(Photo/杉田容子)

 ㈱商業界は2017年に設立70年目に入った。これを機に10月16日(月)、「商業界オンライン」のサイトをオープン。創刊記念カンファレンスとして11月22日(水)に、東京・日本橋で開催した。

 テーマは「リテール・イノベーションへの挑戦~デジタル時代の小売業経営を考える~」。小売企業がデジタル時代に競争優位に立つために必要なことは何かを考えるもので、講演者は3人。協賛3社の講演も行われた。

大西:小売りはモノとコトの提案を早く半分にすべき

(Photo/杉田容子)

 最初に登壇したのは、オフィス タイセイヨウの大西洋氏。㈱三越伊勢丹ホールディングス代表取締役社長執行役員と㈱三越伊勢丹代表取締役社長執行役員を務め、17年に退任した大西氏の講演テーマは、『百貨店の構造的課題とこれからの小売業』。

 現在の日本の消費動向から、「小売りはモノとコトの提案を早く半分にしないとお客さまのニーズとはフィットしないと思う」と強調。デジタル時代の小売業の戦略としては、ITを使って新しいサービス・コンテンツを提供できるかが大きな課題と言う。

 講演では経営インフラの大事な2つの柱を挙げたが、その1つがマーケティング。「ビッグデータを活用して未来店顧客を獲得するため、関心度やニーズの仮説をどう作っていくかが重要」とする。もう1つの経営インフラの大事な柱が「人財育成・人事制度」。「人はものすごいポテンシャルがあるので、その財産をどう生かしていくかがマネジメントだと思う」と大西氏。最後に、リーダー人財に求められるのは「人間力」「マーケティング力」だとまとめ、講演を終えた。

角井:発想を変えないと小売企業はアマゾンに負ける

(Photo/杉田容子)

 講演者の2人目は、㈱イー・ロジット代表取締役の角井亮一氏。同社は270社以上から通販物流を受託する国内ナンバーワンの通販専門物流代行会社で、その代表を務める角井氏は、『アマゾンに負けないために何をすべきか?』をテーマに講演を行った。

 アメリカのショッピングモールの苦境やリアル店舗チェーン破綻の背景には、「消費する時間、買物する時間の使い方が変わってきていることがある」と指摘する。その中で、オムニチャネル化を進めるにあたっての注目の動きとして、「カーブサイド」を紹介。ショッピングモールは駐車場から目的の店舗に行くのに時間がかかるが、カーブサイドはスマホで事前に注文した店の前に車を止めれば、車から降りずに商品を受け取れるサービスだ。

 また、アメリカのEC販売率は10%を超えていると話し、アマゾン・ドット・コムの取り組みを紹介。ケンタッキー州にあるアマゾンハブ空港と、リアル店舗について写真や動画で説明した。講演の最後は「アマゾンに勝つための3つのカギ」。1つ目がヤマトショック(宅配問題)、2つ目が買物拘束時間、3つ目がチェーンストア理論の崩壊を上げ、「発想を変えないとアマゾンに負ける」と強調した。

金井:小売業の使命は自然と人間、人と社会のより良い関係づくり

(Photo/杉田容子)

 3人目は㈱良品計画代表取締役会長の金井政明氏。講演のテーマは『良品計画の基本戦略とこれからの小売業 ~私たちの仕事・思想・活動と行方~』だ。

 冒頭、良品計画の「大戦略は、役に立つこと。それは自己家畜化が進行し、社会にいろいろな課題があるから」と話した金井氏。経済力は戦後と比べ60倍になったが、「謙虚」が「傲慢」に、「素直」が「理屈」に、「希望」が「不安」などとなり、「世界中から食材を運んでください」「お店は24時間、開けてください」という世の中になったと話す。

 人、社会は傲慢になっていくと終わりに向かう。そうした中、分断している人と人、人と自然との関係を取り戻すため、金井氏は「簡素に、丁寧に、美しく、調和がとれて助け合う暮らし方はどうでしょうかというのが僕たちの提案。それを『感じ良いくらし』と言って、多くの人にお勧めし、それを世界に広げたいというのが仕事」と話す。

 講演では、その取り組みを国内外の事例で紹介。簡素化して、そぎ落して、結果的に魅力を作っていく商品開発に徹している良品計画。その企業理念や目指す姿、業務標準化などの取り組みを金井氏は語り、そのための考え方・手段・具体的な活動・目標を説明した。

 講演の最後は、「成長市場主義を1回忘れて、自己家畜化から脱却すれば日本には素晴らしい可能性がある。これからの小売業の使命とは、自然と人間、人と社会のより良い関係を作っていくことだと思っています」と締めくくった。

国内外で大きな実績を持つ3社が先進事例を紹介

 協賛社の講演の1人目がSAS Institute Japan㈱ソリューション統括本部ビジネスソリューション統括部マネージャーの原島淳氏。テーマは『ひとりに最適化された体験を、あらゆるシーンで~AIを活用した顧客価値創造と、収益最大化の事例とソリューション~』。同社はアナリスティック分野のリーデイングカンパニーで、流通業界では54カ国で900以上の企業が顧客になっている。顧客体験の重要性を「サービスの多様化」「アクション最適化」「包括的なデータ」の3つの潮流から先進事例を紹介。その上で、AIの活用で得た顧客のデジタル情報を使い、変化する消費者に最上の体験を提供する方法として、百貨店などを例に説明した。

 2人目が日本マイクロソフト㈱流通業施策担当シニアインダストリーソリューションエグゼクティブの藤井創一氏。テーマは『流通業のデジタルトランスフォーメーション~「顧客とのつながり」「差別化された商品」「従業員の強化」「オペレーションの効率化」を革新する最新デジタルとは~』。マイクロソフトの流通業界への貢献活動としてITソリューションの標準化と、流通業向けの基盤製品/技術の提案をしてきたことを説明。特に、クラウドサービス「Azure」の有用性を国内外の事例で強調し、流通業界でのさらなる活用を提案した。

 3人目がトレジャーデータ㈱マーケティングディレクターの堀内健后氏。テーマは『小売のリアルをデジタルで捉える!~モバイルの位置情報をカスタマーデータプラットホームに!~』。ビッグデータ分析のクラウドサービスを提供する同社が、100兆件にも及ぶ顧客データを活用する新機能を説明。日本のファッションビルやインバウンドの事例などから、パーソナライズデータのメリットを強調した。