1960年生まれ。台湾東呉大学中文系卒業。1998年11月に誠品に入社。物流センター計画の立ち上げ・運営責任者、誠品書店サプライチェーンマネージャー、SAP Is-Retail ERPプロジェクトマネージャー、B2Bサプライチェーンプラットフォームプロジェクトマネージャーなどを歴任。2002年より、中国江西省新華書店集団、北京新華発行集団、雲南省新華書店集団、広東省新華書店集団などと協力し、物流センタープラントメンテナンス計画および情報システム・自動化設備導入プロジェクトを完遂。2010年9月より、誠品股份有限公司社長、誠品開発物流股份有限公司社長を務める。組織構造の改革および既存リソースの統合を行い、企業グループの運営価値を再構築し、イノベーションおよび多面性のある経営モデルの推進により、営業チームを引き連れ運営目標達成を目指す。〔撮影〕室川イサオ

2019年の小売業界で最も話題をさらった小売店の一つが、台湾発ブランド「誠品」の日本1号店「誠品生活 日本橋」だ。927日、東京日本橋に開業した商業施設「コレ室町テラス」の2階にオープン。台湾好きはもちろん、台湾になじみがなかった人たちも訪れ、連日大勢の客でにぎわっている。“世界最もクールな百貨店14最も優れた書店に選れ、海外からの評価も高い「誠品」が、国境を超えてなぜ多くの支持を得られるのかその強さの秘密と日本進出で重視した点、今後のビジョンについて、誠品股份有限公司社長の李介修社長に聞いた。

回廊構造で江戸の町を表現した「誠品生活 日本橋」

 誠品は1989年に創業。創業者の故・呉清友氏が台北市内にオープンした書店「誠品書店(誠品敦南店)」が始まりだ。書店といっても、その店にはギャラリーやカフェが併設され、欧米の工芸品ブランドや文房具、デザイン小物も取り扱っていた。本を販売するだけの書店ではなく、“本と暮らしの間”という空間にこだわった店だが、その原型は既に存在していたという。お客がフローリングの床に座り込み、リラックスした雰囲気で読書する姿も、誠品では創業当時からのおなじみの光景。以来、誠品は「Books,and Everything in Between. (本とくらしの間に)」をコンセプトに読書と文化の交流を育む場づくりに注力し、アジア随一の企業ブランドへと発展してきた。

 呉前会長が創立当初から重視してきたのが“場所の精神性“だ。場所は“人、空間、イベント“の3つの要素から構築され、それが人間と社会の関係性を作り、ひいては文化の創造につながるという。「例えば、日本橋の場合は、伝統がありながら非常に華やかで、過去と現在が溶け合い、混じり合う場所。また、誠品は読書をコアにするブランドなので、日本橋店はアジア文化の発信地であり、台湾と日本の文化の架け橋と位置付けた。その上で空間づくりにこだわり、イベントにも力を入れている」と李社長は話す。

 実際に店舗を訪れると、そこには台湾人建築家ならではの感性で再現された江戸の町が広がっていた。「古今交差」「新旧融合」をコンセプトに、伝統的な日本建築に現代の手法を取り入れ、誠品らしい美意識を表現したのは、台湾を代表する建築家の姚仁喜(クリス・ヤオ)氏。誠品敦南店と中国1号店の誠品生活蘇州も手掛けた人物だ。

 誠品生活日本橋は、真ん中にエスカレーターを配した正方形ワンフロアの店舗で店舗面積は約870坪。ヤオ氏はこの限られたスペースに、フレームと布の間仕切りを用いて独特の空間を創り出した。アーチ状のフレームは等間隔に設置され、軒先にかけられた藍染の暖簾が統一感を醸し出している。「日本橋は江戸文化と密接に関わっている。店は建物の2階にあるが、回廊のような構造にすることで、まるで江戸の町を歩いている感覚を味わえる」(李社長)。

 他にも「フォーラム」「クッキングスタジオ」などで定期開催するイベントや、店舗の従業員によるおもてなしの接客、テーマ性を持った選書なども日本進出の際に注力した点という。

 フロアは「書籍」「文具」「セレクト物販・ワークショップ」「レストラン・食物販」の 4ゾーンで構成。「くらしと読書のカルチャー・ワンダーランド」をコンセプトに、50を超える台湾ブランドや日本のものづくりブランドが集結した店内は、人と文化の混じり合いから生まれるエネルギーと活気に満ちていた。