モノづくりに定評があるオンワードグループが、オーダー市場への本格的参入を始めています。オンワードホールディングスの子会社であるオンワードパーソナルスタイルは、11月8日より「オーダーメイドウィメンズシューズ」の事業を開始しました。税抜き9900円から最短1週間の納期で、自分の足にぴったり合ったパンプスをオーダーメイドで買える仕組みです。

約30万通りの組み合わせ、足囲も3サイズ展開

関東唯一の直営店・KASHIYAMA ウィメンズ表参道店。120足あるゲージサンプルは圧巻

 今回の「オーダーメイドウィメンズシューズ」は、オーダースーツの「KASHIYAMA the Smart Tailor(カシヤマ ザ・スマートテーラー)」に次ぐファクトリー・トゥ・カスタマー(F2C)事業の第2弾となります。工場から顧客へ直送できることで価格や納期、流通コストを抑えられるのが最大の魅力です。

「(靴の中でもパンプスを選んだ理由は)パンプスは最も靴の悩みを抱えやすい商材だから」とオンワードパーソナルスタイル・ゼネラルマネージャーの米野耕成氏は語ります。「仕事柄パンプスを履く機会が多いものの、足に合うものを見つけにくい」という女性の悩みを受け、あえてパンプスから始めたと言います。

「働いていて、仕事柄パンプスを履く必要のある女性の靴に関する悩みを解消したい」と語るオンワードパーソナルスタイル・ゼネラルマネージャーの米野耕成氏

 後々は、ネット通販でのオンラインオーダーがベースとなるものの、基本的にはオーダー初回は直営店での自分の足サイズの計測が必須となります。展開直営店は現在2店舗、「KASHIYAMA ウィメンズ表参道店」と「KASHIYAMA 大阪本町店」です。

 店内ではまずスタイルガイド(計測スタッフ)と一緒に120足のゲージサンプルの中から試し履きし、自分の足に合った型を探します。21.5㎝~26㎝の靴のサイズ(足長)10サイズだけでなく、足囲はS、M、Lの3種類から、ヒールの高さは1.5㎝、3.5㎝、5.5㎝、7.5㎝の4種類から選べるため、思う存分、感触を履き比べることが可能です。

試し履き用にストッキングや中敷きをタイミング良く手渡してくれるなど、接客は普通の靴売場と変わらない
オーダーメイドなので、右足と左足でそれぞれ異なるサイズをオーダーすることも可能
ゲージサンプルは引き出し式。異なる足囲を試したいときは奥から探す仕組み
ヒールの高さごとに陳列されているため、視覚的に分かりやすい

 相談に乗ってくれるスタイルガイドはシューフィッターではなく、専門資格も持たないものの、ストッキングをすぐに用意してくれたりアドバイスを積極的に行うなど、接客は通常の靴売場と同じように感じました。ゆくゆくはセルフでお客さま自身が選べる店舗にするため、あえて資格職は置かない方針です。

オーダーの内容はスタイルガイドが名刺サイズの紙にまとめてくれる。アドバイスを受け、私は素足ではくことを考え、通常より小さめのサイズをオーダー

 ベースデザインはパンプスタイプのプレイン、踵に空きのあるミュール、靴が脱げにくいバックストラップの3種類から選択します。ヒールデザインはピンヒール、太くて安定感のあるチャンキー、光沢のある金と銀でデザイン性重視のチャンキーと3種類あります。トゥ(爪先)のデザインは先の尖ったポインテッドが2型、四角いスクエアが1型、今後、丸いラウンド型が追加となります。

大半の素材は晴雨兼用となっている。ベーシックカラーなので日常使いに最適

 注目すべきは素材の豊富さ。展開素材の大半が晴雨兼用となっており、9900円からのノンレザー22種類、税抜き1万8000円からのレザー22種類と幅広く対応しています。オフィス需要を意識したベーシックカラーを中心としていますが、リピートを意識してか一部遊びのあるパイソンやメタリック柄なども取りそろえています。

在庫を持たないビジネスモデルで原価率を高める

社内モニターで一番人気は、ゲージサンプルにも使用されているレザー素材のスエード・グレージュ。「いろんな洋服に合わせやすい」という声が多いのだとか

 米野氏は「本革のオーダーでも2万円前後という価格には自信があります。ファクトリー・トゥ・カスタマーで工場から顧客に直送するビジネスモデルのため、靴業界の悩みの種となる在庫を持たないことが最大の強みです」と、自信をのぞかせます。

 矢野経済研究所「2019 靴・履物産業年鑑」によれば、靴・履物小売市場規模は約1兆4000億円、うち婦人靴は約3000億円とされています。靴はファッションの中でも消耗度合いが高く、買い替え頻度も頻繁ながら、サイズ別に在庫を大量に抱えることが問題となっています。

 オンワードパーソナルスタイルでは、この点に着目。通常であれば工場と顧客の間に店舗や営業、生産など複数工程を挟むところを、工場と顧客間で商品を直送できるように設定しました。このビジネスに特化するため、一つの工場と取り組み、流通時間の削減に成功。靴の縫製の時間は一切省くことなく、オーダーメイドながら納期短縮につなげました。

 韓国やベトナムなど、一部海外ではオーダーメイド靴は一般に普及していますが、日本ではまだ価格面でのハードルが高い印象です。みんな一緒の「流行」を持つよりも「自分らしさ」を追うスタイルが当たり前となってきているため、品質やコスパが伴えばより伸びる市場であると考えられます。

品質は申し分なし、肝は納期設定か

オーダーで届いたパンプス。色やサイズは問題なく、市販品と比べてもチープさは感じない完成度

 気になったのは納期です。サービス開始直後、またプレス向けの先行体験ということもあってか、当初案内された配送希望日時は11月20日。ところが実際に商品発送のメールが届いたのは翌21日の夜、到着したのは22日でした。

 オーダーサービスであれば、待ち時間はどうしても発生します。ほんの数日のズレといってしまえばそれまでですが、顧客の楽しみに待つ気持ちを考えるとこうした誤差は意外と致命的なのではないかと感じました。

 商品に関してはさすがオンワードの品物で大変素晴らしく、宅配でありがちな過剰包装もなく靴箱にビニールがかけてあるだけの簡易的な包装で、昨今のエコを感じられてとても良いと思いました。だからこそ、配送日に関しては注意深い設定が望まれます。

グレーの靴箱にビニールをかけただけの簡易包装は、過剰包装になりがちな宅配の中でもセンスを感じた

 足囲が選べる靴は少ないため市場ニーズは高いと思うものの、個人的には有料でもいいので長く履き続けられるようにクッションも選べると、より利便性が増すのではと感じました。また、実際にパンプスが足に合わなくて痛くなるという声はあちこちで聞かれてきましたが、「おしゃれのために無理して頑張らない」エフォートレスが世界的トレンドの今、パンプスニーズがどれだけあるのかも気になりました。

「#KuToo」で浮き彫りとなった女性のパンプス強要問題が冷めやらぬ中、カシヤマというブランドのモノづくりはどこまでOLの心をつかめるのでしょうか。商品自体の品質や目の付けどころは良いだけに、どこまでシェアを拡大できるかが見ものです。