売店とも大きく異なっていた」

 

 例えば、日本橋にも導入した「エキスポ」エリアは、デザイングッズや手作り感のある商品が集結した売場。ブランドを立ち上げたばかりの若手クリエーターやデザイナーを育成し、ブランド構築や店舗出店をサポートするのが狙いだ。「ここを担当するバイヤーの仕事は商品開発に近いかもしれない。エキスポの中では、ものづくりをする人が直接、消費者と交流でき、その意見を製品に反映させることができる。担当バイヤーの能力が一つの店の生命線に関わるので、バイヤーはとても重要だと考えている」

 さらに、誠品ではプロジェクトごとのトレーニングにも力を入れている。一つのプロジェクトチームは、財務や法務、業務部門などの従業員で構成。チームメンバーとしてプロジェクトに携わることで他部門の仕事に触れることができる。「従業員が働きやすい環境を会社がいかに作り出せるのかは重要」と、李社長は人材育成についての考えも話した。