SABON PARCO_ya上野店の内装。中央にはウォータースタンド、天井からはシャンデリアが下がり、SABONの世界観を表現している。

 店舗の役割とは何だろうか。買物を楽しむ場所というのはもちろんだが、お客は店舗を通してそのブランドを体験する。つまり、店舗はブランドを体現しつつ、お客を楽しませるという重大な役目がある。

 新連載「このブランド、この店舗」では、ブランドを背負って新たな取り組みをしている注目店舗を紹介していく。まずは、上野の店舗を続けて紹介する。東京の下町で、店舗はどのように自らのブランドをアピールしているのだろうか。

 美容大国イスラエル発のボディブランド、SABON。「死海」の塩を配合したボディスクラブをはじめとしたバスプロダクトが特に支持され、その他のボディケアアイテム、ソープ、アロマ、雑貨などを商品展開している。株式会社サボン ジャパンが運営する同ブランドは、2008年7月の表参道店オープンから、現在は都内16店舗と、全国主要都市を中心に41店舗を展開している。

SABONブランドは、共感とカウンセリングで構築されている

SABONのウォータースタンド。お客はここで商品を体験できる。

 SABONは、これまで20代後半~30代前半の女性から支持を集めてきた。1番人気のボディスクラブは、豊富なミネラルを含む「死海」の塩のスクラブ効果と植物性オイルの保湿効果により、肌にシルクのような滑らかさが得られるというもの。

 SABONでは店内にウォータースタンドを設置している。ここでボディスクラブを試し、使った瞬間の肌のツルツル感を体験してもらう。また、消費者それぞれの肌質に応じた商品アドバイスや、嗜好に合わせたカウンセリングなども積極的に行う。

 こうして、実際に使ってみて得られた共感と、個々の消費者が抱える問題を接客を通して解決することによって、消費者との信頼関係を構築していくのがSABONのスタンスだ。

PARCO_ya上野店は新規客層に期待

ショーウィンドウ側には、猫足の机や装飾的な鏡で異国風の演出がなされた一角が。

 PARCO_yaへは、「お洒落なオトナのたまり場」という施設コンセプトとも合致したことから出店を決めた。また、イスラエルを拠点に日本以外に8カ国で展開していることから、訪日観光客への知名度も期待できる。

 PARCO_ya上野店では、売場の奥に、ブランドの世界感をよりイメージできる空間を作った。商品の魅力を伝えるために、ブランドの生まれたイスラエルの生活スタイルへの理解を深めるためだ。ショーウィンドウのそばにアンティーク調の鏡やクローゼットを置いて商品を取り囲み、オリエンタルな(異国風の)景色を演出した。

 また、従来の女性客とは別に、店舗の一角に男性専用コーナーを設けた。近年、若い男性を中心に身だしなみに関わる商品への関心は高いようで、多い店舗では2~3割くらいの構成比で男性客の来店があるそうだ。SABONにとって新天地となる上野では、既存ターゲット以外の層の来店も期待できる。これを機にブランドの認知を広め、体験から得られる共感と問題解決のカウンセリングによって新たなファンの獲得を狙う。

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 ところで、ブランディング専門企業として著名な英国のインターブランド社の元日本代表、テレンス・オリバー氏のこんな言葉がある。「真のブランドとは企業と顧客が50/50の思いで作り上げるもの。例えば、企業の『こんなブランドにしたい』という思いは空の水瓶。顧客はそのブランドを体験するたびに、それが良い体験であればそこに水を入れ、水瓶がいっぱいになった時、顧客と企業の思いが一致。すると双方に信頼関係ができ、ブランドが出来上がる」。

 顧客とブランドの間に積み上げられていく信頼こそが、ブランドを確立できるのだ。

まとめ:店舗での”非日常と体験”で新しい顧客層にアプローチする

 手厚い接客で対応するのは、美容・化粧品ブランドではよく見られる手法だ。

 SABONはウォータースタンドという派手な装置で消費者の関心を引き、商品の使用感を体験してもらうことにより、消費者それぞれの好みを引き出していく。

 今回、PARCO_ya上野店ではオリエンタルな空間演出を新たに広げたことによって、今まで取り込めていなかった顧客層にまでアプローチを広げた。非日常的空間と心地よい体験、この両者が相まって、ブランドの魅力として発信する。