ウォルマートIRL店舗【出所】筆者撮影

 アマゾンが複数のスーパーマーケット新フォーマット店舗の開発を行っている。ウォルマートもIRLと呼ばれるAIを活用した新店舗をオープンし、実際の営業を行いながらさまざまなテクノロジーをテスト中だ。前回の記事(『アマゾンゴーを追うレジレス店舗が進化している!』)で見たように、レジレス店舗は既にさまざまなサイズ、フォーマットでテストや営業が始まっており、コストの問題をクリアすればいつでもチェーン化が始まりそうだ。

これがアマゾンが開発中のフォーマットだ!

●倉庫と店舗のハイブリッド型

 今年7月、『ニューヨーク・タイムズ』はアマゾンが2017年に「全ての人のための食品ショッピング(Grocery Shopping for Everyone)」というタイトルのメモを社内で回覧していた、と報道した[1]。この店舗は半分が生鮮食品やデリの売場で、もう半分は従業員しか入れないパッケージフードなどの倉庫だ。来店客は生鮮食品を買物している間にアプリで非生鮮食品を購入でき、チェックアウト時に両方を持ち帰れるよう用意されている、という構想だ。

 この店舗ではオンラインオーダーをピックアップしたり、オーダー内容を管理する場所も想定している。記事によるとアマゾンはその後もこの構想をさらに練っているそうだ。

●レジレス大型店

 同時期に、通常のアマゾンゴーより4倍程度大きい店舗がシアトル市内で工事されている、という報道があった。ハイテクメディアの『ギークワイヤー』は10月に、この物件にアマゾンゴーのチームが社内テストを行っていると報道し、アマゾン社もこれを認めた[2]

『ギークワイヤー』はこの店舗の平面図を入手して公開したが、これによると967平方メートルのうち約650平方メートルが売場で、出入り口にはアマゾンゴーの特徴であるゲートが7機設置される計画だ。店舗には45平方メートル前後のアルコール売場と小さなイートインスペースがある。面積が大きいだけでなく、他のアマゾンゴー店舗と異なり、住宅街に立地し、地元住民のミニスーパーというところだろうか。開業日はまだ不明だ。

●小型スーパーマーケット

 アマゾンは一方で、ロサンジェルス市ウッドランドヒルズに来年、スーパーマーケットを開業すると公表した[3]。この店舗は高級自然食のホールフーズ・マーケットとは異なり、より一般的なスーパーマーケットに近いという。アマゾンゴーのレジレスシステムは導入せず、普通のレジを使う。店舗面積は3250平方メートルで、出店するのは消滅したトイザらスの跡地だ。

入り口のサイン。「皆で一緒に未来を創りましょう。あなたは今から稼働中のラボに入ります。テスト中です。ウォルマート.com」と書かれており、カメラ等でモニターしていることを婉曲に注意している。【出所】筆者撮影

ウォルマートは店舗運営効率化に向けてAIをテスト

 ところでウォルマートは、レジレスで使用されるカメラ、センサー、コンピュータヴィジョン、機械学習、RFIDなどを用いて、顧客と従業員の店舗経験を改善するための実験店舗 ウォルマートIRL(Intelligent Retail Lab)を今年4月にマンハッタンから55キロほど離れたレヴィットタウンにオープンした。同店舗はネイバーフッドストアで、面積は4645平方メートル、3万5000アイテムを販売する。

シリアル売場。上部にびっしりとカメラ、センサーが取り付けられている。【出所】筆者撮影

 天井には1500台以上のカメラが天井から吊られたグリッド上に設置されており、什器には重量センサーが設置されている。カメラは通常のカメラ機能および3Dセンシング機能を持つ。レジレス店舗との大きな違いは、お客ではなく商品の動きをモニターし、①在庫管理②商品の鮮度③店内の床の保全(液体などがこぼれてお客の転倒を招かないかなど)、④店内の混雑度分析などの情報収集と判断を行う。

 在庫管理面では精肉売場を見張る「ミート・トラッカー」というシステムがあり、陳列在庫数をリアルタイムにモニターしながら、売上げデータから在庫が無くなるタイミングを予測。補充担当者が持つモバイルアプリに補充品目や数量などの指示を出す。現時点では精肉など主要な部門のみでテスト中だが、今後は他のアイテムにも広げていく計画だ。

 店内の混雑度についてはモニターの結果、オープンするレジ台数やカート台数を決定する。

 
IRLの心臓部、データセンター【出所】筆者撮影
インフォメーションキオスク【出所】筆者撮影


 カメラやセンサーが収集する膨大なデータを収納・分析するため、店舗奥にはガラス張りの別室 データセンターがある。ここには3年分の音楽をダウンロードできるだけの処理能力を持つハードウェアが格納されている。

 また、インフォメーションキオスクが店内各所にあり、収集したデータの分析結果の一部を公開したり、ウォルマートが未来の小売店舗を開発するためにどのようにこの店舗を利用しているかについての解説をインタラクティブに見ることができる。

 IRLのCEO マイク・ハンラハン氏は「テクノロジーによってわれわれは非常に多くのことをリアルタイムに理解することができる。この情報とウォルマートが培ってきた50年以上の専門的経験を組み合わせれば、顧客と従業員の生活が向上するパワフルな(店舗)経験を創り出すことができる」とコメントしている。

新フォーマット開発はさらに続く

 2回にわたって見たレジレス店舗の進化をまとめてみよう。

(1)完全無人の小型レジレス店舗

(2)従業員はいるが、レジ業務は無人の大型レジレス店舗

(3)在庫管理や店頭商品管理業務を効率化するAI店舗

 つまり、レジレス技術はレジ待ち時間の短縮、欠品防止、盗難防止、在庫管理の精度アップなど、店舗運営のさまざまな領域の効率改善に応用が広がっている。

 また、無人小型レジレス店舗はオフィス、大型施設、駅構内や空港、そして従来店舗を出店できなかった立地で自動販売機の感覚でより多様な商品を販売できる。アマゾンが計画中といわれる「半分店舗・半分倉庫」のフォーマットが実現すれば、店舗はオンライン販売のピックアップ、返品、出荷拠点として、より効率の高い経営が期待できる。

 ここでネックになるのが投資額の大きさだが、既にコストダウン競争も始まっている。また、最新技術だけでなく、小売りの基本であるモノ、マーチャンダイジングレベルでの研究・実験も始まっている。来年はさらに新しいフォーマットが登場することを期待したい。


[1] ‘Amazon exploring new hybrid “mixed format” grocery stores’、The New York Times, 2019年7月30日

[2] GeekWire, ‘Amazon confirms its Amazon Go team is “running internal tests” at secretive retail store in Seattle’、2019年10月31日

[3] CNET社聞き取り、2019年11月11日