今、ネットと実店舗の関係について、同じ錯覚がまかり通っている。アマゾン最大の特徴は、これまでの小売・流通業チェーンとその「コスト構造」が根本的に違うことにある。それは、店舗というコストを初めから必要としない。店舗をコストダウンして、そうなったのではなく、店舗無用によって、そうなったのだ。そして店舗がなければ、店舗在庫も必要なく、店舗在庫管理も、管理する人間というコストも、コストダウンされるのではなく、初めから不要になったにすぎない。

 アマゾンがウォルマートと根本的に異なるのは、この「コスト構造」であり、それはかつてコストコが出現した時、われわれが知ったコスト構造転換とよく似た例にすぎない。さらに重要なのは、アマゾンが「チェーン組織」が最も重視した「組織」もまた無用にしたことである。

 チェーン組織が必要としたのは、マーチャンダイザーとストア・マネジャーである。だがネットあるいはアマゾンは、可能な限りの商品を扱う以上、そもそもマーチャンダイザーを必要としない。店舗が存在しない以上、ストア・マネジャーもまた必要としない。ネットは「コスト削減」でもなければ、「組織改革」でもない。

 だからアマゾンあるいはネットと、ウォルマートあるいはチェーンの「売上げ」を比較して云々すること自体、初めからナンセンスなのである。これでも分からない向きに初歩的解説をすると、アマゾンの「売上げ」には「店舗で売ることによるあらゆるコスト」が存在しない。だがウォルマートの「売上げ」には、逆に「店舗で売ることによるあらゆるコスト」が含まれるのである。比較はそのことを知って行わなければならない。

 店舗ピックアップという小技は、以上のネットとウォルマートの根本的な「売上げ」あるいは「コスト」の構造的な違いを踏まえた上で捉えなければならない。それをどう評価するかは、立場の違いによる。だがどんな立場であれ、以上の構造的な違いは大前提として踏まえなければならない。