㈱セールスフォース・ドットコム  常務執行役員 コンシューマー通信メディア営業本部長 三戸 篤氏

 クラウドベースのCRM(顧客管理)システムなどを提供するセールスフォース・ドットコムは、世界的な「働きがいのある会社」として認められている企業だ。

 そのセールスフォース・ドットコムが大事にしている概念が、「従業員エンゲージメント」である。従業員エンゲージメントは、「従業員一人ひとりが自発的かつ意欲的に仕事に取り組む状態」を示す指標のこと。

 「エンゲージメント」は近年良く聞かれるようになった言葉だが、この概念を世界的に牽引するセールスフォース・ドットコムはどのように捉えているのか。同社常務執行役員コンシューマー通信メディア営業本部長の三戸篤氏が『商業界オンライン』主催の「リテール・マネジメント・フォーラム」で語った。

製品や事業戦略よりも「カルチャー」を大切にする

 従業員のエンゲージメントが高まることで、会社にも利益がもたらされることは実際に成り立つと証明されています。従業員エンゲージメントに投資することで、お客様へのサービスが向上し、ロイヤリティが上がって結果的に業績が向上するという仕組みですね。

 セールスフォース・ドットコムでは、「カルチャー」と「テクノロジー」と「データ」を足すとエンゲージメントが高まる、という公式があります。中でも「カルチャー」は、製品や事業戦略など以上に弊社が大切にしているものです。良いカルチャーがなければ、いい製品もサービスも機能しないという考え方です。

 また企業競争力という点でもカルチャーは大事です。仕事自体は変わらない場合でも、周囲の人や環境は会社によって変わります。そこで差別化できれば、より良い人材を惹きつけられるわけです。

CRMの方法論を「企業と従業員の関係」にそのまま使う

 その上で、「テクノロジー」と「データ」にフォーカスします。弊社ではCRMのサービスを提供していますが、CRMはいわば企業の顧客のエンゲージメントを高めるための方法です。この考え方を、企業と従業員の関係性にそのまま適用するわけです。

 

 たとえば、最近マーケティング現場で広まっている「カスタマージャーニー」という言葉がありますが、それと同様に新入社員向けのジャーニーを設計し、時系列を追って、そのタイミングで必要だと思われる内容のメールが送付されるような仕組みを作っています。1日目はセキュリティの重要性、3日目は基本的な業務手順の紹介など、内容を細かく分けてだんだんと弊社のカルチャーを理解してもらえるような流れになっているのです。

 また弊社の仕事は、スマートフォンの立ち上げ画面にヒントを得た「アプリが並んだ画面」からスタートします。スマートフォンの立ち上げ画面にはアプリがずらっと並んでいますが、とても優れたユーザーインターフェースだと言われています。一昔前までは誰も使っていなかったものが、今ではみなさんが使っていることからもわかりますね。この使い心地を、そのまま弊社の仕事を開始するスタート画面にも適用しました。

 さらに業務に関する問い合わせは、GoogleなどのWEB検索サービスをヒントに、ひとつの検索ボックスから行えるようになっています。「この質問はあの部署に尋ねるべき内容ということで問題ないだろうか?」といったことを意識・考慮する必要なく、使用者は聞きたいことを書き込むだけで、しかるべき欲しかった情報が記載されているページに案内されるような仕組みが構築されています。

 他にも様々な工夫がありますが、こうしたサポートの仕組みを作っていったことで社員の94%が「仕事を成し遂げるために求められる以上の努力を惜しまない」という項目にYESと答えてくれました。従業員の方々が、自らの意思で献身的な姿勢になってくれているのです。

 ほかにも従業員の定着率という点では、過去5年で離職率は7ポイント下がりました。これは全体で離職者が40%減少したことを意味します。いかに従業員エンゲージメントへの投資が効果的か、ご理解いただけたかと思います。