SNSで話題を呼んだ「スギフジ酒バッグ」と杉山雅一さん

桁外れのSNS映えに仰天した「富士バッグ」

 日本の山の総元締たる「富士山」には、全国……いえ全世界に多くの愛好者がいます。

 お酒の愛好者もそれに負けないほどいますから、「酒屋さん」というのも全国津々浦々に存在するでしょう。

 その中には「富士山好きの酒屋さん」だって大勢いると思いますが、今回ご紹介する人物はおそらく群を抜いていると思います。

 その方の存在を私が知ったのは、SNSで静岡東部の情報収集をしていた長期入院中。

 アップされていたバッグのキュートさに、私は一発で魅了されてしまったのです。

ディテールは大胆アレンジしてるのに「富士山だ」とすぐ分かるのがスゴイ

 これは酒瓶などを持ち運ぶためのもので、希少な銘柄をこの中に入れて贈れば「ものすごく気の利いたプレゼント」として喜ばれること請け合い!

 最初は「どこかのグッズメーカーのアイテムなんだろう」と思ったのですが、テキストを読み込んでみると、なんと「伊豆にある個人経営の酒屋さんが自主制作したPB(プライベートブランド)商品」だということが分かりました。

「なんてアバンギャルドな酒屋さんなんだ!」と感動した私がリツイートしたところ、ほどなくして先方からお礼のメッセージが届きました。

 そこで私は「現在はまだ入院中なんですが、退院したら必ずお店に伺ってこのバッグを買わせていただきます」と返信したのです。

 その約束を今回、この連載の取材という形ですが、ようやっと果たせました。

フツーすぎるお店でフツーじゃないビジネス展開

 そのお店、「杉山商店」があるのは静岡県・伊豆の国市で、最寄り駅は新幹線が停まる「三島」と人気温泉地「修善寺」とを結ぶ伊豆箱根鉄道駿豆線の「韮山」。

 付近にある「韮山反射炉」が平成27年に世界遺産に登録されたことで、にわかに注目の集まったエリアです(反射炉の最寄り駅は一つ先の「伊豆長岡」ですが)。

 韮山駅で降りて15分ほど歩くと、伊豆半島を流れる一級河川「狩野川」が現れます。

雄大な流れを誇る伊豆半島の川の筆頭たる「狩野川」

 そこにかかる「松原橋」を渡った先の土手を修善寺方向にちょっと進んで降りて、二車線道路(県道129号 韮山伊豆長岡修善寺線)に出ると目指すお店があるのですが……その見た目は「地方によくあるローカルコンビニ」でした。

パッと見は、地方に行くとどこにでもありそうな「ローカルコンビニ」ですが……

 アバンギャルドな業態なのでもっとエッジの効いた外観を勝手に想像していた私は、あまりにもオーソドックスな佇まいにちょっと拍子抜けしてしまいました。

 ……でもまぁ、あくまで「のどかな山間の地域密着店」ですからね、あまり突飛すぎる外見ではお客さまが困惑しちゃうでしょうから、やはりこれが正解なんだと思います。

 気を取り直して入店すると、4代目だというオーナー店主の「スギちゃん」こと杉山雅一さん(45)が、奥様の治恵さんと共に出迎えてくださいました。

イチオシのPB商品を見せてくださった雅一さん・治恵さん

 お店は現在このお二人が切り盛りしていますが、雅一さんのご両親もまだ現役で活躍中なんだとか。

 アットホームな家族経営店でありながら「自分のやりたいことをやれている」なんて、雅一さんはなんとまぁ恵まれてるんでしょうか。

プロならではの知恵とセンスあふれるPOPの数々

 お店に入ってまず目につくのが、そこかしこに貼られている「手書きPOP」の数々でした。

これはお酒のPOP。この店長さんのアドバイスなら信じられそう!
こちらはおつまみ。「おいしいワインのお供」にピッタリな感じです
 
「オーガニック果汁100%」というフレーズを手書き文字が強化してる感じです
「健康維持に留意したフード類」まで扱われていて、至れり尽くせりだなぁ……

 POPはこれでも一時期より少なくなったそうですが、どれもウィットに富んでいて、しかも的確なアドバイスがなされています。

 杉山商店は「お酒と食のセレクトショップ」を自負しているそうですが、その自信がPOPの数々に表れている感じです。

 実は雅一さんはお店を継ぐ前に東京で「品揃えへのこだわりに定評のある某人気スーパー」に勤めていたそうで、現在の商品構成にはその時の経験が生かされている感じです。

 曽祖父の始めた酒屋を現在のコンビニスタイルに変えたのは3代目店主のお父さんだそうですが、雅一さんの代になってまた新たな進化を遂げさせました。

 飲食営業のライセンスを取得し、店内で「旬のお酒や料理を堪能するイベント」を月イチペースで開いているのもその一環。

 料理は治恵さんや雅一さんのお母さんが担当しているそうです。

 近年は伊豆で獲れたシカやイノシシを使った「ジビエ料理」の人気も高まっているんだとか。

 イベントのテーマはそのつど変わるといいますが、毎回10人程度(うち常連が2~3人)が参加して好評を博しているそうです。

 ちなみに店内には、進学で家を出た娘さんの持ち物だったという「ピアノ」が置かれているんですが、これは弾けるお客さんがいらしたときには自由に演奏してもらっているそうです。

「弾く人っているの~?」と思ってましたが、演奏者は想像以上に多いんだとか
グラス片手にページをめくれば、味わいがより増しそうなラインアップです

 また、お店の一角にはお酒関係の書籍を並べた書棚があり、こちらも自由に読めるんだとか。

 つまり杉山商店はインストア・イベントの際には「ピアノバー」や「ブックバー」になったりするわけですね、充実してるなぁ~。

 雅一さんが撮りためた「富士山の絶景フォト」が展示してあるコーナーもありました。

富士山愛に衝き動かされてシャッターを切る雅一さんの腕前は玄人はだし

 雅一さんの富士山愛は広く知られていて、友人の中には「富士を見るとスギちゃんの顔が浮かぶよ」なんて言う人がいるくらいなんだとか。

 冒頭で述べたように、世の中に富士愛好者は大勢いますが、「存在が富士山と一体化しているレベルの人」というのはそうそういないと思いますよ。

 雅一さんの富士山愛の深さが分かったところで、私を魅了した「富士山バッグ」のお話を伺いましょう。

雅一さんの富士山愛が具現化した「スギフジブランド」

 雅一さんのPB商品には「スギフジブランド」なる名称が冠されています。

 それは「大好きな富士山とコラボして、スギヤマ視点で富士山のように雄大ですばらしく感動する『モノ』や『コト』を商品化したオススメブランド」のことなんだとか。

スギフジブランドの売場には「富士山コーナー」という名が付いてます
富士山コーナーにもやっぱり雅一さんのお手製POPが添えられてます

 これまでに作ったグッズは、私のハートをわしづかみにした富士山バック(スギフジ酒バック)の他、和製ジーンズの聖地・岡山県倉敷市に発注して作ったというデニム地の「スギフジ前掛け」や、コルクや瓦の素材を使った「コースター」もあります。

瓦素材のコースターは吸水性に優れていてグラスの水滴が気にならないのだとか

 雅一さんが撮ったものの中から厳選した画像を集めた「富士山カレンダー」もありました。

富士山撮影をライフワークにしている雅一さんですからクオリティは高いです

 スギフジブランドにはグッズだけではなく、当たり前ですが酒屋さんなので「お酒」だってあるんです。

こちらは「PB純米酒」。ボトルにのスギフジマークが良いアクセントです

 スギフジブランドとして最初に作ったのは「伊豆の巨峰酒」というものだそうです。

なんで「伊豆」なのに「巨峰」なの?と最初は疑問に思いました

「ブドウ=甲州」だと思ってる方だと「なんで伊豆で巨峰酒なんだ!?」と首をかしげるでしょうが、実は巨峰は現在の伊豆市にあった「大井上理農学研究所」という施設で作られた品種なんだとか!

 いや知らなくっても大丈夫、静岡人の私も雅一さんから聞くまで全然知らなかったのですから。

県外の観光客にも知ってほしい「杉山商店」の真価

「唎酒(ききざけ)師」や「シニアワインアドバイザー」などの資格を生かしながら「伊豆や静岡県の地酒」や「こだわりの食品」などを販売し、「お酒のある食卓の幸せ」を提案しているという雅一さん。

「気軽に飲めるリーズナブルでおいしいお酒」から「御進物品」や「特別な日に贈りたい逸品」に至るまで、プロならではの視点でニーズに合った商品をお薦めしているそうです。

「売れるモノ」より「売りたいモノ」を優先し、そこから生まれる「楽しい体験」をお客さまに提案しているんだとか。

 雅一さんと治恵さんとの夫唱婦随ぶりは一目瞭然ですが、店内を見ると「お子さんたちとの関係の良さ」もよく分かります。

 先述のピアノの上には息子さんが描いたというイラストが飾られています。

どれも素晴らしい出来栄えのイラストたち。「創る血筋」なのだと分かります

 その傍らには娘さんの大型作品も展示中。

 
娘さんはデザイン力に長けていますが、それもそのはずで……

 スギフジブランドに付けられているロゴマークは、実はこの娘さんの作なんだとか!

 家族総出で「面白いこと」に取り組めるなんて、ホントに素敵なファミリーだなぁ……と私は羨ましくなりました。

 一つだけ惜しいと思うのは「こんな気の利いたお店が伊豆にある」という事実が、外部にあまり知られていないこと。

 私は今回、ネット検索で出てきた地図を見て向かったのですが、それだとイマイチ分かりづらくて結構な遠回りをしてしまいました。

 韮山駅からの最短ルートがもっと分かりやすく提示されていれば、「韮山反射炉」や「修善寺温泉」などへ行く首都圏からの観光客を取り込むことができ、ビジネスの今以上の拡がりが期待できると思うのです。

 静岡県は車社会ですが、首都圏では「駅から家まで徒歩15分」程度の人はザラにいますから、静岡人が思うより「歩くことへの抵抗感」はありません。

 安全かつノンビリと駅から歩けるルートさえ提示されていれば、途中下車して来店される方だって一定数いるはずだと思うんです。

 せっかく伊豆まで来たなら「できるだけレアな伊豆土産」をゲットして帰りたいのが人情ですが、そんなニーズに杉山商店はベストマッチ!

 スギフジブランドの商品は杉山商店のサイトからネット購入もできますが、やはり実店舗まで行き、雅一さんや治恵さんと会話を交わしなが買物されるのが絶対オススメです。

 念願だった「スギフジ酒バッグ」を入手できて、私もホクホクでした。

 ホームパーティーとかに行く際、これにワインやシャンパンを入れて持っていけば大ウケすること必至です。

 私は残念ながらパーティーピープルではないのでそういう場に行く機会はないんですが、ソッチ系のアナタはぜひにぜひに!