前回の記事で、個人カメラマンに撮影を依頼する出張撮影が増えていると書きました。その中で読者の方から、感情に関連した感想を多く頂いていることに気付きました。

「(出張撮影では)日常の自然な姿を残せるのがいい」「ブログの発信内容からカメラマンの人柄が伝わってくる」など、出張撮影の体験有無を問わず、イメージを語るコメントが多く見られたのです。

 出張撮影で販売しているのは撮影したデータですが、比較検討の段階で選ばれる理由は別のものだと私は思っています。出張撮影は、自分たちのためだけに撮影してくれる特別感、素人では分からないポージングなどのアドバイス、カメラマンとの相性や写真の雰囲気など、プラスアルファの理由が決め手となるのだと感じます。

モノではなく、決め手は形容詞

 

 私たちは何らかの商品やサービスを購入する際、キレイ、かわいい、安い、早いなど、無意識に買う理由付けを行っています。

 理由の優先順位は人それぞれでしょうが、増税後の価格に対して、よりシビアになっているのは私だけではないでしょう。私でいえば、同じものを買うにもポイント2倍デーなどお得な日に買えないか、似たようなものが家になかったか、本当に自分にとって必要な消費かを今まで以上に確認するようになりました。

 一部の店ではポイントによるキャッシュバックがあるとはいえ、1万円のものを買えば1000円の消費税が付くと考えると、やはりぜいたく品や衝動買いは控えるようになりました。

 2019年12月6日に公表された総務省統計局の家計調査報告でも、二人以上の世帯での消費支出を前年同月比で見ると、19年10月では実質4.0%の減少という数字が出ています。

 それだけ消費に関してシビアな指標を持つ人が増えてきたともいえますし、ポジティブな見方をすれば無駄な浪費ではなく、意味ある消費や自分にとって役立つ投資的消費をしたいと考える人が増えてきているのだと思います。

トイレットペーパーに求めているもの

 

 消費者が購入を決めるプラスアルファの理由付けといっても、難しく考える必要はありません。例えば私は現在、いつも決まったメーカーのトイレットペーパーを購入しています。

 一人暮らしの時は支出を少なくするため、常に最安値のトイレットペーパーを購入していました。ところが結婚して二人暮らしになってからは、夫が使うことも考えて大容量でほんの少し肌触りの良いものを選ぶようになりました。

 子供が生まれて3人家族になってからは、最も肌触りが柔らかいと感じられたトイレットペーパーを購入しています。トイレ練習中の子供がお尻を拭くのを嫌がらないようにと考えてのことです。また、一人暮らし時代と比べると消費速度も約3倍になったため、現在はロールが大きくコンパクトに収納できるサイズのものを選んでいます。

 私が買っている商品は、いずれも「トイレットペーパー」ですが、ライフスタイル別に解説したように、選択の「理由」はさまざまでした。ところが企業側は、販売の際に「商品そのもの」を全面に押し出す場合が、まだまだ多いのではないでしょうか?

 確かに私という消費者が購入しているのはトイレットペーパーに違いないのですが、それは商品を一目見れば分かります。購入の決め手となるのは、その先の「形容詞」です。キーワードにすると、一人暮らしの時は「とにかく安い」、結婚してからは「大容量でそこそこの品質」、そして現在は「(高くてもいいので)肌に優しいもの、コンパクトなもの」です。

 トイレットペーパーだけでなく、食品や衣料品でも全く同じです。「私たちのスーパーは惣菜に力を入れています」「自店はコートが人気なんです」と、自店の一押し商品を強く打ち出している店はよく見受けられます。でも本当にお客さまが知りたいのは、もう一歩踏み込んだ「自分にとってどうなのか」だと思います。

 食品なら「どんな」内容の惣菜なのか、衣料品なら「どんな」着こなしができて「何の」素材でできているコートなのか。こうした形容詞の部分こそが、購入を検討するに当たって、より知りたい情報ではないでしょうか。

 ものがあふれる現在、商品名を前面に打ち出すプッシュ型広告は街中の至る所で見られます。テレビからCMが流れ、電車には車内広告や映像を目にして、スマホでは企業のLINE通知が頻繁に配信されます。その他、メルマガやSNSなど広告を目にしない日常を送る方が難しいほどです。

 単なる商品訴求では、消費者は慣れてしまい、もうお腹いっぱいの状態。企業は商品自体を訴求するよりも、商品イメージを売り出した方が、お客さまの目に留まりやすくなるのではないでしょうか。

店・ブランドとしてのイメージ戦略

 

 私が何度も足を運んでいる店には、いずれも強い特徴があります。「スープカレーが本格的で、店構えも雰囲気がある店」「個室風になっていてドリンクだけでも長居しやすい店」「行くと必ず何か買いたくなってしまう店」「帰り道に立ち寄りやすい立地の店」など、キーワードはさまざまです。

 企業側は、モノづくりや店・ブランドを構える際にはたくさんの思いを詰め込んでいます。こだわった商品そのものを訴求したい、どうせ伝えるならあれもこれも伝えたいと張り切ってしまう気持ちは、私もモノづくり経験者なので痛いほど分かります。

 でもお客さま側からすれば、大事なのは「商品やサービスを購入すると自分はどうなるのか」です。この商品を取り入れれば日常がこれだけ素敵になる、良い気持ちになれるなど、大げさに言うと、夢や理想の生活やなりたい自分に近付くために人は日々消費を行っているのだと思います。

 店のこだわりを知って応援できるのは、顧客などより店のことを知って深い関係になってからの話です。自分たちの店やブランド、サービスが商品を通じて販売している「もの」は何なのか、もう一度考えてみてください。