スーパーマーケットで売上げナンバーワンのライフコーポレーションにしても、店舗数は260店代後半だ。

 今回のテーマは、「日本のスーパーマーケット(SM)はなぜ店数が増えない?」 アメリカでは1000店舗のSMチェーンがあるのに、日本では売上げナンバーワンのライフコーポレーションでも店舗数は260店代後半。こうした差はなぜ生まれるのか? その要因を解明していきます。

 編集部:SMでも、大手の総合スーパーの発言に影響を受けたのか、個店経営に傾斜している経営者が多いように思えます。これについては、どう考えたらいいでしょうか。

 吉田:SMは、全国で1万8611店あり、総売上高は18兆円(1店平均10億円)で、わが国で最も売上げが大きなものです(2017年)。家庭の食品の総需要40兆円(世帯当たり80万円/年)のうち、45%くらいがSMで買われています。

米国は1000店超も多いが、日本は平均30店程度

 吉田:ところが、1つの会社での平均店舗数は30店程度であり、チェーン草創期の段階であるリージョナル(地域)のチェーンにとどまっています。

 1000店舗以上の米国SMとは差が大きいのです。米国ではクローガーは3825店、スーパーバリュは1588店、顧客満足度が全米ナンバーワンのパブリックスも、5000㎡以上の大型SMが1200店です。2万㎡のウォルマートも生鮮とグロサリーの食品売上げが大きいのですが、5284店です(2016年)。

 わが国のチェーン志向の企業群で最も古いSMの平均店舗数が、なぜ30店で止まっているのか。

 他の商品領域にない特徴が、わが国の生鮮流通にはあるからです。詳しく述べると、長くなりますが、意外に、知らない人が多いかもしれないので、一言で言うと、生鮮(青果、鮮魚、精肉)での「取引の地域結合」です。SMの売上げは、日配・惣菜を含むと70%が生鮮だからです。

 江口:「取引の地域結合」って、何ですか? 聞いたことがないのですが。

 吉田:「店舗の商品作業」と同じく、私がつくった言葉です。

 わが国の農業、漁業、畜産業は、自民党が価格を守る政策をとったことと、補助金の保護行政が続き、家業の農家単位であり、今も零細です。企業の農業への参入は許されていませんでした。

 このため生産が零細になり、生鮮流通は農協と市場(いちば)単位になっていました。市場では、免許を持つ個人の「仲卸」が入札をし、店舗への物流をしていたのです。この仲卸が、初期のSMの生鮮のバイヤー役でした。

 SMも、家業の八百屋、肉屋、魚屋と同じように、市場での入札で仕入れていました。

 市場での価格決定は、「その日の供給と需要」で決まります。天候や不作などの理由で出荷が少なく、入札が多い日は、価格は数倍に上がります。

 SMは、家業店より多く仕入れます。入札の量も多い。このため、市場の仕組みでは、仕入価格は上がってしまいます。市場はニンジン、キュウリは100本というように、多品種を少量仕入れる家業店に有利な仕組みだからです。

SMは店別に市場を変えて仲卸から仕入れている

 吉田:そこで、SMは県内各所にある市場の仲卸と契約し、一定量を仕入れることにしました。これが地域取引です。

 つまり、全国単位の仕入れではなく、地域のSMが、地域市場での仕入れをしているのが、生鮮三品(肉、魚、青果)です。魚は養殖が増えて、全国レベルの取引も増えてはいますが、全体で見ればまだ少ないのです。

 SMでは惣菜、日配を含むと、売上げの70%が生鮮。米国のSMでは、腐らないグロサリーに対し、生鮮は腐るため鮮度管理が必要なペリシャブルと呼んで、売場の在庫管理を区分しています。

 生鮮の地域単位での取引が、「取引の地域結合」です。各地の市場(いちば)では、大手SMとの大量取引は、出荷量の不足のため、行えません。

 SMがセントラル・バイイングをしても、地域単位の零細な生産と市場流通の仕組みでは有利にならないのです。

 生鮮の卸売市場は2014年に、全国に1154カ所ありました。同年の国産の青果では86%、水産では54%、食肉では9.6%が、地域市場経由です(農林水産省)。

 食肉は、輸入と卸売業経由が増えて、市場取引が減っています。海外からの輸入が増えている食肉では、1990年代以降は、セントラル・バイイングができるようになってきました。総売上げ26兆円の外食産業の肉は、ほとんどが輸入肉です。

 以上の取引事情のため、SMは、店舗別に市場を変えて仲卸と契約し、物流料とマージンを払い、仕入れるようにしました。

 SMが他県に出店したときは、その県に平均で20カ所ある農協と市場でのゼロからの仕入れが始まり、既存のSMよりも仕入れ量が多くても、入札価格が上がり、有利な仕入れはできません。

 生鮮のセントラル・バイイングができなかったため、SMは平均店舗数が30店という、ほぼ県内のリージョナルチェーン(地域チェーン)にとどまっているのです。SMの出店の増加は、1980年代までだったからです。

 自然に依存する、しかも、零細な生産方法の生鮮で、セントラル・バイイングの有利さを生かすことができなかったため、わが国のSMの経営店舗数は今も少ないわけです。

出店数と閉店数が同じで、店舗数が増えない

 吉田:2017年のSMの平均的な出店数は、総店舗数に対し2.5%です。既存店40店に対して1店舗が新設されています。40年経っても、2倍です。

 ところが実際は、店舗寿命が20年を過ぎると、同業のSMとドラッグストア(Dg.S)、コンビニの異業種の競合が増加し、売上げが減って閉店数が増えます。1980年代まで増えていた300坪以下の中小型SMの店舗年齢が20年、30年を超えたからです。

 このため、SMは、2010年以降は出店数と閉店数が同じになって、店舗数が増えなくなっているのです。新店ができると、その裏で、2年目、3年目には商圏内の古い店舗が閉店しています。

 生き残った日本型GMSの20%閉店ではありませんが、SMもDg.Sとコンビニとの異業種競合の増加と、SMの成長店の出店のため、古い店舗の閉店増加時代に向かっています。

 成長店とは、店舗数を増やして、売上げと利益を増やす店舗のことです。それぞれの業界で、利益の上位10%の企業に成長店があります。SMでは、売上対比経常利益率が、4~5%のクラスです。他方、1万8611店のSMの平均利益率は、売上比1.3%と低いのです(2016年)。