コストコについて、かつてある業界の権威がこう指摘した。コストコは安い、なぜ安いか。1つには、店舗の立地がショッピングセンターなどではなく、周囲に倉庫の並ぶへんぴな場所である。2つに、その店舗は天井板がなく骨組みのままであり、壁は壁板がなく建材むき出しのままであり、床面もコンクリートの打ちっぱなしである。3つに、商品は「陳列器具」ではなく「在庫置き場器具」に乗せられたままである。4つに、商品は1個ずつではなく束売りである。5つに、店舗従業員の親切な説明はなく、完全なセルフである。だから「コストコは安い」と。

 そのコストコをマネたのがウォルマートの始めたサムズであり、そのコストコとサムズをマネたのがダイエーがかつてやった「コウズ」だった。神戸ポートアイランドのコウズ第1号店の開店日に招待された私に、中内さんはこう述べた。「島田先生、招待した業界ジャーナリズムもコンサルタントも、みんな『安い』というんですよ」。

 私は答えた。「コウズはちっとも安くないですね、なぜならコウズは小売店ではなく、卸売店だから。その値段は、小売値ではなく、卸値だから」。自慢ではないが中内さんは、初めて理解するものがいた、とうなずいてくれた。

 コストコは、コスト削減のあの手この手をやって「安かった」のではない。単にこれまで小売店を対象にやっていた卸業を、一般消費者対象に始めただけである。だから立地は小売店の入るショッピングセンターではなく倉庫街であり、そこにあったのはそもそも「店舗」ではなく「倉庫」だった。だから天井も床面も壁も陳列器具も、小売店のソレではなく卸業のソレだった。

 業界の権威は、それを勘違いしたにすぎない。ではなぜ勘違いしたか。「コスト構造」という概念がなかったからである。だからそれを「コスト削減」として見てしまったのだ。