アマゾンゴー、パーク街店の店内。 出所:筆者撮影

 レジレス店舗が耳目を集めるようになってまだ2年もたたないが、欧米では既にさまざまなタイプのレジレス店舗が実用化、もしくは実証テストに入っている。そして火付け役となったアマゾンゴーは当初の計画の修正を始めている様子だ。

アマゾンゴーは出店速度を減速

 昨年1月に一般公開となったアマゾンゴー。現在、シアトル、サンフランシスコ、シカゴ、ニューヨークの4都市に16店舗運営し、まもなくシカゴに2店舗がオープンする。しかし、当初、アマゾンゴーは2021年までに3000店舗出店体制になると発表され、2019年中には56店舗、2020年には156店舗を予定していた。現時点で18店舗なので、明らかに出店計画から乖離している。

 

 アマゾンゴーの出店スピードの減速については、さまざまな憶測がある。アマゾンゴーは現在時点では不動産コストは高いがプライム会員が集中する大都市圏のオフィス街や住宅地に出店しているが、①不動産物件を探す難しさ②平均客単価の伸び悩み③異業種との競合などが挙げられている。

 ①不動産物件に関連しては、店前通行量が多く、カメラやセンサーをつるせるだけの天井高を確保できる物件を探す難しさが指摘されている。

 ②平均客単価については『ジ・インフォメーション』というメディアによると朝食とランチ商品しか売れていない、という話で、1店舗当たりの売上げの伸び代が小さいということになる。CNBC局の報道では、まだシアトル1号店以外は収益が出ていないという話もある。

 ③競合についてはファストフードのテークアウト、オンラインデリバリーが相手だ。サンドイッチやサラダも8ドル前後するので飲み物を買ったら10ドル以上で、アマゾンゴーでないと買えないという人気メニューがある訳でもなく、温かい食品も無いので、ただ「レジを待たないで済む」というだけで競合に勝てるかというと現時点では心もとない。つまりは、レジレス以前にコンビニとしての魅力の部分で課題があるということだろう。

同店内のランチコーナー。ニューヨーカーに人気の寿司ロールは7ドル99セントから。多くは10ドル以上する。サンドイッチ類も通常サイズは6ドル49セントから、サラダは8ドル99セントから。 出所:筆者撮影
ジッピン、サンフランシスコ店 出所:ジッピン社提供

激化するレジレス競争、後続企業は店舗を小型化

 ところで『ウォール・ストリート・ジャーナル』によると、レジレス開発中の企業は欧米で100社を超えるという話がある。アメリカでアマゾンゴー以外にレースの先頭を走っているのは、スタンダードコグニッション、ジッピン、AIFI社ナノストア、全てサンフランシスコを基盤とするテクノロジー分野のスタートアップ企業だ。

 スタンダードコグニッションはアマゾンゴーの大型店と同じ185平方メートルのコンビニ店舗向けに、天井に設置したカメラ、センサー、そしてコンピュータヴィジョン、ディープラーニングを使ったレジレスのテスト店舗をサンフランシスコにオープンした。昨年7月に化粧品・医薬品などの卸売業者パルタックと協業し、岩手県を基盤とする薬王道の仙台泉館店で実証テストを行っている。

 ジッピンは約1年間の実証テストを経て、今年6月にサンフランシスコ市内に23平方メートルの店舗を出店した。アマゾンゴーの平均店舗面積148平方メートルに対して5分の1以上小さい。システムはゴー同様にカメラ、コンピュータヴィジョン、ディープラーニング、そして什器に設置した重量センサーを用いて人の動きを追跡するが、エッジ・コンピューティング・モジュールを採用しているので、画像処理をクラウドに送るのでなく店舗内で独立して行うため、インターネットがダウンしても営業が可能だ。

 AIFI社ナノストアはさらに小型の14平方メートルのコンテナ式店舗を開発した。この無人レジレス店舗は自動販売機と既存のコンビニ店舗の中間フォーマットと位置付けられている。今年9月から2カ月間、オランダのアホールド・デレーズ社と提携し、同社傘下にあるアルバート・ハインの仮設店舗としてテスト運営を行った。アホールド・デレーズ本社のサポートオフィスにで社員に飲料、サンドイッチ、スナックなどをテスト販売している。

 この店舗の特徴は、①入店にはパネルにバンクカードをタッチするだけで事前登録やアプリの起動などが不要②出口にあるパネルで買物内容を確認したら、そのまま出られる③ユニットシステムをプラグインする形態であるため、オフィス、学校内、建設現場など周囲に店舗が少ない立地に仮設で営業できる。なおチェックアウトシステムはAIFI社が開発したが、決済システムはINGオランダ社が開発した。

AIFIナノストアのアホールド・デレーズ社本社に併設したアルバート・ハインの2カ月限定仮設店舗 出所:AIFI社
同店舗の中。什器が片側一方でカメラが什器のすぐ上および天井に設置されている。 出所:AIFI社

後続企業は店舗開発コストの低下にも取り組んでいる

 アマゾンはレジレス店舗の開発コストを明かしていないが業界では100万ドルとも200万ドルとも噂されている。テック企業のAVAリテール社によると、一般的にシステムおよびハードウェアの開発、設営、運営にはおよそ30万~40万ドルかかるとのこと。しかし後続企業は小売店へのシステム導入を獲得するためにコストダウンを急いでいる。

 スタンダードコグニッションのサンフランシスコのテスト店舗の開発コストは25万ドルだが、今後はその半分を計画している[1]。ジッピンは初期コストが1平方メートル当たり270~323ドル、1店舗当たり換算で「6223ドル~7448ドル+売上げコミッション5%」とソフトウェア使用料がかかるが、同社によると半年程度で初期投資は回収できる見込みとのことだ。

ウォルマートでもレジレスのテスト導入が始まっている

 一方で、ウォルマートも躊躇している大型店舗へのレジレス導入に向けて、開発が始まっている。アホールド・デレーズ社傘下にあるリージョナルスーパーマーケットチェーンのジャイアントイーグルは、2016年創業のテクノロジー企業 グラバンゴと今年7月からカメラ、コンピュータヴィジョン、機械学習を用いたレジレス店舗の実証テストを開始した。

 その大きな特徴は①Gレールと呼ばれるセンサーが並ぶレールを開発して低コスト化②アマゾンゴー他の店舗のようなゲートが無く、顧客はアプリを起動させるだけでレジレスの買物を行える③ばら売りの野菜・果物などは専用レジで重さを測って購入できる④レジレスでなく通常通り現金やクレジットカードで買物したい人は通常のレジを利用することもできる、という点だ。

 これらの動きに対しアマゾンは店舗サイズを小型にして空港内コンビニチェーンOTG社のチボ・エクスプレスやシネワールド社のリーガル映画館とシステムとハードウェアのライセンス契約を交渉中という話がある[2]。アマゾン側はノーコメントだが、前述の自前店舗の出店減速を考えるとあり得る話だ。また、新フォーマットの店舗を開発しているという話もある。一方、ウォルマートはレジレスと同様の技術を応用したテスト店舗を出店した。次回はこれらについてレポートしたい。

 

[1] The Next Unicorns by Jason Calacanisによる同社CEFジョーダン・フィッシャー氏へのインタビューより、2019年9月18日

[2] CNBC局報道、2019年9月30日