《今回の相談内容》 (港南区 R・N 40歳)

「私の部下になかなか心を開かないタイプの男がいまして。悩みを抱えているようなのですが、彼の心を開かせる方法ってないものでしょうか」

 

 都会ではたき火をするチャンスはめったにありませんが、キャンプ場なら話は別。キャンプファイアーをしたことのある人なら、こんな経験をしたことがあるのではないでしょうか。

 燃える火を見詰めているうちに、誰彼となく打ち明け話をし始めて、「あ、そういう経験、俺にもあるある」「私もある~」と、周りもそう反応して、普段だったら絶対口にしないような心の内や秘密の話までさらけ出して話し込んでしまったといった経験。

 実は、キャンプファイアーのようなシチュエーションだと、人は自ら心の内を披瀝したくなってしまうようなのです。

 それを心理学では『暗闇効果』と呼んでいます。

 この効果が生まれるのは、暗闇が持つ不安感や秘匿性のおかげで、周囲の人との心理的距離が縮まります。するとそこには、一体感が生まれ、心の壁が取り払われて、思わず心の中にしまっていた秘密まで口にするようになるのです。

 そうした現象は、アメリカの心理学者ガーゲンが行った実験でも確かめられています。博士は、暗闇の中で人と人との親密度がどのように変わるかを調べるために、次のような実験を行いました。

 見ず知らずの男女のグループを2組つくり、一方のグループは明るい部屋に、もう一方のグループは暗い部屋に閉じ込めたのです。

 モニターで観察すると、明るい部屋に入れられたグループは、当然かもしれませんが、初対面ということもあって当たり障りのない会話に終始していました。

 それと対照的だったのが暗い部屋に入れられたグループ。いつの間にか親密度が増し、打ち解けて会話も弾み、中には肩を寄せ抱き合う男女も現れるという結果になったといいます。暗い場所には、心を開かせる力があるということです。

 この力は、今回の質問者のように「相手との距離を縮めたい」「心を開かせたい」と思っている人には大きな助けとなります。

 何かで悩んでいるようなのに心に壁をつくって口を閉ざしている部下や友人がいるなら、照明は暗いが、安心できるなじみのお店に連れて行ってあげましょう。『暗闇効果』が働いて、重い口を開いてくれる可能性大です。呼び水として、あなたが率先して何か打ち明け話をしてあげると、さらに効果が期待できます。

 かつてニューヨークで大停電が起こったとき、その9カ月か10カ月後に出生率がグンと上がったという都市伝説のような話がありますが、この効果を考えるとあながち“眉つばな話”ともいえませんよね。